50.異空間、杖。
現在時刻、午後6時。そろそろ日も落ちてきた頃、見知らぬ男性達と雨音と揃って「頂きます」を言う。
八人掛けの大きなテーブルの上には豪勢な料理がズラッと並び、食べて下さいと言わんばかりにそのどれもが輝き、美味しそうに見えた。
何から手を付けていいか迷う程に沢山種類があったから、取り敢えず箸を取って目についたお肉と白米を一緒に口の中へ放り込む。一回一回噛み締める毎に旨味が溢れ出て、思わず口角が上がる。
口からは食べ物が綺麗さっぱりなくなった。すると、私の舌が、はたまた私の脳が寂しがっているのか、口内に残った肉の風味の余韻に中トロの筋をずっと噛むように浸る。その間に雨音達と談笑する。
一通り話すと、また食べる。余韻に浸る。そしてまた話す。それの繰り返しが、食べる事、食事の真意だと、私は思う。
今思えば、こんなに賑やかな食事はいつ振りだろう。無人牢獄にいた時は何週間も牢屋で雨音と二人、どうやったら生き残れるか話しながらおんなじような定食食べてたっけ。
心が、温かい。今、私は幸せだ。光喜がいればもっと幸せだ。でも、私は光喜にはもう会えないかもしれない。そんなの嫌だ。無謀だと知っていても、無理だと分かっていても、光喜と一緒に帰るって約束したから、絶対に探し出さないといけないんだ。今、どこにいるんだろう。
食べ始めてからは、質問攻めばかりだった。産まれの国、歳、得意な魔法、武器、好きな食べ物、ギルドに来た理由、とかそんな他愛もない物だった。
でも、急に「カレシいるの?」とか笑顔で訊いてくるから少しも気は和らがなかったけど。
そんな中、一つの疑問が私の中に浮かぶ。そして質問する。
「この星の人達って、私達地球人についてどう思っているんですか?」
さっきのは飽くまでも視線からの考察だ。だから、あれが決して虚偽であるとは断言できないし、この人が親切なだけで皆が皆優しい、という確証もない。だから質問したのだ。Sランク冒険者、グリフ・ノーゼに。
「俺等は地球人の事、そんなに嫌いじゃないぜ? どっちかって言うと好きだな。地球人は優しい人が多いからな」
と、グリフが地球人を好いている、という事実を口にすると、席に着いているこれまた若い男性、グリフの仲間であろう5人は大きく頷いていた。
「でもな、夏目さん。勘違いしないで欲しいが、地球人が好きな奴等はこの星の中でも珍しい。そこら辺の商人なんかはぼったくってきたりするからな。その現場を偶然発見したりなんかすると、そりゃあ心が痛むねえ……」
「そう、ですか……」
朱色に近いの髪、そして目、派手でチャラチャラな服、とんだDQNに近いような見た目をしているのにも関わらず、その心は純粋そのもの。仲間の5人も皆、とても優しいようだった。これが、ギャップっていう奴なんだろう。何か、凄くいい。
__それよりも、グリフ達は地球人を本当に良く思ってくれているみたいだ。やはり、見た目で判断する偏見はもう時代遅れなのかもしれない。これからは、中身重視の新時代なんだろう。
「グリフさんはなんで冒険者を? 始めたきっかけってなんですか?」
「さん付けはやめてくれ、性に合わないからな。それで、始めたきっかけって言ったってな、何かいつの間にかやりたくなっちまったんだよな。なんつーか、運命的なそんな感じで」
それに補足するようにグリフの仲間の一人が口を開く。
「因みに俺等も、今まで何となくだけでグリフに付いてきたんだ。この人からは離れなれたくない、ってね。なぜかそう強く思ったんだ」
この6人は相当仲のいいメンバーのようだった。きっと互いを信頼し、尊び、永遠の友情を誓い合ってきたんだろう。
そう思うと、グリフがそれを肯定するようにこう続ける。
「そう、俺等はこの6人でもう8年以上は一緒に行動してきた。だから、連携も難なくこなせるし、それぞれの技量の水準も高い。だから、こうしてSランクにいれるんだ。決して俺一人じゃ叶えられなかった夢だったんだ」
「深い、ですね」
いつか光喜や雨音ともそんな関係になるのかな。
……雨音と出会って早1ヶ月。1ヶ月とは思えない程色々あった。
光喜と王城の裏口から出た時が最初だった。多分、雨音は混乱していたと思う。でも、迷惑を掛けるまいとそれを隠して何とか平然を装って私達に付き合ってくれた。
その後は、巨大ロブスターと闘って、雨音が杖で攻撃した後はヒヤヒヤしっけ。
そういえば、あの巨大ロブスター戦から雨音は一度も杖を使っていない。攻撃力が上がる筈なのに、何でだろう……
得意な武器の話の時も、雨音は剣だと答えていた。じゃああの杖は一体__
「雨音、ちょっと、質問いい?」
「勿論! 何でも言って!」
その言葉と同時に、グリフ達の注目が集まる。
「えっと、前にロブスターの魔物と闘ったのは覚えてる?」
「うん」
ロブスターの魔物、という単語を聞いて、グリフ達は顔をしかめる。
「それで、雨音が杖を使ってそいつを吹っ飛ばした、っていうのも事実だよね」
「杖? そんなの私持ってたっけ?」「……え!?」
予想外の言葉に声を抑えれなかった。杖自体の存在を知らない? どういう事?
「いや、私の記憶では私がロブスターの魔物を吹っ飛ばしたとこまでは合ってるんだけど、杖は使わずに魔法単体で飛ばしたような……」
「えー? 可笑しいな、辻褄が合わない……え、じゃあ、異空間に杖をしまってる、っていうのは?」
「そんなの聞いた事ない。スキルの欄にも魔法の欄にも載ってないし」
うーん……当事者が言うんだから私の勘違い? でも杖を出してたのは確かに見たし、異空間みたいなのがあったのも見た。
もしかしたらあの場所に誰か他の人がいて、雨音を操っていた? まさか。その線はNOだ。ふざけ過ぎも大概にしろ! 私。
そんな時、グリフがそろそろと何やら物申したそうに手を上げて「あの……」と言ってこちらを見ていた。
「グリフ、どうかした?」
「うーん、あんた等はAランク受かってるからまだギリギリあり得る話ではあるんだけどよ、そのロブスターって、めっちゃデカイ奴だろ?」
「そうだね。家一つくらいの大きさだったような……」
もしかして、グリフ達はあれと対峙した事があるのかな。何か色々知ってそうな顔をしている。やっぱりSランクは伊達じゃない。
「ああ、じゃあやっぱりか。あれだろ? 『災害クラスA8型 ビッグ・バン』……信じがたいけどな」
「ビッグ・バン?」
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