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19.決着

 待て待て、そっか、アイツの姿に気を取られて忘れていたが俺は今アイツと闘っている最中だったんだ。肝心な事をつい忘れていた。


「お、おう、暇つぶし程度にはなれると良いがな」


 そう言いながら床に落ちている剣を拾って直す。調子狂ったが、やる事は同じだ。慎重に、な。


「次は居眠りするでないぞ」と、アイツも床に刺した刀を抜いて構える。


「相手が人なら闘いやすい」

「勝つ気とは生意気だ! 光喜!」


「いざ、尋常に」


「「勝負!」」


 まずは一振りして相手の様子を伺う。が、アイツは片手で俺の剣を受ける。微動だにせず、余裕の笑顔(可愛い)まで見せる所、女の子とは思えないほどのパワーだ。

 そんな事考えている余裕もなくアイツは下から斬り上げを仕掛けてくる。


 俺は素早く身を引く。


「危ねえ危ねえ……」

「避けてばかりじゃあ勝ち目は無いぞ!」と言ってこちらに近づいて来る。


 だが、俺は剣術だけで勝とうとは思っていない。ていうか、勝てる気がしない。


鉄の隕石(アイアンメトロイト)!!!」


 俺の即興創造魔法シリーズ第一弾。鉄の隕石(アイアンメトロイト)だ。あ、でもロングソードが第一弾か。ならこれが第二弾、じゃなくて闘いに集中しなければ……俺の想像では鉄の20センチ位の鋭利な塊が高速で飛ぶ筈だ。

 より速く飛ばすために風魔法を重ね掛で撃っている。当たってくれるか……

 でも、美女を傷つけるのは俺の心が傷む………

 いや、そんな事は言っていられない。多少は飲み込んでくれ、アイツ!


「魔法か。だが、そんな下級の魔法じゃニャーは倒せん!」


 そう言って簡単に鉄の隕石を切り捨ててまたこちらに近づく


「魔法というのはこういう物を言う! お前の技、そっくりそのまま強化して返してやる!」


鉄の隕石(アイアンメトロイト)!』


 アイツがそう叫ぶと、さっき俺が放った時よりも一回りは大きい複雑そうな魔法陣が現れ、デカい鯉位の大きさの鉄の隕石が襲ってきた。


 これは、死ぬ! そう思い、咄嗟に俺は横へ避けると、目の前を風を切る音共に鉄の塊が過ぎ去る。

 そして、後ろの方にある壁に衝突してどでかい音がなった。

 風が背中に吹き付ける。


「い、今のは……」

「これが本当の魔法だ。良く覚えておけ!」


「こんなの嫌でも覚えると思うよ」

「フッ、余裕そうなその態度。後で後悔するぞ!」


「お前もな!」


 また互いにぶつかり合ってカチャカチャ音を立てる。火花も散らしてバトルシーン感満載だ。

 と、脳内で調子こいていられる程俺も暇じゃない。


「剣を押し付けあってもつまらん。ならこれはどうだ!?」そう言ってアイツは刀を上に投げる。

「な、何をして……?」


 自然と目が刀の方へ向く。


「よそ見をするな!」


 しまった! 罠か!


 俺はすぐさまアイツへ目を向けたがもう遅かった


「妖魔武技一ノ術・神速手槍(しんそくしゅそう)!!!」


 ……腹が、貫通した。耳鳴りがする。また血反吐だ。もう慣れたよ。

 オーバーキルかのように心臓に上空に舞っていた刀が刺さる。

 目の前が真っ白で何も見えない。これ、死ぬ。分かる。直感って奴だ……


《体の損傷率が15%を超えました。自動的にスキル 精霊の加護が発動します。また、このスキルは一度使用すると消滅します》


 精霊の……加護? 確か……そんなスキル……あった……な……

 ヤバイ、もう息が苦しい。アイツが手を抜いたら死んでしまう。やだ、死にたくない。


 そんなフラグの様な事を思っているとアイツが手を抜く。


「1825階層まで来たとはいえ所詮はこの程度か……期待して損だったな」


 もう、駄目だ、出血が止まらない。自分では考えられない量が出ているだろう。ドロドロと、鉄臭いバラの花が、今咲き誇っている。俺の死に様には格好良すぎるな……精霊の加護とやらを発動してもこの傷は癒えないだろう。

 だが、そんな考えとは裏腹に痛みはどんどん引いて傷が塞がり、出血も止まって勝手に治っていく。


 これが……精霊の加護の力……


《いえ、厳密には一時的にスキル 超速再生が付与されている状態です。根本的には精霊の加護のお陰ですが》


 どっちでも良い。今は傷が治ればそれで。

 もう傷は完治して痛みは完全に消えていた。


 次アレを食らったら死ぬ覚悟をしよう。


「俺は、お前の退屈凌ぎにはなれるみたいだな」


 そう言って立ち上がるとアイツは振り返ってこう言う


「な、何故だ! 何故生きている!? ニャーはちゃんと息の根を止めた。心臓に刀も刺した筈……まさか!?」

「そのまさかだ。俺は超速再生で治した、そう言う事だ」


「ちょ、超速再生だと!? それは超上位魔法に分類される魔法だぞ!? お前ごときに扱える訳が……」


 納得出来無いのも無理はない。なんたって俺もよく理解していないからな……


「……まぁ良い。ならばもう一度同じ事をするのみ!ニャーが去るまで待てば助かった物をドブに捨てた事、後で後悔するが良い!!!」

「もうアイツに騙されたりはしない!!!」


 俺はアイツに向かって突っ走る。


「何度でも相手してやる!!!」

「未来視!」


 最初からコレを使えば良かったって? 俺はただ千載一遇の大チャンスを狙いたかっただけだ。さて、次の攻撃は……


「下だ!」


 俺はフルパワーで刀を抑えつける。……チャンス到来!!!


「破滅の魔眼!」


 俺がそう叫ぶと今度はアイツの腹が貫通した。すると、アイツが刀を手放して仰向けで地面に倒れ込む。

 刀は地面に刺さり、アイツからは出血……していない。妖魔だからだろう。理屈は良く分からない。


「未来視と言い破滅の魔眼と言い……本当に超上位魔法の使い手とは、してやられたのだ……」


 え? 超上位魔法? 何を言っているんだ? ただのスライムを倒して手に入れた魔法だと思うんだけどな……


「本当の所は俺が負けていたが、勝ちは勝ち、安らかに眠ってくれ」


 そう言うとアイツが変な事を言った。


「む?何を言っているのだ? ニャーがこの程度で死ぬとでも思っているのだ?」

「いやいや、アイツが本当の妖魔だったとしてもいくらなんでも腹が貫通すれば誰でも死ぬだろ普通」


「普通じゃないから死なないのだ。ニャーは神聖魔法か魂を破壊されるかでしか死なないのだ」


 神聖魔法……何か宗教的だな。


「え、じゃあまだ闘いは終わって……」


 俺が喋っている途中でアイツが口を挟む。


「今回はニャーが不意打ちで負けた。だから光喜の勝ちなのだ。先へ進めなのだ」

「良いのか? それで。ボスとしての責任とかは無いのか?」


「勿論あるに決まっているのだ。だが、今回はただの暇潰しにしか過ぎ無いのだ。本気を出せばお前なんて瞬殺なのだ」


 瞬殺だったんだ……ま、俺は所詮闘いの初心者だからな……


「何だ? 悔しいのだ?」

「あ、いや、そう言う訳じゃ……」


 そういやアイツは心が読めるんだった……


「悔しいのだな。良し分かったのだ!」

「え? 何が?」


「ニャーがお前を鍛えてやるのだ!」


 こうして、呆気なく闘いは収束し、俺はアイツの弟子になるのだった……

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