43.終わりなき道
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流石に11階層。いくら今まで最速で倒して来たとは言え、強いというのが闘わずして分かる。
お姉ちゃんの炎濔でも死ななかったのがその証拠だ。
エレンテは人の見た目をしていない。体型は人間そっくりではあるが、全身真っ黒、大きい青色の1つ目、不気味なほどに口角が上がった口、枝のように細い腕、毛先が青い髪、というように、人間要素が髪しかない。
そんな髪でも、なぜか髪は炎のように揺らめいている。
そしてエレンテの周りにある謎の黒い浮遊物。……胡椒ではなさそう。
こういった観点からも、総合的に見てコイツはとんでもない力を秘めている。そう確信できる。
私と協力して、本気を出せば倒せそうではある。復活するから、隙を与えたら一貫の終わりだけれど。
今、エレンテを倒せる有効な手段があるのかは分からない。でも、やらない訳には行かない。
この中から、何か無い物だろうか。
基礎魔力:30.5万
魔力:6100万
《下位、中位魔法、スキル》 なし
《上位魔法、スキル》
《魔法》 物体念動Ⅲ
《スキル》 究極統合、装備強化 投擲(投げた武器が帰ってくる)
《超上位魔法、スキル》
《魔法》 風魔法Ⅷ、毒魔法Ⅶ
《スキル》 毒耐性Ⅵ、熱変動耐性Ⅵ、魔力密度増加CXCV(195)(魔力200倍)
《極上位魔法》
《魔法》 電気魔法X、闇魔法XI、氷魔法X、火魔法X、液状化(体を自由に変形させる)
《スキル》 基礎魔力増加XXX(基礎魔力30.5倍)、諸行無常(攻撃を受ける0.1秒前に半径1m以内に移動する)
《神聖魔法、スキル》
《魔法》 無に廻る(存在そのものを三秒間消せる)
《スキル》 武の天命Ⅱ(属性魔法強化、防御力強化、攻撃力強化、体力強化を統合)
近付くだけなら液状化と無に廻るで何とかなる。でも時間を掛けすぎると魔力が尽きるのが先だ。
なら、魔法でもう一回復活するかどうか試してみよう。火ではなく、今度は『氷』だ。
「荒れ果てた大地を制し、乱れを整へと律し、今その恵みを冷徹の氷塊で凍てつかせたり……!」
エレンテはちっとも私の魔法に恐れていない。ましてや、動こうともしない。駄目、か。
「雲散霧消・六ノ心得・冷阡」
魔方陣が奴の方へと向かい、定位置に着いた所で魔方陣が増え、その数はエレンテ全体を呑み込んでいた。
魔方陣の増殖は止まらず、二周り程魔方陣が重なった時にやっと止まった。ここまで約二秒。奴は動かない。
攻撃が始まった。無数の魔方陣から無数の硬く、鋭利な氷塊が敵めがけて集中砲火だ。
普通の人、魔物なんかは一溜りもない。逆に言えば、普通の魔物じゃなかったらこれはただかき氷を作る素材をポコスカ当てられているだけでしか無いのだ。
思った通り、エレンテにはどこが体かも分からない程に氷が刺さり、動かない。
だが、その体と思しき物体は溶け出して一点に集まって行く。まるでスライムの上位互換と闘っているみたいだ。
体は一瞬で元通りになり、産まれたばかりの赤子のように傷一つ付いていない。本当に11階層なのか疑わしい。
《スキル 魔力密度増加CXCVがCXCⅣ(196)に、スキル 基礎魔力増加XXXがXXXIにレベルアップしました。基礎魔力が30.6万に、魔力が6123万600に上昇しました》
最初の頃はお姉ちゃんと揃って炎濔を撃つだけで30レベルとか上がってたけど、今じゃ1レベル上がるかどうかって感じね。
「全く、いい加減にしてくれるかな。僕、無駄って凄く嫌いなんだよ。その人生をドブに捨てるような行為がね。もういい、種明かしと行こうじゃないか」
種……そんな物が存在するの? 何をしてもかすり傷も付いてくれないエレンテに弱点があるって、しかもそれを教えてくれるとは何と生意気だろう。こっちは死ぬ気で掛かっているというのに。
でも、聞かない訳にも行かない。
「いいかい。僕がこうして何をしても死なないのは、スキル 武王のお陰さ」
「スキル 武王……?」
と、お姉ちゃんが脊髄反射のように返す。聞いた事がない。当たり前だけど。この世には無限にスキルが存在しているような物だ。一言たりとも聞き逃さないようにしないと……
「スキル 武王ってのは、魔法や武器を用いて殺害された場合、どんな死因であろうと生き返る、つまりは、この僕を近接戦で殴って殺さなきゃ僕は死なないって事さ」
コイツは近接戦じゃなく、遠距離で協力な魔法を撃ってくるタイプだと勝手に解釈していた。先入観とは怖い物だ。
そういうスキルがあるって事は、中距離や遠距離が得意ではないと結論付けられる。
今の今まで魔法しか使って来なかった。いきなり格闘などと言われても、私達に出来るの……?
でも、魔法が効かないならやるしかない。頼む、魔力よ持ちこたえて!
◇◇◇◇
奴との戦闘は、二人で本気を出して何とか互角に闘えるかどうか、という激しい物だった。
互角ではあるが、液状化や無に廻るを使わなければすぐに死んでしまう程、苦戦を強いられていた。
エレンテの顔に若干の疲れは見えるが、それでも本気かどうか怪しい。
そもそも私はそこまで体の強い方ではなかった。苛めを受ける中で、多少の忍耐力、体力とかは付いたけれど、それでやっと一般人と同じかどうかだった。
ましてや格闘なんてド素人だ。殴り方すら分からない。
でも、スキルである諸行無常のお陰で一命は取り留めている。それが無ければ速攻お陀仏だった。
いつエレンテが諸行無常に適応して移動する場所を読めるようになるか分からない。それまでに何とかしないと本当にヤバい。次の階層にも響くからだ。
魔法を使わざるを得ないせいか、着実に基礎魔力増加や魔力密度増加のスキルレベルが上がり、それに伴って魔力も上がっている。
耐久戦に持っていって、魔力量を増やすか、そのまま倒してしまうか。全く、変な二択だ。
だが、そんな余裕は私達には無い。一気にケリをつける!!!
そんな思いを感じたのか、お姉ちゃんは咄嗟に攻撃を止め、こう叫ぶ。
『表裏一体!』
来た! そう思ってお姉ちゃんの方を向き、拳を構え、今ある全力を振り絞る。
魔法付与、火属性魔法『炎濔』。
攻撃と魔法が組み合わさっているが、一か八かやるしかない。
……入れ替わった!
『極意・不意討緻』
エレンテの顔面に容赦なく拳を叩き込む。止めてはいけない。不恰好でも、何でも兎に角エレンテを倒せればそれでいい。
「な!?」とエレンテは正に不意打ちを食らい、成す術もなく私の止まらない攻撃をその全身で受けている。
フラグを立ててはいけないと言うが、これは勝てる。勝てる! 最後は頼んだよ! お姉ちゃん!!!
「任せて! 魔法付与・炎濔! 炎濔ノ拳!」
「ま、魔法付与だと!? 僕の最大の弱点をこうもあっさり見破られるとは何と小癪な!!!」
「アンタの敗因は自信過剰な事よ! 地獄で後悔しなさい!!!」
「貴様、貴様アアア!!!」
《第十一階層を制覇しました。第十二階層に挑戦出来るのは明日の午前六時からです》
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今日は久しぶりに死にかけた。一歩何か行動を間違えていたらと思うと背筋が凍る。
今日はお祝いという事でハンバーグが昼ご飯だ。少し重たいかとも思ったけれど、疲れているせいかぺろりとそれを平らげてしまった。
そう言えば、スキル 武王は惜しくも獲得出来なかった。15%はそうそう当たる物ではないのだ。
明日も、こんな風に強い敵が出て来るんだろうな。
今、光喜はどう過ごしてるのかな。無事だと、いいな。
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《第二十九階層を制覇しました。第三十階層に挑戦出来るのは明日の午前六時からです》
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テスト期間や、今年のように受験となると、どうしても勉強の方に力を入れなければいけないので、たまに1話になったり2話になったりして、告知と結果が狂ってしまい、申し訳ありません。
毎週投稿は本当に絶対するので安心してください。
優先順位は一位が勉強、二位執筆の精神を忘れず、今後とも投稿を続けて行こうと思っているので、完結までどうかお付き合い頂けると幸いです。




