30.生き残り方
◇◇◇◇
「こんな感じで、何も分からずに私はこの世界に来たの。話し方がちょっとぎこちなかったのは、そのせいだったの」
「そうだったのね……」
「それに、お父さんの事を考えずに、こんなとこまで来た私って、本当に馬鹿だよね。それに、未来に行ったり過去に行ったりして、歴史を滅茶苦茶にしちゃうんだもん。これって犯罪だよね。だから、どうしても、歴史を変えたくなくて、覚えてる記憶をかき集めて、自分を偽って、事実も上書きしようとして。これを全部思い出したのがホント数十分前の事で。もうどうしようもなくて……」
「雨音は悪くない!」
「え?何で?だって私は……」
「違う、雨音は全然悪くない。犯罪者でもない!雨音は……何もかも分からなくて、どう生きたらいいか分からなくっても、それでもやるべき事はちゃんとやってるじゃない!!!」
「夏目お姉ちゃん………」
「歴史がどうとか知ったこっちゃないわよ!生きてる今がホントの歴史なの!未来がどうとか言っても、今からじゃどうしようもないでしょ!!!」
「うん………」
「雨音には、お父さんとお母さんが待ってるんでしょ?だったら、どうするの!」
雨音は数秒下を俯いて黙った後、顔を上げて話し出した
「生きて、帰る?」
「そうでしょ!だから、こんなとこで死んでなんかいられない!早いところ、光喜に合流して、さっさとこんな所、おさらばするの!分かった?」
「………うん!分かった!もう大丈夫。きっといつか、家に帰って見せる!」
「その調子よ!娘の強くなった姿、お父さんとお母さんにみしてやりなさい!」
「うん!!!」
◇◇◇◇
「さて、取り敢えずはここからどうにかして出ないと話しが始まらない訳だけど、持ち物は……ないかぁ。そりゃそうよね……」
「起きたら、ここにいたもんね。服とかは何も変わってないみたい……」
確かに、服は無事みたい。でも、床はコンクリートで舗装されてないしベッドはないし、あるものもトイレと水道だけ。
それに、何だか霧みたいなのがずっとあるし、何だか薄暗いし、鉄格子の外にある蛍光灯が不気味に消灯してるし、目の前の通路はほぼ真っ暗で見えないし……ここって死体安置所か何かなの?じゃなかったとしても、環境が劣悪すぎて一週間も生きていれなさそう………
「うーん……どうしたものかしらね……」
「うーん……」
私達が頭を悩ましていると、通路の奥の方から「ガシャン、ガシャン」という音が聞こえてきた。
「え?何この音……」
「夏目お姉ちゃん……怖いよ………」
「で、でも、きっと看守だよ。きっと」
「看守ってこんな音出しながら近付いてくるの……?」
どうやら、この「ガシャン、ガシャン」という音は段々とこちらに近付いているようだ
私達は部屋の角の隅にくっついて座る。
「何か、見える?」
それは私にも見えた。そして、十数秒もすると、それは鉄格子の目の前に立っていた。
『うぁぁぁぁあ!!!!!』
それは、脚が蜘蛛のように細く、八本生えており、胴の部分にはテレビのような液晶画面があり、その画面には目だけが写っていた。
それらは全ての大きさや焦点が合っていなかった。それに、大きさが大きさ。直径3mはあると思う。私は恐怖で声が出なかった。それは雨音も同じだった。涙が出そう……
そして、その液晶画面からは声も発せられた。
「シュウジンバンゴウ259533、25031203、ツイテコイ」
私達は、何も考えずについて行く事にした




