48.雨音って、私って
◇◇◇◇
割と呆気なく終わってしまった。雲散霧消が超上位魔り法の中でも異質な強さ? ……それは一理ある。
なんせあの無人牢獄の敵をワンパンで倒せる程強い魔法だ。
それもその筈、私の魔力量が多いからなせる技であって、普通の人なら要求魔力量に耐えきれず倒れてしまうのは明白。となれば強いっていうのは頷ける話だ。
そう言えば、今頃光喜は何をしているんだろう。この三週間、地上にも出ていなかったせいで誰がどこにいるかも分からない。
登録が終わったら、王城に突撃して陛下に居場所でも聞いてみよう。
「お見逸れいたしました! まさか雲散霧消・十二心得をあんな簡単に操るなんて……」
「操る……それは、つまり手に冷阡を付与した事が凄い、って事?」
「凄いなんてレベルじゃありませんよ! 超上位以上の魔法を付与する場合は魔力が暴走する確率が高く、安定して魔法を付与出来る人なんてそういません。しかも、体から神石へ、そして神石から体への魔力の往復によって通常の超上位魔法よりも魔力消費量が格段に増えます。魔力6000万越えとは言え、疲れた様子も見せずにあれを使うのはもう伝説級で犯罪級ですよ!」
簡単に言えば私はチョー凄いらしい。つまり、雨音も出来るからチョー凄い、との事。
やっぱり私達の強さは規格外って事ね。それなら、有名になるのは避けられないから、嫌でも光喜にその情報は行く。となれば、あわよくば光喜に見つけて貰えるかも……?
現状、私達には光喜を探せる情報はないし、探そうったって人に聞けるような頼み事でもない。
私達が探せないのなら、探して貰えばいいじゃないか! と。
多分もう光喜は捕まった所から脱出してこの街のどこかにいるだろう。
ならばもう条件は整った。後は私達が頑張って有名になるのみ、だ!
◇◇◇◇
「さて、次は雨音さんの番ですね。先が思いやられますが、宜しくお願いします」
「が、頑張ります!」
雨音と店員さんが面と向かい合う。離れている所から見ても、隙がまるでない。
そう言えば、雨音がここ何週間か杖を使っている所を見た事がない。と言うより、そもそもロブスター戦の時から一度も使っていない。何でだろう。あんなに威力が高かったのに。
今は質問せず、ただ試合をじっと見守ろう。
「よーい……始め!」
どんな闘いになるんだろう。そう思って瞬きをすると、雨音は既に店員さんの首元を剣で捉えていた。
まさか、無に廻るの応用をしたのね……
「え、ま、参り、ました……」
店員さんは明らかに何も理解出来ていない。私もこれを急にされたら一溜りもないなあ……。
雨音が何をしたか簡潔に言うと、まず自分を無に廻るで消す。無に廻るを使うと存在自体を消せるから、再出現する時には原子レベルで再構築が出来る。原子を再構築する位置を変える事で瞬間的な移動が可能、という事。
これを使えば地球に帰れるのでは、とも考えたけれど、無に廻るの効果時間三秒以内に地球へ原子を移動させるのが光の速度を越えれないため不可能らしく、結局は断念した事もあった。
そう言えば、これを使えば簡単に無人牢獄を脱出出来たんじゃ……
いやいや、どうせ捕まっていただけだ。結局これが一番いい帰還の仕方だったんだろう。
「これでAランクの試験完了だね! お姉ちゃん!」
私はなぜか雨音の笑顔に狂気が垣間見えた気がした。
最近、雨音が雨音みたいに感じない。雨音って、どんな人だっけ。どれが本当の雨音で、どれが本心の雨音なのか。
雨音は自分自身がどんな人か分かっているのだろうか。そんな迷走状態だと生活に支障も出る。雨音はこれからどんな雨音として生きたいのか、訊かなければ。
「うん。まずは学校入学の第一歩は完了、だね。それとさ、雨音」
「何?」
「雨音は、自分がどんな人なのか、知ってる?」
「急に哲学的な事言ってどうしたの? うーんでもなー、自分がどんな人か、って言うと、今の私は全部本当の私だよ? 嘘偽りのない、私っていう存在」
「そう、それなら良かった」
「何だか今日のお姉ちゃん様子が可笑しいよ? ずーっと考え事してるっていうか、悩んでるみたいな顔してる。もうちょっと気を楽にしたらいいと思うなー!」
え、私そんな顔してたっけ? ……もしかしたら自分では気付かずにずっと色々な事に縛られてちゃんと私らしく出来てなかったのは私かもしれない。
そっか。私か!
「うん。ありがとう、雨音。私は私らしく、雨音は雨音らしく生きよう!」
「そうだね!」
「あの二人、仲良しだな……楽しそうで、幸せそうな顔してる」
「店員さん何か言いました?」
「いえ、何でもないですよ。では、ギルドに戻りましょうか」
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