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40.フェイク

 さて、上空の矢にどう向かっていくか、だけれど、矢が垂直に落下するようになるまで前に進んで、そこからジャンプして確認するのが妥当だと考えた。そうと決まれば早速実行だ。


 素足でジャングルの大地を踏みしめ、草木をかき分け、道なき道を歩いていく。時折石を踏んだり虫に噛まれたりしてかなりキツかった。

 その為か、少し歩いただけで疲れてしまった。だが、こんな所で立ち止まりはしない。私達は未開の大地にずかずかと踏み込んで行く。そして矢が段々垂直に傾いて来た。この調子だ。


◇◇◇◇


 やっとの思いで矢が垂直になる場所まで辿り着いた。上を見上げれば、矢がバリアに当たって跳ね返されている様子が見える。

 だけれど何か様子が変だ。ここまで近付いても、何一つこの矢が放たれる位置は変わらなかった。

 そんな疑問を抱えつつ、ジャンプして矢が放たれている場所を確認する。木の枝に引っ掛かるかと危惧したけれど、杞憂であるかのようにジャンプした場所には何もなかった。そう、ぽっかり穴が空いたように。

 そして、ジャンプするに当たって雨音と私のバリアの制御能力が問われる。少しブレていたが問題になるレベルではない。むしろこれだけ出来ていれば上出来だ。

 矢が放たれている原因はと言うと、大体は思い通りだった。魔法陣だ。ここから無数に矢が放たれている。


 バリアを解除したい思いが強かったのか、魔法陣を壊そうと近くにあった太めの木の枝に乗っかり、炎魔法を撃ち込んでみる。

 どうだろうかと思ったが、それは意外にもあっさり壊れた。何かやはり様子が可笑しい。この不思議な違和感は何だ……?


 ふと魔法陣があった場所を見ると、なぜか一つだけ矢が残っていた。それも宙に浮いていながら。

 良く見ると矢は少しずつ、詳しく言えば毎秒20cm位のスピードでこちらに近付いているようだ。矢と私との距離は大体二メートル。これは……なんだ?


 しかし、その疑問はすぐ晴らされた


 五秒程するともうほぼ半径1m圏内に入っていた。特に気にする事もないだろう、と、下に降りようと枝に手を掛けた時、それは起こった。


 矢が勢い良く爆発したのだ。私達のバリアは弱かったようで虚しくも破壊され、私は爆風で3mかそれ以上吹っ飛び、そのまま10mはあった高さを落下し、木の枝に引っ掛かったりして受け身を取ろうにも取れずに地面に叩きつけられる。全身に「バキッ!」と、人の体からは鳴ってはいけない音が響いた。


 や、やられた……これはフェイク……違和感の正体はこれだったのね……


 痛みが強すぎるせいか、「うぅぅ……」と嫌でもうめき声が出る。右腕は完全に上腕から下が逝ってしまっている……

 それに、痛すぎて立てない。尾骶骨を打ってしまったか。超石やら何やらのお陰で骨折までは行かないけれど、今襲われたら絶体絶命だ。早くヒールで治さなきゃ……


 そう思うと、異変に気付いた雨音が駆けつけてくれた。

 私が動けないのを見ると直ぐ様ヒールをしてくれた。二人で治しているお陰か、みるみる痛みが引いていく。良し、もう立てる。

 痛みを堪えながら何となく雨音の顔の方を見ると、少し涙ぐんでいる。そりゃあ、そうよね。さっきあんな言葉を掛けてあげたのに、すぐにこれだもん。

 でも、これからはそういう傷はどんどんして行く事になる。いつまで経っても甘えん坊さんではこの星で生き抜いて地球に帰るなんて絶対に不可能だ。


「雨音、これからこういう傷は避けられないよ。そんなんでグズグズしてたら、もし私がいなくなったらどうするの?」


「そうだよね。うん。もう、お姉ちゃんの前では、涙は見せない」


 雨音の成長は、私をも成長させてくれる。

 それはまるで、本当の姉妹のように輝いて見えた。

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