47.ギルドの試験
お互いに15m程距離を取り、雨音には観客席で待機してもらった所で店員さんが話かけて来た。
「さて、始めるに当たって、合格条件の説明ですが、それは至って単純です」
「と言いますと?」
「私に参りました、と言わせるだけ! 私は命の危険を感じ取れば直ぐに降参してしまう臆病者ですので、夏目さん程の実力者であれば簡単かと……」
成る程、この人に参りました、と言わせるだけ。なら……!
「分かりました。では、合図を、お願いします」
……なんだろう、この緊張感。特に店員さんが殺意を持っている訳じゃないのに、命が掛かっている訳でもないのに、とても窮屈で今すぐここから抜け出したくなるような感覚は何だ!?
これって、本当はこの人凄く強いんじゃ……? 魔力1000万って言ってたけど、魔力は身体能力において何の指標にもならない。
つまり、この人は魔法を攻撃の補助として使う、超肉弾戦プレイヤー!?
私は防御が得意なのではない。攻撃にしか重点を置いてなかった。多分、それは誰かがいてくれて、私の盾になってくれていたから。
確かに、私は一人で闘っては来なかった。皆といる時にしか闘って来なかった。でも、これは一対一の真剣勝負。ここで私が防御を身に付ける事が出来なければ、この先も私は誰も護れない……
いや、違う。護るっていうのは、ただ攻撃を受けるだけじゃない。私が攻撃して相手を先に倒せば、問題は、無い!
「では、ランクA検定……始め!!!」
っ! 動きが速い! 私の目で追えるか……? それに、店員さん、かなり左右に動いて錯乱してくる。攻撃してくる方向を分からなくする為か!
流石現役の魔力1000万超え冒険者だ。でも、私には今まで無人牢獄で培ったスキルと魔法がある!
なら、私は立ち止まって今回はそれに信じてみよう。いつまで経っても私を出しきれないのは嫌だ。さあ、
攻撃阻害の開始だ。
「な、夏目さん!? 動かないんですか!? このままだと、攻撃食らっちゃいますよ!? ……ええい、夏目さんには夏目さんなりのやり方があるのでしょう。そう信じます。あなたは、こんな試験で落ちてしまうような人材では無いのです!」
私が立ち止まった事に驚いて店員さんは一瞬だけ足を止めた。まあ、そんなのされたら自由に殴って下さいとでも言われているような気持ちになるのも無理はない。
そこから店員さんは左右に動く事はなく一直線に私を狙ってきた。動かないのならどう狙っても同じだと考えたんだろう。
そう、私は動かない。それは、極上位魔法の攻撃阻害Ⅱを信じたからだ。魔力消費だって凄い。連続では数回しか使えないんだ。
でも、もし店員さんが攻撃必中とかそういうスキルなり何なり持っていたとすれば、私は無様に吹っ飛ぶ……
とはならないだろう。いざとなれば表裏一体もある。うたた寝だってある。カバーのしようはいくらでもある。さあ、来い!
「後悔しても、知りませんよ!!!」
私の腹目掛けて拳が飛ぶ。さあ、どうなる!?
「お姉ちゃん危ない!!!」
と雨音が叫ぶ。残り30cmになっても拳の軌道は変わらない。こ、これは、駄目だ。
まあ、そんな時もある、かあ……
「表裏一体」
そう言うと目の前にあった店員さんの姿は消え、後ろの方で「え?」という声が聞こえた。表裏一体の存在は知らなかったみたい。
でも、攻撃阻害位、対策されていて当たり前、か。
「魔法付与・冷阡。冷阡ノ拳」
実際に殺したりするつもりはないが、私はありったけの殺意を店員さんの方へ向けて冷阡ノ拳を放つ。
はあ……まあ、こういう失敗も付き物だ。少し攻撃阻害には失望したが、またきっと出番を用意してやるさ。
「え!? ちょっと待って、何この殺意!? 私本当に死ぬの? しかも、冷阡って、超上位魔法の中でも異質な強さの術式、雲散霧消・十二心得の第二魔法じゃない……! む、無理無理無理!!! 私にあんなの受けらんないって!」
「ま、参りました〜!!!」




