2.星の思い出
ここは、何処だ。
周りを見る限りここはどっかの刑務所って所だろう。取調室か? ……じゃなくてだな!
コイツ等、本当に映画にでも出てきそうな見た目だ。
宇宙人か? ……まあそうだろう。地球にはこんな奴は存在しない。
その理由として、目と腕が見る限り俺等の持っているパーツより一つか二つ多い。しかも肌の色と来たら青緑だ。明らか不健康じゃないか。
何を食べればそうなるんだ? もしやこれが食文化の違いか……
まあ、一応地球人とは同じような体型だからそこまで嫌悪感とかはない。しかもご丁寧にコートを着て眼鏡も掛け、帽子も被って、俺等地球人に寄せてくれているのは有難い。
……有難いとは言った。だがな!!!
「お前ら人間の見た目してないぞ!? 俺をどうする気なんだ? 母さんは? 母さんはどうしたんだ? まさか、食べられたのか? それとも何かの生贄になったのか!? 早く家に返せよ! 俺はまだ死にたくない! 死にたくない!」
見た事のない生物には怯えてしまうのが本能なのだ! いくら地球人に寄せたとしても宇宙人は宇宙人! 人体実験の被験者にでもされたらと思うとちびってしまいそうだ。
そういう訳なので、縄で縛られている俺は必死にもがいて抵抗する。が、それは虚しくも芋虫のように醜いだけだった。
しかも少し笑われた。畜生、俺はこんな風に死んでいくんだな……
「静かにしろ。そういうのが耳障りで目障りだ。で、まあそりゃあ、あんたら人間から見れば俺らは人間じゃないな。エイリアンっつーのか? 地球では」
エイリアンだと!? やっぱり宇宙人だったか。
てか、エイリアンだなんて、そんなのSFでしか聞いた事が無い。確か……麺・イン・ブラックだっけ? イカスミパスタみたいだな。何か違うけど。
そういえばコイツ等日本語喋れるのか? いや、でもさっき文字と言葉を分かるようにしたとかどうとかこうとか……
「それもそうだがここはどこなんだ? なぜ俺はお前等に縛り付けにされているんだ? 早くこの縄解けよ!」
それに俺は喉が乾いて仕方ないんだ! 早く解けー!
「大丈夫大丈夫。痛い事はしないから、さ。じゃあ一つずつ答えるわ。ここは惑星アインザムカイト。地球からは観測できない場所にあるんだ。で、その縄はお前さんが暴れたりしないようにきつく括ってある。そう言う事だ。あーそうだな、一回水でも飲んで落ち着け。ほら」
と言って目の前の奴がコップに入った水を差し出す。変な色かと思ったが割と普通だった。
と、その前に地球からは観測できない? じゃあここは地球じゃないのか? ていうか……
「誰があんたが差し出す水を飲むんだよ! 俺からしたらあんたらって何か見た目がアレなんだよ!」
と言うとソイツはコッブに入った水を飲み干してしまった。俺の水が……いや、拒否したのは俺じゃないか。何言ってんだよ。
「見た目がアレだと? それはこっちの台詞でもあるんじゃないか?」
うっ……結構大きめのブーメランを食らってしまった。心臓に突き刺さってズキズキと痛い。まあ自業自得か。
「それもそうか。あ、えっと……すまない」
「フッ、それでいい」
何だその上から目線は。まるで地球人がカースト下位層みたいじゃねえか。
「……取り敢えず縄解けよ。結構キツイんだよ」
多分手首から指先にかけて血が止まっている。どんどん指先の感覚が無くなって……
あ……ヤバい小指が役立たずになる……
「いや、まだ駄目だ、お前がまだ暴れないという確証はない。はあ、まともに話せたのにこれかよ。これじゃあ他の奴らと一緒だな」
いや暴れるかボケ。こっちは命掛かってんだよ。んな事したら速攻斬首の刑だっての。
「他にも俺みたいにここに連れてこられた奴がいるのか?」
いたとしてもきっと生き残りなんかいちゃいないんだろうな。全く、世知辛いもんだ。
「あぁ。いたよ。でも全員抵抗したから、まだまともに話せる人がいなかったんだ。でもお前が来てくれた」
「それでここに連れてこられた人はどうなったんだ?」
どんな感じで死ぬのかとかは知っておいたほうが身の為だ。いざとなったらここから抜け出せる可能性もなきにしもあらず、だ。
分かってはいたが余りにも予想外な答えが返って来た
「知らない」
おいおいここまで冷淡に言葉を吐きつけられるとこんなにも悲しいもんなんだな……兄さんからは言われすぎて慣れてたが、改めて言葉って凶器だなーって思う。
「は? 知らないってどういう……」
「言っておくが俺はただのお前の監視役だ。上層部がここに来た人間の事を色々決めてるからそんな事なんて知ったこっちゃないんだよ」
おーそこら辺はしっかりしてんだなここ。セキュリティとか情報機関とか何もなってないと思ってた。
「そんな……」
俺は思いっきり落胆した。膝から雪崩のように崩れ落ち、人生の終わりを悟った。
何も訳も分からず死ぬとは、神様も性根の悪いもんだ……
「そろそろ落ち着いて暴れる気もなくなったか? じゃあ名前を訊く。俺はシュリュッセルだ。よろしくな」
だから暴れないっつーの。これが異国民の文化って奴か。
「霧谷光喜」
「へぇ。いい名前じゃないか」
いい名前なのか??
いい名前なのかを脳内会議していると突然ドアが開いてシュリュッセルとやらのお仲間がやって来た。
「伝達! 陛下が人間にお会いしたいとのことです!」
陛下? ここは何かの王国なのか。それにしては随分と文明の発達している事やら。
そこら辺に見た事もない機械が動いてやがる。如何にもメカメカしい奴が。
もっと西洋風なんじゃないのかよ、王国って。なんか期待外れだな。
「さぁ行くぞ光喜さんよ」
俺は縄を解かれて代わりに手錠をかけられる。なんだよ、俺が犯罪者みたいじゃないか!
あ、やっぱりこのまま王の目の前で斬首の刑なんじゃないのか!?
「え? ど、どこだよ? 今から俺は死へ直行するのか? 嫌だ死にたくないぃぃ!」
「はいはい静かに静かに。これから向かうのは王城だ。これからこの星の陛下、トイフェル様にお会いする」
惑星アインザムカイトの情報①
光喜のいた世界とは全く違う世界、異世界にある。光喜はUFOに連れ去られている間、気を失っていた為気付いていない。
そして、「宇宙の果て」に位置する星である。
大気、海、森、砂漠、雪原、草原などがある少し赤みがかっている星であり住民の知能レベルも高い。
だが、資源(神石)を取ることができないため常に枯渇状態にある。
しかしながら、最近の研究で攻撃力強化の魔法を使う方法が発見されたため少しずつ枯渇状態が緩和していっている。
また、住民の力があまりにも非力なため戦うことはもちろん、狩りや、漁、ましてや生活すらままならない人も居る。
しかし、その住民の中でも生まれつき身体能力が高い人は冒険者ギルドで冒険者をしたりして魔物と闘っている。
木製の如何にもゴージャスで王宮って感じの扉が段々開かれるのを前に、大きめの色々な感情が入り交じった溜め息を付く。
さて、これからどうしたものか、と。
扉が完全に開くと、俺は蹴られて前に押し出される。すると、その勢いが有り余って王様の前でずっこけてしまった。なんて辱しめを俺にさせるんだ! この外道!
なんて愚痴を言いながら起き上がると、王様が俺に話し掛けて来た。
「お主が地球人か」
なんとも王様らしい服装だこと。地球人じゃないのが違和感ありだが。
取り敢えず王様の前なので跪いて置く。
「は、はい。その通りであります、陛下」
でもこの星の王なんだ。身分をわきまえないと殺されてしまう!
「うむ。お主の名は何と申すか」
あー喋り方が王っぽいし急にバリバリ緊張してきたー!!! やばい声が震える!!!
「霧谷光喜、と申します。陛下。一つ御質問よろしいでしょ、うか」「言ってみなされ」
「どうして私……はここへ連れてこられたの、です、か?」
ま、訊いてもどうせ答えてくれはしな……
「お主が力の持ち主だからだ。それと一回落ち着きなされ。声が震えているではないか」
答えてくれた! しかも俺にこんな言葉までかけてくれるなんて……優しい人? だな。
もしかしたら斬首の刑は逃れられるかもしれない!
「は、はい! それとその力とは……」
力? 俺に力なんてあったっけ? 引きこもってたし運動は苦手だぞ……?
「おい! アレを持って来い!」
「承知しました!」
何だ? やっぱりでっけぇ薙刀持ってきて斬首の刑にするんのか!?
「ア、アレとは一体……」
「時期に分かる」
死へと向かう恐怖を胸に、沈黙の時間が過ぎていく。
後この跪く体勢結構キツい。もうさっさと終わんないかなこれ。人生は終わって欲しくないけれど。
「神石をお持ちしました!」
「コレだ」
と、言われるままに神石と呼ばれている物の方を見ると、それはまあ丁寧に木製の高級そうな机の上に紫色をした石油王が使ってそうなクッションの更に上にあるケースにそれは入れられていた。
そこまで重要な物なのか? まさか国宝!?
「これは……」と、神妙な面持ちで国宝らしき物をまじまじと見る。
日本円にしたら億はくだらなそうな見た目だ。サファイアみたいだが、何か違う。説明はしっかり聞かないとな……
「神石と言って地中深くや隕石の中に稀に入っており燃料にもなる貴重な石だ」
その言葉に一瞬フリーズした。
石? 宝石じゃなくて? あそう……
それに、正八面体の石とは珍しい。人工物じゃないのかこれ。
「それで、力とこの石にはどんな関係が?」
「今この石が光っているだろう。この石がお主を導いている。
お主にはこれを扱う資格があるということだ。さぁ、受け取りたまえ」
「え? あ、はい分かりました」
隣にいた兵が震える手で丁寧に箱を開ける。これ本当に俺が持つ資格あるのか……?
「ではこの神石について説明しよう。神石に対して強い意志を持ち、放ちたいものを頭の中で考える。そして意志を外へ開放すると陣が展開し、考えたものが出てくる。これを創造魔法という。一番一般的な魔法だ。意志を持つ時間が長いほどその効果は大きくなる。ただし、使いすぎると体に負担がかかり気を失ってしまう。使える回数は人によって様々だ」
「分かりました。一回やってみてもよろしいでしょうか?」
魔法!? おいおいまるでファンタジーな剣と魔法の世界じゃないか! 本当に夢にまで見た魔法が今、撃てるのか……!?
「良かろう。まずは一番簡単な水属性創造魔法をやってみなされ」
「はい! まず神石に対して強い意志を持って、それから放ちたいものを頭の中で考える……そして意志を開放すると……!?」
まだ魔法の初心者だからなのか、思いもしない方向へとその弱々しい水は発射され、陛下の顔面へと直撃した。
「も、申し訳ございません! あぁ、こ、殺される……!」
俺はこの状況を目に、またもや膝から崩れ落ちた。
これは人生終了のお知らせだな。良し、母さん、今まで育ててくれて有り難う。
「貴様! 陛下に向かって何をやっているのだ!」
あーもう全てがどうでもいいーアハハハハ
「いいんだ新兵よ。それよりお主とんでもない才能の持ち主だな。フキフキ」
え!? いいの!? 許しちゃうの!?
王様がこんな仕打ち受けて!? 優しすぎない!? 大丈夫!? え!? え!?
俺は感情を抑えるのが苦手だ。多分周りから見ればさぞ慌てふためいているだろうと容易に想像が付く。
「そ、そうでしょうか? で、でも何だかとても疲れたような感じがします……」
そう言えば疲れたようなそんな気がする。心の底から酸素を欲しているようなそんな感じが……
「それはそうだろう。では本題に入ろう」
「本題、ですか?」
「実はこの惑星アインザムカイトの住民たちは余りにも非力で隕石を破壊するのにも機械を使うためコストがかかり神石が枯渇状態にあった。最近の研究で攻撃力増加の魔法が発見されてから少しずつ良くなってはいる。だがまだ枯渇状態が回復しきった訳ではない。そう言った事から、お主ら地球人に助けを求めている。協力してくれるか?」
陛下が頭を下げる。……陛下が頭を下げる!?
これには新兵も動揺したようですぐに止めに入る
「陛下、お止めください! 地球人に頭を下げるのなど……」
おいその言い方は不味いだろ。俺等が下等生物みたいじゃんかよ。
「お主は引っ込んでおれ」
「し、承知致しました……」
新兵は納得がいっていないような様子で後ろへ下がって行った。
「光喜よ、判断の方は定まったか」
もうどうにでもなっちまえ! 俺は地球に帰るんだよ! その為なら何だってするさ。手段は問わないけど。
「それで地球に帰れるなら乗ってやる。だが、救う手段とかは問わない。それでいいな?」
あやべタメ口訊いちゃった。
「いいだろう。ならば資源調達の前にお主はこの惑星の首都トアハイトに行ってこの国に慣れておくのだ」
許された……良かったぁ……
これで俺の目的は定まった。この星を手段は問わずに何がなんでも救って家に帰って母さんを安心させる! それが、俺の第一の目的だ!
惑星アインザムカイトについての情報②
アインザムカイトの周りには恒星が二つ、衛星が一つの小規模な構成となっている。
また、アインザムカイトの内部は神石が三十%を占める。
〜首都トアハイト〜
「しっかし地球の町並みにそっくりな街だな。色んなお店もあるし道もエイリアンで賑わっているしここは住みやすそうな」
「キャァァァ!」と悲鳴が聞こえる。悲鳴が聞こえる?
「何だ? いま悲鳴が聞こえたぞ? やっぱり住みにくいのかも……」
「止めて! 離して! 誰か! んっ!? んー!!!」
「ち、地球人!? それに、可愛い……じゃなくて、何で地球人がこんなとこに……まぁ今はそんなことはいい! て言うか、さっき悲鳴を上げてたのに街行く人達は誰一人として気に留めてない。これが日常茶飯事だと言うのか? いやいや、今は考え事をしている暇はない! 助けることが先決だ! あっちか!」
地球人が連れ去られた方へと向かう
「お嬢ちゃん地球人? 可愛いじゃないウヘヘ」
おお喋り方キショ。それ絶対モテない奴だって。
「嫌、ちょっとやめてください!」
そりゃあの子も嫌がる訳だ。俺なら速攻殴るね。
良し! 助けると言っても、俺には素手で人に勝てるような筋力は無いし、魔法も使いたい。じゃ、早速実戦といこうか!
意識を集中させて、水を自ら創り上げるように慎重に……良し、行ける。
解放! 『水属性創造魔法!』
勢い良く水が魔法陣から飛び出る。そして今度は狙う方向もバッチリだ。
「アバババババ!」
チンピラは気を失ったようで、その場にぐったりと倒れた。今ので倒れるのはなんとも弱っちいが、王様が言ってたように非力なんだよな。体が弱くてもしょうがない。
「ふぃー疲れた……」
何だか初仕事を終えた気分だな。爽快爽快!
「あっ、あの!」
話し掛けられた。陰キャの俺に女子に話し掛けられる魅力なんてこれっぽっちも無い筈だが。
「助けていただき、ありがとうございま、え? ……えぇ!?」
凄く驚いている。驚いた顔も可愛い。……っておいおい俺は初対面の人に対してこれは変態かっての。
「どうした? 俺の顔に何か付いてる? 後、君泥だらけだけど? どうかしたのか?」
俺に今出来る最高峰のコミュ力を使って何とか話し掛ける。
今俺の心臓が悲鳴を上げる程にバクバク鳴っておられる。早死にしそうな早さだ。
だが、その子は顔を横に振る。あれ、違ったか。
「いや、その……私以外に地球の人がいるなんて知らなくて……後、これは少し汚れただけです!」
「そう、なのか……?」
少し事情が違いそうだけど、まあこの子が言ってるんだしそう言うことにして置こう。
「えっと……私、小川夏目って言います!」
「小川夏目。いい名前だな!」
「そう、ですか?」
あ、俺も言っちゃった。そう言う事か、いい名前だなって。
「俺は霧谷光喜だ。よろしくな」
何とかその場凌ぎで会話を成立させた。そもそもここ最近は全く人と話してなかったから不安だった……
全く、幾度となくこの3ヶ月間危機を乗り越えてきたからこそ本番に強いだけあるな、俺。
「はい!」
さて、まだこの街を探索しなきゃだし、腹減ったし、店でも探すか。
「じゃあ俺もうそろそろ行くな。またどこかであ」
「ちょっと待ってください!」
「?」
何かまだ俺に用があるのか? もしかして、お金ください! とかそういうのか? 生憎俺は金の持ち合わせがないんだ。
あ、じゃあ店行けねえじゃん。俺の飯があああ!!!
と、そういう馬鹿みたいな考えとは裏腹に驚きの答えが帰ってきた。
「私もついて行っていいですか?」
「え?」
俺の脳内思考が完全にシャットアウトされた。が、何とか脳への通信を再開する。
「ダメ……です、か?」
上目遣いで懇願して来てやっと正気に戻った。女の子の上目遣いはこういう効果もあるのか、知らんけど。
でも、こんなにお願いされているようじゃ俺には断れない……
「いや、駄目なことはないけど俺は今から」
「そんな事はいいんです! 私は、ここに来てからマトモな生活なんて一回もしてなくて本当に毎日が怖くて寂しくて、だから、お願い……私を……連れてって……」
そう言った夏目の瞳には、小さな水溜まりが出来ていた。
女の子を泣かせてしまった!? しかも美少女を!?
ど、どドどどうしよう!? 俺にできる最低限の事は……と、とりあえずなにか優しい言葉を掛けなければ……
「君の気持ちは良く分かった。じゃあ、えーと……ほら、そんな暗い顔しない。顔上げて。その方が、その……似合ってる」
「うん……」夏目は顔をゆっくりと上げる。
そして、なぜか夏目の頬が少し赤くなっているように見えた。気のせいだろうか。……気のせいだろう。
それより多分この子も地球に帰りたいと思っている筈だ。だから……
『一緒に、地球に帰ろう』
そう言うと夏目は驚きを隠せず、「え? いいの?」と確認する。
「いいよ。女の子を見捨てる程俺も悪い奴じゃない」
「本当に一緒についてっていの?」
夏目は再度俺に確認を求める。
「さっきからそう言っているだろう……」
そう言うと、急にその子の黒色の目が眩しく輝いたように見え、顔が太陽みたいに明るくなる。
なぜか、この人(俺)に人生全てを託してもいい、という誠意的なのが感じられた。こんな俺に誠意、か。
「やったー! 私、一生光喜についていく!!!」
そう言われた俺は今何をしたらいいか慌てすぎて分からなかったから、取り敢えず夏目の綺麗なしょーとへあー……的なそれっぽい髪型の頭に手を当て、ぽんぽん、をしてみる。
人生で一度はしてみたかったのだ。その代償に嫌われてもいい位にはやってみたかった。
だが、以外にも夏目は抵抗せず、受け入れてくれた。ていうか、「えへへ」と言って喜んでいた。逆効果だった場合、とんでもない災難が降り掛かる事は間違いなしだっただろう。
全く、人の運命を左右する大事な時に俺は何を……だからお母さんにニュース見てモラル学べって言われたのかな……
まあ、本当に夏目が素直で良かった。今思えば流石に初対面でまだ会って10分も経ってない人にアレをするのはどうかしてるか。常識を改めないと今の俺は駄目そうだ。
これが、リアルで充実している、のか……! 使い方、合ってるのかな。
一方、倒れたチンピラはそのままである