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36.火傷

◇◇◇◇


後十分……後十分耐えればこのとてつもなく苦しい時間が終わるんだ……


   「雨音、今の聞いた?」


そういえば、私は事ある毎に雨音に質問を投げかけている。まるで機械のようにしつこく。まさか、私の方が心配性なんじゃないか?

 流石にこれ以上訊いてばかりいると嫌われそうで仕方ない。これからは少し雨音欲を抑えていこう。


「後十分なんだよね。それならまだ大丈夫そうな気がする」


それにしては随分と足を上下するスピードが増しているような気がする。まあ、それは私も同じ事なんだけど。


そして、さっきから少しずつ前に進んではいるものの、一向に景色が変わる様子が無い。見えるのは灼熱の鉄板と白く光り輝く太陽だけだ。この殺風景な景色にはもう色んな意味で疲れて飽き飽きしていた。

 早いところこんな地獄終わってしまえ!!!って、《 YES 》押したの私だっての。


ところで、冷静に今の状況を説明してはいるものの、実際は足を動かして物凄く疲れていながら頭の中で頑張って整理しているから落ち着きが全くないのである。今では口癖のようにアチッ!アチッ!と喚いているのである。

 雨音は何も言わずに真剣に生き抜こうとしてるのに対してお姉ちゃんはなんとも情けないと思う今日このごろ。


「ねえお姉ちゃん。本当にこの階層はこれだけで終わると思う?」


   「それってつまり……まだ何かあるかもしれないって事だよね」


確かに、敵と闘わずして終わるだなんて、何もないにも程がある。ただ熱い鉄板の上をひたすらに裸足で耐えるだなんて見苦しいったらありゃしない。

 だからと言って、敵が出てきて欲しい訳でも無い。出来ればこのまま終わって欲しいものである。


「ん?あれ、何だろう?」


雨音が後ろを振り返って何かを見つけたらしい。私もそれに(なら)って、後ろの方をジョッギングしながらじーっと見つめる。


   「ちょっと待って。あれってもしかしなくてもこっちに向かってる?」


アレとは言っても、アレをどう説明したらいいのか少し難しい。何て言うんだろう。鉄板が少しずつ落下している、と言えば伝わるかな。

 ゲームで良くある乗ったら落下していくリフトの鉄板版的な物だと考えればいいと思う。それも段々落ちていくスピードが早まりつつあるような気がする。と言うか、確実に早まっている。


   「多分落ちたら死ぬ……よね」


「そうだね」


なら、もうする事は一つしか残っていない。


   「走るよ!!!」


「うん!!!」


私達は一気に走り出し、足が地面につく毎に来る焼けるような痛みに耐えながら落ちていく鉄板との距離を取っていく。

 だが十分も全速力で走ってなんていられはしない。五分位した時だった。


   「はぁ、はぁ……い、息が……持た……ない……」


「私も……もう、お腹が…痛くて……しょうがないよ……」


しかしながら私達の苦痛の叫びに鉄板は耳を貸すことも無くどんどん奈落へと落ちていく。


   そんな時にアナウンスが入る。


《体力強化 Ⅱが体力強化 Ⅲへとレベルアップしました。体力が上昇します》


たとえレベルがⅢになったとしても、スキルの効果はこの階層には関係ない。疲れが取れるわけでもない。


   「雨音、辛いだろうけど、このまま逃げ切るよ!」


「りょ、了解……!!!」


◇◇◇◇


もう、足の感覚がもうほぼ無い。何度も転びそうになっては光喜を思い出し、走った。別れたっきりどこかで無惨に死にました、だなんて光喜が知れば私達を追って心中するのは想像が付く。


   「後もう少しの辛抱だよ。後もう少しで……」


鉄板の落ちるスピードはもう最初の二倍以上になっている。つまりはずっと全速力で逃げ続けなければならない訳だ。しかも鉄板の熱さも尋常じゃない。100℃は優に超えている。もう止まるなど出来るわけがない。


   《第二階層制覇迄残り一分です》


このアナウンスで希望がやっと見えた。もうこの地獄を脱出出来るのは確実。でも、少しでも気は抜いてはいけない。


   「雨音、ラストスパートだよ。もうすぐ、終りが来るから……」


「うん!!!」


   雨音のその苦しみに耐えながら浮かべた笑みには、涙がそっと添えてあった


◇◇◇◇


   《第二階層を制覇しました。第三階層に挑戦出来るのは明日の午前六時からです》


最初にいた牢屋に戻ってきた。それと同時に地面に足が付いたせいか、強烈な痛みが全身に駆け巡り、悲鳴を上げる。痛すぎて涙が出た。雨音は耐えているというのに。

 もうあんなのは懲り懲りだ。そう思いながら治癒魔法で足の火傷を治す。あの時は見もしていなかったが、よくよく見ると、相当な程に黒く焦げ跡のような物が足全体についていた。思わず「うわっ……」と自分の体ではない異物を見たような声を発してしまう。

 それを見た雨音がクスクスと笑う。


   「何笑ってるのよ!雨音も焦げてる癖にー!」


   雨音の足の方を指差すが、既にその足は完治していた


「いやーごめんごめんwwwホントに今の顔が面白くてwww」


   「そんなに今変な顔してたの……?」


   光喜に見られてたら最悪だったわね……


「ふふ、ふふふ……あはははは!最っ高ーwwww」


   「もう!いつまで笑ってるのよー!!!」


◇◇◇◇


   「ナ、言ッタダロウ。スグに制覇サレルト」


「ああ。君の勘は鋭くて侮れないな」


   「タダノ演算結果ニ勘等ハ無イ」


「そんな全否定しなくたっていいのによ……」


   「AIハ白黒付ケタガル物ダ」


「それだから人間に近づけないんじゃないか?」


「ソノ言イ方ハ優柔不断ガ良イモノダト言ッテイルノト同ジダ。ソウダトスレバ、俺ハ全否定スルガナ」


「優柔不断がどうとか言ってんじゃない。人間に近付きたいお前を思っての発言だ。意味を履き違えるな」


   「ソ、ソレモソウダナ」

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