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49.謎の声

 ギルドの試験も終えた為、また扉をくぐり、ギルドに戻る。そして店員さんがなんやかんや手続きを済ませて、ギルドの登録が完了した。

 そして店員さんから手渡されたのは、一枚の金色のカードだった。雨音にも同じカードが渡される。


「これは何ですか?」


 そう質問すると、「そうですね……身分証明書と同じような物だと思って頂いて構いません。普通の身分証明書と違う点としては、そのカードの色は受かったランクによって決まります。FとEとがビギンズ、DとCがブロンズ、Bがシルバー、Aがゴールド、Sがプラチナ、S+がマスターランク(紫)となっています。一目でどんなランクか分かるようにする為ですね」と返された。


 つまり、私達がこのカードを人に見せれば大抵の人は恐れおののいて道を開けてくれる訳だ。

 まあ、そういうのは悪用厳禁って奴ね。クエストを受ける時以外は見せないようにして置こう……


 そう思ってポケットにカードをしまう。だが、もうそれは遅いようだった。

 私の背中から体の中に入ってもぞもぞと這いずり廻り、寒気がしてくるかのような不安感を全身で感じた。

 これは明らかに視線だ。さっきよりも体が重い。本当にただの視線なのか怪しい。そして、Aランクである事が確定したのがギルドの中にいる人に多分バレた。

 ヤバい、不味い。非常に不味い。地球人がギルドにいる事自体珍しい事だろうに、そんでもってAランクとなるとどんな問題が起こり得るか計り知れない。

 出来るだけここで人と関わるのはなるべく避けたいのだ。それなのに、どうして逆に目立っちゃうのよ……まあそもそもギルドに入るって決めた時にこういう事態も起こりかねないと考えるべきだったんだろうなあ……


 野次馬がこっちへ来ない内に雨音を巻き込みたくは無いので目線で合図を送る。雨音は直ぐに察して手でカードを覆いながらポケットへ仕舞った。

 取り敢えず今はこの場から逃れるのが最優先事項だ。なら、うたた寝で逃げる? いやいや、そうすると逆に私へのヘイトが集まりやすい。目立った行動は避けるべきだ。

 だとしても前を立ち塞がれてはどうしようもない。

 どうするどうする!? 時間はない。一瞬で考えを出さないと……!


 あーもう! 駄目だ。私の頭じゃ何も浮かびやしない。もう駄目だ。野次馬でもマスコミにでも揉まれて今日を終える事にしよう……


 無理難題に立ち向かうのは趣味ではない。落ち着いて、目を閉じ、事が最小限で済むようその場でじっとするのが現状、私の中の最善手だ。


 さあ、何が何でもかかってこい!

 ……あれ、何も起きない。ざわざわと地球人をバカにしたような囁き声が聞こえるだけで、私への野次馬攻撃が飛んで来る訳でもなく、誰かが近付いて来る気配もない。可笑しいな。まさか私の杞憂? いや、でもAランク帯がそんなポンポン生まれる訳でもなかろうに……

 何なんだ? 今私の背後で何が起きているって言うの!? まさか隆幸が来たとでも言うの!?


 ……そもそも、何でこんな状況になっているのかさっぱり理解できない。ここの人達が地球人の事を良く思ってはいないというのは何となく察せる。でも、それが理解できないのだ。

 私達が一体何をしたと言うのか。この、まるで私達がこの星にとって異質であり、部外者。要らないものだと決めつけているような冷たい視線と、苛めを間近で見ているような小さな声による嫌悪感。胸が締め付けられる程に気持ち悪い。

 私は後ろにいる人達と会った事も喋った事もない。ましてや顔すらまだ見ていない。それなのにどうしてこんなにも心が痛くなるのか。

 私達が無人牢獄に来る前、光喜が冤罪を着せられた時に、この星の人達はまるでお前等に親を殺されたと言いそうな程に「憎い」という顔をしていた。怒りの権化みたいな、そんな顔だった。

 何なんだ。一体何が彼等を怒りで満たすんだ。

 過去に地球人が恨みを買った? それで無関係な人まで恨むようになった? 駄目だ、話が纏まらない。

 今の話を整理しようとしたら、つまりは、だ。この星の人達は私達を憎み、恨み、蔑みの対象として見ている。それもとても大きな悪感情で。

 ならば、それで私達はいいのか。いいや駄目だ。この星の人達の私達への常識を覆さなければ。その為には、過去、この星の人達に何があったのか訊かなければいけない。私に出来るかどうかは関係ない。私の目標は地球に帰る事。その為には、この星の人達の協力も不可欠だろう。ならばやるしかない。私はやらなければ__


 決意を固めた時、耳元でそれはこう囁く。


「思い込みって、この星の人達と同じじゃんか。やっぱ珍しい、君は。でも俺が地球人が嫌いなのは本当の事。覚えておけ」


 肩に触れられた!? と思って急いで後ろを振り向くが、誰もいなかった。そして、もう一つ気付いた。

 誰も私の方なんて見ずに、ただガヤガヤと談笑をしているだけだった。

 じゃああの視線は何だったの!? まさか、今の声の主一人から発せられた!? 視線であれなら魔力が随分どうにかなっている話だけど、この状況から察するに、そう考えるしかなさそう……

 今の時間は何だったんろう。この星の人達と同じ? それに、思い込みって……え? 私の考えている事を当てた? 今の、何者……?

 でも、じゃあやっぱり今の声の主が目線を__


「お、嬢ちゃんやっとこっち向いてくれた。それで? どうだった、試験の方は?」


 話しかけられた。一人の若い男の人に。そしてやっと我に返る。

 今は何時だろう。五時半、か。まだ明るい時間帯だな。


 私は我に返って寝ぼけたように意識が不安定の状態だったのだろう。訳も分からず「えっと……一応受かりました。ランクA」と言ってカードを見せるとギルド内にいた全員が立ち上がり、「うおー!!!」と叫び始めた。拍手をする者、称賛の声を送る者、祝宴だ、と言ってくる者。誰もが、私を祝福していた。


 良し、意識がはっきりしてきた。う〜ん、やっぱり杞憂だったか……しかも、この星の人達は優しいじゃないか。思い込みだったのかなあ……

 ていうか、何で私カード見せたんだろう。絶対に見せないって決めてたのに。でも、問題にならなくて良かった。騒ぎにもなりそうじゃない。まあ、それならいっか。

 本当に今のが誰だったのか、分からない。人なのか、魔物なのかも分からない。幻聴かもしれない。でも、今の声が後々意味を成してくる事は何となく理解した。

 事は済んだ。もう視線を怖がる必要はない。奢ってくれると話してくれたので、今日の夜ご飯はたらふく食べるとしよう。折角奢ってくれるんだ。楽しんで食べなきゃ意味がない。


「雨音! あなたも受かったから食べてっていいってさ!」「ホントに!? 食べる食べる!」

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