0-21.本気
ま、奴に叫んでもどうせ聞こえていないだろうな。
奴。すなわち俺がもう後数秒で闘う敵だ。
奴の見た目?どう説明したらいいのか分からないが、透明………って言ったらいいのか?兎に角全身が透けているようで、輪郭だけが何故か見える。
それに、多分浮いている。どういう原理かは知らないが亜禅と同じ様な能力なんだろう。
鑑定阻害のせいで奴がどんな攻撃をしてくるか、その他諸々何も分からない状態での戦闘になる。
ま、そんな事考えても何の解決にもなりゃしないんだがな。
そろそろ、か。
3……2………1
『0』
そう呟くと同時に亜禅を引き抜いて攻撃を一つ、受け止めたつもりだった
「いない!?奴はどこだ?」
輪郭は見えていたが今はそれすらも消えている
でも確かにまだ剣に感触は力が残って
《スキル 予知を自動発動》
何故かアナウンスさんの口調は早口だった
そして、予知を見せられて俺は理解した
まだ、目の前にいる……!?
俺は内心少しだけ焦っていた
「コイツ、かなりの知性を持ってやがる……!!!」
コイツは恐らく、わざと俺に見えるように輪郭を見せ、自分がいることを認知させた上で俺に挑んできやがった。
つまり、俺を舐めているか、闘うことを求めているという事だ。
並大抵の魔物はこんな行動を取るわけがない。それに、この攻撃の力加減、俺を試しているに違いない。魔力感知赤以上ならもっと攻撃力がある筈だ。
少しコイツに一泡ふかせてやりたい気分になってきたな。
もう、こっからずっと本気出すか。
その場合、いや、コイツと闘うなら、スキル 洞察や予知を駆使しなければならない。
索敵は多分効かない。超上級スキルと言えど相手に干渉するスキルはあんな相手に通用はしないだろう。
アナウンスさん。洞察と予知を常時ONに出来るならしてくれ。
《了。スキル 洞察、予知を常時ONにしました》
準備は終わった。多分、どの道本気で闘わなければコイツには勝てない。ならする事はただ一つだ。
奴と本気で殺り合う事だ
俺は剣でその攻撃と思える感覚を弾き返して後ろにスキル 迅速で引き下がる
奴もこちらに来るようだった
「良し、こっちに来る」
止まる気配はなさそうだった
「今ならいけるか?こういうのはタイミングが最重要………今だ!アイススピア!!!」
だが、当たる訳もなく躱され、槍は遠くへと飛んでいく
「それなら、連投すれば当たる筈!………多分」
俺は兎に角沢山奴に向かってアイススピアを放った。だが一つも当たる事はなかった
その時、俺ははっとする
「あ、ヤバい!撃ちすぎたか!?死角を作っていないといいが………」
辺りを見渡すが、見失ったのに気付くのに時間は掛かる訳もなかった。
「洞察で上手く位置を掴めればいいんだが………」
洞察が発動するのは敵が半径10m以内で、俺は強化したから15mになった。それ以上外だと何も分からなくなる。
恐らく奴は俺が洞察を使っているのを察知して少し遠くに離れたのだろう。
近くに来るまで待つか?いや、駄目だ!離れたなら奴がする行動は決まっている。
「魔法だ!」
あれ位の強さがあって魔法が使えない訳がない。
いつ来る?いつ来るんだ?
予知は攻撃の2秒前にどんな攻撃が何処からどの範囲まで来るかが一瞬で脳内に情報が送られる。それまで待てばいいのだが、それも奴は対策してくるか?
いや、分からない。多分想像も出来ないことをしてくるに違いない。予知まで今は待つだけだ。それしか俺には出来ないからな。
1秒、2秒、3秒、と緊迫した空気が流れて段々と焦りと恐怖で息苦しくなる
まだ俺を試しているのか、と考えた時だった
予知が来た
《棘攻撃が地面から対象の半径20mに出現》
俺は二度も同じ過ちは犯したりはしない
ジャンプして棘を避ける。ここまではいい。恐らく結衣と同じ様にこのジャンプした隙が奴の狙い。
さあ、何処からでも攻撃して来い!!!
魔法でも、物理攻撃でも、方向が分かればそれまで。奴は、どうする………!?
《水攻撃が正面より67.4°右の96m先から対象に向かって秒速82mで接近》
良し、一秒は稼げる。なら行ける!!!
俺は火属性魔法を足の裏から発射することで自分を飛ばし、さらに風属性魔法で火力を底上げ。
飛びながら一瞬で方向転換を行い奴の元へ一気に向かう。
飛んだ距離と奴の攻撃のタイミングを合わせて………
今!!!!
俺はここで迅速を使うことによって更に加速。奴の攻撃よりも速く奴に到達すれば攻撃を仕掛けるだけ。
「これは………行ける!!!!!」
[ナカな……ヵ、ヤル……な、キ、き、キさママ、マ]
!?い、今、奴の声が………!?
俺は謎の声に惑わされつつも奴の体を感覚的には真っ二つに斬って着地した。
だがそんな事で終わらせてはくれないようだった
《注意 攻撃が来る可能性 大 》
え、何故具体的に説明がない!?俺はどうすれば………!?
[ハー……シャーダー、ツァ………イト]
その言葉を聞いた時、また体が浮いた気がした




