53.ポリ・ユケドンテリ・タルテルという男
現状を説明しよう。
現在時刻、午後7時半過ぎ。ギルド内でグリフとその仲間5人と私達の合格祝いをしている。
ご飯はほぼほぼ皿の上から消え、皆のお腹を満たしている。
そして、肝心のグリフはヴィノを一気飲みしたせいですやすやと眠ってしまっており、その代わりに進行役となったヴァヴェルも一気飲みしてお酒に二人仲良くKOされているのである。
今はポリ・ユケドンテリ・タルテルという冒険者兼占い師兼殺し屋とかいう変な副業を併せ持った変な名前の変な格好(全身真っ黒)の男が進行役となっている。愛称はボリテルというらしい。
「えっと、もう俺の紹介はいいよな。じゃあ次だが……」
「ちょっと待ったー!」
私は先に続けようとするポリテルを止める。絶対、絶対に見過ごせない部分があるっ!!!
「殺し屋って何!? もしかして闇の職業的な奴だったり!?」
それを訊くと、雨音も頷く。流石に何も知らない人が殺し屋と聞いてはいそうですか、とはならない。日本、いや世界でもそんなのやっちゃってるって評価されるだろう。殺し屋なんて許されない。でも、そんな常識はただの地球内だけの話。もっと視野を広く持て! 私。
私が質問して、やっとポリテルはそれに気付いたようで、こう話を持っていく。
「いやいや、全然そんなんじゃないって。殺し屋、とは言っても、公務員の仕事なんだな、それ」
「公務員!? 人をコロす仕事が何で!?」
殺し屋が公務員とか世紀末でもあり得ない。まあ、そもそも世紀末に公務員なんて存在しないけど……
「話遮るなっての。今説明してやっから、ちょっと待て」
「あ、すいません……」「お姉ちゃん大丈夫? やっぱり休んだ方がいいんじゃない?」
雨音に諭されてしまった。お姉ちゃんとした事が、余りにも興奮しすぎて理性がぶっ飛んでた。お酒も飲んでいないのに私ったらなんて事を……失礼極まりない。
「じゃ、いいか?」
そう訊かれて軽く頷く。少し落ち着いて話を聞こう。
「えっとな、公務員の職業の中に、重要指名手配犯暗殺研究機構ってのがあって、本業が5年以上逃走を続けた重要指名手配犯を暗殺するっていう奴なんだ。警察じゃあもう手に負えないし、捕まったとしても死刑は免れないから、殺せって事で、この職業ができたんだな。あんまり公の仕事とは言い難いがな」
「確かに……?」
今の話を聞いた限り、道理は通っている。でもやっている事は非人道的だ。非人道的な道理の通っている話。なんだか矛盾しているようで小難しい。
「あー、そろそろ次に移りたいが……」
「まだ、ありますよね!」「ね!」
そう言って雨音と一緒になってポリテルに強い視線を送る。私達の事散々訊いておいたんだから、それ位話して当然よ!
「やっぱり駄目かあ……しゃあねえ、占いの事も話すとするか……」
「お願いします」「します!」
ポリテルは軽く溜め息を付き、深呼吸をして話始めた。
「そうだな。先ず俺が占い師になった理由だが、言い方は悪いが俺は人を詮索するのが好きなんだ。だから、占い師は俺にとって天職だと思ったんだな。冒険者とか殺し屋も、人を詮索するという欲望があるから、やってるようなもんだ」
「人を、詮索する……」
「いや、至って仕事内容は普通の占い師と変わりゃしねぇ。ただ、そういう気持ちがあるかないか、それだけの話だ」
「そう、ですか」
……そう話されて納得はした。これまた非人道的な行為だ。でも、そういう人の方が占い師とかには向いているのかもしれない。__その辺は良く分からないや。
「何か嫌な思いさせて悪いな。でも、これが俺の生きがいで、幸せを実感するんだよな」
「価値観は人それぞれですしね」「だね」
良く雨音は私を肯定しているかのように語尾を切り取って話す。もしかして自分の話す出番が少なくて嫉妬してるのかな。
「雨音、あなた、何か言いたい事ある? 最近、雨音が主導で話すとこあんまり見てないから」
雨音はあまり自分から話そうとしない。ただ話すのを好き好んでいないだけかもしれないし、話したくても上手く言葉にできずにいるのかもしれない。
雨音はさっきの事でまだ少し顔がほんのり火照っている。相当衝撃的だったのだろう。そのせいで言葉につっかえていて中々喋り出せずにいた。
そして、数十秒かして、雨音が口を開く。
「え、いや、私は別にそんなつもりなくて……お姉ちゃんの元気そうな顔見てるだけでそれでいいから……」
「そ、そう……?」
そもそも、雨音は元々苛められっ子だ。自分が苛められる過程で、言いたい事が伝えられない、みたいな状態がずっと続いて、そのまま引っ込み思案になっても無理はない。
しかもそれが小学校3年生の時から中学3年生までとなると、もう手遅れになっているという事もあり得る。それだけ少年期というのは人の心のあり方に多大な影響を及ぼす、怖い物だ。
「雨音がそれでいいなら私は口出ししないけど、もし何か話したくなったら気軽に言えばいいからね!」
「うん、そうする!」
「……一段落ついたか? それなら俺はもう用済みでいいよな。じゃあ、次はトルミエ、よろしくな!」
「僕っすかー? まあいいや。ぱぱっと済ませればいいよね。もう遅だし」
トルミエと呼ばれたその男は、黄色のニッコリマークが描かれた被り物を身に付け、首から下は服越しでも分かる程のムキムキとか言うこれまた癖の強すぎる人だった。
どうやら、この調子だとグリフしかちゃんとしてそうな人はいなさそうだ。Sランクを目指すって、こういう事なのかなあ……




