7.ヤドカリと神石の真価
「うわぁぁ!? いつの間にこんなに!? 砂漠の色と同化して全然分かんなかった……光喜、どうするの?」
「そりゃあ、もう戦わざるを得ないな!」
逃げるとなるとヤドカリをグチャグチャに潰す事になって足を取られる。ここまで来ると逆に難しいだろう。
「源石はしっかり持っておきなさい……」
ヤドカリの魔物は独特な鳴き声でこちらに威嚇をしているようだ。ゲームのモンスターか何かか?
「魔法……効くかな?」
「流石にあのスライムみたいな強い魔物じゃなさそうだから大丈夫だとは思うけど……」
そんなことを思っているとその時が来た
「来ます!」
「ギャァァァ!」
いくら小さいからとは言え、集団で襲いかかられるとそれは一気に脅威と化す。油断大敵だ。
「うわっ! ちょっ! こっち来んなよ!」
大量の魔物が体に纏わり付く。取ろうにもトゲトゲの足が服に引っ掛かってへばり着いたように動かない。
「光喜、私も戦うよ! このために用意した神石だからね!」
夏目が神石に水、風、火属性の魔法を吹きかける
「これで何か強くなってるでしょ! 行っくぞー!」
「あ、こっちに向かって撃つの!? え!?」
「氷の鉄槌!!」
その時、死を覚悟した
「グフゥォォッ!」
ヤドカリは服から剥がれ落ちたが、致命的なダメージを負ってしまった……意識が遠くなって、行く……
!?
「あわわ! 光喜大丈夫!? しっかりして! いぃぃ、今治すから!」
まだ闘い慣れていないとは言え、流石に仲間を殴るのは論外か……
「全く、仲間に何してるのよ……私が食い止めるから早く治しなさい……」
「ご、ごめんなさい!早く治さないと………ヒ、ヒール……」
「う、う〜ん……」
あれ? 何かちょっと記憶が無いようなあるような……
「光喜! だ、大丈夫? う、動ける?」
「ま、まぁ……何とか……」
でもまぁ、間近で顔見られたし、いいか。これ位の傷、今まで受けてきた仕打ちよりかはよっぽどマシだ。
「良かった! それなら早く立って! 魔物がすぐ来てるから早く戦おう!」
全く人使いが荒いんだから……
「良し! いっちょやってやるか!」
「おー!」
◇◇◇◇
「はぁ、はぁ……一体どれだけ倒したらいなくなるのよ………」
「そ、そうだな……これじゃあキリがない」
「あんた達、疲れるの早すぎない? 仕方無いわね……アレを使いましょう」
「アレ?」「アレって、どのアレだ?」
何かと思うとアリスが何も無いところから杖を取り出す
「これで一掃しましょう」
「???」「い、今どこからそれを?」
「あぁ。これのこと? これは私のお気に入りの杖で、いつもはこの異空間に収納してるの。さ、そんなことを話してる暇は無いでしょ?」
それもそうだが、もう少し詳しく説明して欲しい物だ。人を理解するってのは、意外と大事なんだよな。
「異空間……あぁ、また良くわかんないの出てきた……」
魔法を撃つ合図なのか、アリスの杖の先端が光り、その大きさが増している
「魔ひ法陣展開、水爆!」
凄まじい爆発が魔物を襲う。これ、ひとたまりもないだろ。
「うぉぉ! 風がやばい!」
「風で体が飛んでくー!」
俺もいつか、こうなるのか……?
「少しやりすぎたかも?」
爆発と砂埃が収まる。
「ど、どうなったんだ?」
辺りを見渡すとそこには大量の源石が落ちている。
「やっつけた……のかな?」
アリスが小さく頷く
「アリスすげぇ……俺も強くならないとな」
とは言っても、そんなすぐ追い付く訳じゃなさそうだな……
「ほら立ち上がって。さぁ、源石は貴重だから集めましょう」
「うん! でもこの量どうやって持つの? いっぱいあるけど」
神石をポケットから出して源石と見比べる。何か神石からヒントは得られないか?
「そうだな……何か神石にちょっと似てるし上手く合体とかしてくれればいいんだけどな……!?」
「流石にそんなことあるわけ……!?」
神石と源石が突然光りだして勝手に動いていかにも合体しそうな雰囲気を醸し出している。
「え? 何か凄い事起こりそうだよ!?」
「ホントに合体するのか!?」
二つの石は中に浮き、光を出しながら回転する。それも加速しながらだ。
光が眩しくて目を瞑った時、微かに地面に落ちる音がした。それに合わせて目を開く。
「本当に合体してる……」
「触っても大丈夫かな?」
「流石に危なくはないと思うけれど……」
「触ってみるか」
そっと神石と源石が合体した石を持つ。大きさの割には何か軽い。
「大丈夫、そうだな。それに、何だか力がみなぎるような感じがする」
「ホント?」
「あぁ……何かそう感じさせる。一回軽く魔法を使ってみるか……」
少し意識を石に集中させてみる
「良し、やるか……」
「どうなるんだろう?」
魔方陣展開。炎槍
熱風が体に吹き付ける……だが、熱くはない。魔法を撃った本人は魔法の爆風などを受けないのか。
また、横を見てみると源石は飛んでいっていないようだ。
そして、見た限り魔法が以前より数倍火力が上がっている。周りにある岩が簡単に消し飛んだのがその証拠だ。
これは、強い。俺達はこの凄い石のお陰でとんでもない力を手に入れた。
二人にも早くこの石で力を手にして欲しいと思った。
俺達はこれから最強だ、と思いたかった
爆発が収まる
「す、凄い火力……これでもまだ本気の力じゃないなんて……」
「合体させただけでこんなに強くなるんだ……」
「ならお前らも合体させてみようよ!」
俺は少し興奮気味だった。ロマンの塊はテンションがぶち上がる。
「うん!やってみる!」「わ、私も……」
それぞれ合体させる。どうやら、強さを魔法を撃たずとも実感しているようだ。
「じゃあこの残った源石たちは袋に包むか」
「魔法で袋を作るんだね!」
「その通り」
袋を作って源石をまとめた頃、それは起こった。
「ん?何だ?地面が……揺れている?」
凄い揺れだ。まるでこの星全体が揺れているような……
「え?これってもしかして……地震!?」
「いや、違う……何か、地震よりもよくない悪い予感がする……」
その瞬間、大きな音共に地面から『ソレ』は出てきた。
さっきの奴らとは比べ物にならないくらい体が大きいロブスターのような魔物……だった。血の気が引けた。そう、
奴
が
来
た
の
だ