1.それでも生きる
今これを読んでいる君へ。
UFOという物を知っているだろうか。誰しも一度は聞いたことのある未確認物体。形は言わずもがなだ。
良くテレビでUFOが映った映像を世界中から集めて放送しているが、君は信じるだろうか?
俺は信じてなかったからそんなのには絶対に遭わないと思っていた。でも、違った。
それは突然起こった不幸だった。
「さて、あー、喉乾いたからジュースでも買いに行くか……」
俺は木製の開ける毎にギィギィうるさいドアを開けて外に出た。……誰もいない。人の会話や車通りの音でさえ遠くから微かに聞こえる程度だ。この静けさは今は午後11時とかだろう。
夜の住宅街の外れは街灯だけが頼りだ。俺のスマホの充電は切らしているし、懐中電灯も持っていない。文字通り暗中模索と言った感じだ。
使い方が合ってるかはどうでもいい。人と喋る事なんてもうないから独り言で済ませてしまっても誰も俺を咎めたりしないんだ。
秋も終わって冬に入ったから少し薄手の長袖では肌寒い。早くジュースを買って家に帰らねば。
青白い蛍光灯のライトを躊躇なく俺に浴びせるその自販機の前に俺は立つ。
「さて、何を買おうか」
財布を取り出し、自販機のボタンを人差し指で上からスライドさせる。うーん、温かい飲み物が欲しい。それならジュースじゃなくてもいいか。健康の為にお茶にしよう。うん。
自販機にお金を入れ、「あったか〜い」の方の緑茶に手を掛けた。その時、俺の上空を何かが通り、「フォン」という謎の音が聞こえた。
「ん? 何だ何だ? 新種の鳥でも出たのか?」
フォンだなんて日常的に使う訳が無い音を聞いた。俺は我慢が出来ずに音がした方を見上げる。
そして、俺の視線の先にはとんでもない物が確かに存在していた。
「……UFO?」
そう、正にそのUFOだったのだ。一応目を擦るがソレが消える事はない。
「ま、マジ? マジなの? 本物……だよな?」
思わず手に握っていた財布を落としてしまう。慌てて拾い上げると、まだ留まっていたままだった。こういう場合は目を離した隙にいなくなるパターンだと思ったんだが……
そしてUFOは聞いたこともないエンジン音を鳴らしている。現代技術では到底再現出来そうにない反重力装置って奴だろう。
そして入り口らしきところから一筋の光が……?
「おいおい、俺にそんなモンを浴びせて何をする!? あれ、足が地面に着かない。か、体が浮いている!? それに、何だか眠くなって、きた……」
◇◇◇◇
「糸15糸#糸15気#利15肉#遠ㇽ気8ヵ遠ㇽ!」
目を覚ます。状況が分からない。さっき俺は何をされて……? いや、確かUFOに連れ去られたんだよな。
アレは牛の特権じゃないのか?
「ん? 何だここ? そしてお前らは……!?」
「糸15チ地15知3見?肉?糸#」
「これで楽に話せるだろう。言葉と文字を分かるようにした」
今俺はとんでもない物に遭遇している。
俺は震えながらどうにか声を絞り出す。
「お、お前等……人間の見た目してないぞ!?」
霧谷光喜について
霧谷光喜は高校三年生の引きこもり。家族から人権なし呼ばわりされ本人も理解している。
ヘル第一高等学校には普通に通っていたが突然不登校になる。
父、霧谷光三は四年前に他界。
好きな食べ物は激辛カレー。嫌いなものはプリン。
得意なことは空手と剣道。(現在はしていない)