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31.管理者ビガイ

ソレは鉄格子の鍵を開けると八本ある脚の中の一本を使って手招きする。いや、脚招きかな?


まあ、そんな感じでついて行く事になったんだけれども、それにしても何なんだろう、コイツ………


「な、夏目お姉ちゃん……。私、怖いよ……」


   「うん、私も怖い……」


私達が牢屋から出て僅か十数mで蛍光灯の明かりが薄暗くなり、目の前を照らすのはソレの液晶画面だけだった。

 怖い、とは言っても、ソレは歩みを止めたりはしない。


「何かここ、廃墟みたい……」


   「確かに、どこか人気の無さがあるわね……」


そう。正にここは廃墟だ。

 天井に付いている蛍光灯はあそこ以外消えているし、床にはガラスや窓の縁、コンクリートの塊なんかも落ちており、いかにも誰もいない、といった感じがする。


「私達、今からどこに向か」


「軟弱ナ↑人↓間、私語ハ謹メ↑ェ。殺サ↑レ↓タクナケレバナ↓ァア↑」


ソレの目は血管が走り、私達に脚を向ける。良く見ると先が刃物のように尖っていた。


「ヒッ!!!」


   「わ、分かりました……」


「ヨロシイ……」


お、おっかないよコイツ………


◇◇◇◇


数分同じような見た目の廊下を真っ直ぐ突き進んで行くと、とても広い空間に出た。

 天井は見えない程高い。そして、異様な物体が一つ、あった。


「連レテ参リマシタ」


   ソレは目の前にある液晶画面に(ひざまず)く。


「オ前等ガシュウジンバンゴウ259533ト25031203ダナ」


   「は、はい……その通りです………」


液晶画面とは言っても、大きさがソレとは桁違い。多分、ビルよりも大きいその画面には、大きい目玉が一つだけ表示されていた。


「待ッテイタゾ!!!オ前等ノヨウナ絶大ナ「力」ニ溢レテイル人間ガココヘト来ルノヲ!!!」


   どうやら私達は歓迎されているみたい……?


「スマナイ、ツイ興奮シテシマッタ。ソレニ、自己紹介ガ遅レタナ。私ハコノ無人牢獄ノ管理者、ビガイ、ダ。ソコニイルノハ「スモーア」トイウ私ノ子分ダ。オ前等ノ名ヲ聞カセテクレ。シュウジンバンゴウダト呼ビニククテショウガナイ」


何か、割と親切な人?なのかな。それに、無人牢獄って、何の事だろう?


「私の名前は小川夏目。それで、この子が二条雨音。それと、申し訳ないけど、ここがどこなのかとあなたが何者なのかを教えて欲しいんだけど……」


「貴様ァ↑↑↑ビガイ様ニ何テ口↑ノ↓訊↑キ方ヲオオ!!!」


スモーア、と呼ばれるそれは刃物である脚を振りかざす


   「うわぁぁぁ!!!」


「ヨセスモーア。実験台ニ傷ヲ付ケテハセッカクノ機会ガ無駄ニナル」


   スモーアの動きがピタッと止まる


「シ、承知シマシタ」


   ん?実験台?それって私達の事?え!?


「夏目お姉ちゃん……。私達、どうなるの……?」


   「分からない……」


でも、あのロブスターの恐怖に比べればどうったって事ない。襲わないと分かれば、怖くはない。それは雨音も同じだろう。


   ビガイは咳払いをして、話を戻す


「質問ノ事ダッタナ」


   「は、はい……」


「ココハサッキモ言ッタ通リ、無人牢獄トイウ私ガ稼働サセテイルイワバブタ箱、ダ」


   「ほ、ほお………」


「ソシテ、名前ニモアル通リ、ココニハオ前等以外ニ人間ハイナイ」


「人間がいないの?何か寂しい……」


   「じゃあ、あなたは一体………」


「私ハAI、ダ。ソウ、自動的ニ発電シ、稼働スル自律型ノナ。ソコニイルスモーアモAIダ」


   「AI……じゃあ、実験台っていうのは……」


「私ハドウ努力シタッテAIニハ変ワリナイ。ナラバドウスルカ、限リナク人間ニ近付クノダ。ソノ為ニハ実験台ガ必要ダ。コレデワカルカ?」


「実験台が必要なのは分かりました。ですが、そうなれば一体私達はどうなるんですか……?」


「イイ質問ダナ。イイダロウ、答エテヤル」


私は謎の緊張感を感じている。まあ、それもそうだろう。殺される可能性は十分考えられる。


   だが、私の考えとは全く答えは違った物だった。


「ソレハ、人間ノ行動ヲ観察スル為のサンプルニナッテ貰ウ、トイウ物ダ」


   思わず私と雨音はこう呟いた。


      「え?たったそれだけ?」

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