0−6.スキル=偉大
何か忘れてんだよな……えーと、えーっと……
ああ、思い出した。
金がねぇ。そうだ金が無いんだった。どうしよう。お金を払わずご馳走様でしたなんて言えないし反ってお金が無いって言ったら犯罪者扱いされるよな……
そんな事を思っているとまたもや結衣が口を開いた。
「あっ! そう言えば私達お金持って無いんだった! どうしよう!?」
店員さんがその質問待ってましたと言わんばかりにニッコリと笑っている。
「大丈夫。そんな事だろうと思って考えを用意しているから」
「考え?」
「そう! 簡単にお金を稼ぐ方法があるんだよ!」
何か怪しいビジネスみたいなの始まったけど大丈夫か?
「それは……?」
「ギルドで薬草採取のクエストを受ける事!」
「……はい?」
二人で阿保みたいな顔をしていると店員さんが答えた。実際この星では常識の無いアホなのかも知れない。
「アハハ、まぁ地球に無い物だからそう言うリアクションになるのも解るよ。じゃあ、まずはギルドについて話すね」
「はい!」
「ギルドって言うのは、今居る場所から400メートル位東に離れた広場の正面にある冒険者が集まる場所の事で、そこでは戦利品等の買い取りや、クエストの発注、飲食が出来るようになっているよ」
「それでそれで?」
これはちゃんと聞かなきゃ損だ。集中集中!
「それで、メインの薬草採取についてなんだけど、クエストにはランクがあってね、ランクはFから順にE、D、C、B、A、S、S+と難易度が上がっているんだ。クエストを受けるためにはそれ相応の実力が必要で、ランク毎に試験があるんだけど、薬草採取のクエストはFだからきっと試験にはクリアできると思うよ。あっ、それと代金は今回は特別に無しにしてあげるよ。でも、生活するためにはお金は必須だから、クエストは受けた方が良いと僕は思うよ」
な、なるほど……?
まぁ、取り敢えず東に400メートル行って試験受けて薬草採取して金稼げ、という事か。
しかも店員さんお代無しにしてくれるとか神かよ! あぁ~感謝感謝。
「じゃあ、結衣、行こうか。ギルドとやらへ!」
「お金を稼ぐためだったら私何でもやってやる! うぉぉぉ!」
結衣……お金が全てでは無いんだぞ。
◇◇◇◇
「今回は色々と有難うございました」
「いえいえ、こちらこそ久しぶりに地球人と会えて嬉しかったです」
「久しぶりに?」
久しぶり、という事は前に地球人と話した事がある、という事だよな。前にもこの店に地球人が来たのか?
「そうだね。久しぶりに話をしたよ。あれは4ヶ月前かな、そう、僕は4ヶ月前にはもうここにいたんだよ。何でこんな話し方なのか?それはね、僕は元々日本に住んでいたから、なんだよ」
そう店員は言ってポケットからスイッチを取り出し、押した。その瞬間、そこに現れたのはいつも見慣れたあの……
「地球人!?」
「ごめんね。驚かせたかな、改めて言うけど僕は地球人なんだ」
「えぇ!?」「嘘だろ!?」
〜霧谷結衣について〜
ヘル第一高等学校に通う高校二年生。人見知りであるが転移でそんな事は忘れ去っている。
困ったら兄の貴也にいつも助けてもらう。
背がひk……
◇◇◇◇
うわぁ、全っ然分からなかった。今日は驚く事ばかりだ。
政府に裏があったり魔法があったりこの星の人に変装してる地球人が居たり……
変装ゆーてもでもあそこまで完璧な変装無いよなぁ……
もしかしてこれは話にあった魔法を創る力……? それは一理あるな、良し、訊いてみよう。
「じゃあこれは魔法で変装してるってこと!?」
「お、勘付きが良いね! そう、僕は変装の魔法を創ってこの星の人に成りすましているんだ」
「魔法凄い……!」
「まぁ、簡単な魔法なんだけどね」
それじゃ、ホントにそろそろ行くか。
「結衣、そろそろギルドに行こうか!」
「うん!」
「行ってらっしゃい。あ、それと『視線』には十分注意した方が良いよ……」
視線? 何の事だか分からないが取り敢えず気を付けておくか。
「うん、そうしとくよ」
「私も気を付ける」
「試験、頑張ってね!」
◇◇◇◇
さて、こうして店を出たがやはり俺等は目立つみたいだ。所々から話し声が聞こえてくる。視線ってこれの事か。
こんな居心地の悪い空気は嫌いだ。早く歩かなければ。
「結衣、少し急ごう。結衣も感じているだろう?」
「うん、分かる。私もそう思ってたから」
二人共早歩きになる。
やっぱり早歩きなだけあって400メートルなんてあっという間だな。
「着いたな」
「うん」
見た所俺等が想像している『ギルド』と完全にマッチしたイメージ通りの見た目だ。だが唯一の難点としたら字と言葉が分からないという事だ。
これも魔法の力で何とかならないのかな。もし何とかなるとしたら魔法様々だな。成功するかな、いや、成功させる!
「結衣、今から俺はこの先を生きていく上で限りなく一番大切だと思われる『言語』を習得する魔法を創ろうと考えている」
「『言語』!?そんな物まで魔法で習得出来る物なの!? うん、でもちょっと期待するかも。分からないままじゃ何も進展しないもんね!」
「ああ、試してみる価値はある筈だ」
ベンチに座って取り敢えず手と手を出してみる
「周りの目が気になるが仕方が無いな。手早く済ませよう」
「そうだけど……どうやるの?」
「そうなんだよな〜。う~ん、何か名前付けてそれを念じればどうにかなってくれるんじゃない?」
かなり当てずっぽうだがやるしかないだろう。今はそれだけだ。
「ま、まぁ、今はそれしか方法が思いつかないしやってみよっか!」
「で、その名前だが……単純に言語理解とかで良いよな?」
特に凝る必要も無いしな。
「うん。それで良いと思う」
「じゃあ、行くぞ……」
「うん」
えっと、こういうのって大体魔法陣展開して……お、出てきた。何だ? 選択肢が分かれているな。
魔法構築? 多分、これで合ってるよな。
それで、言語理解の構築? はどうやって……
《ヒント 言語理解はスキルに分類されます》
ん? スキル? 確かスキル構築なんて物も選択肢にあったな。そっちだとしたら……
一旦戻ってスキル構築を選択、そんでもって言語理解はどこに表示されてんだ……?
かなり下にスクロールするとやっと出て来た。検索ボックスもあったし、それで検索掛ければ良かったのか?
お、これか。構築開始っと!
その瞬間、能、いや全身に痺れのような感覚が走った。
「うっ!!!」
「お兄ちゃん!?」
結衣が心配してくれているようだが、すぐにその症状は消え去り、元の状態に戻った。これがスキルを創る条件なのか?
「あれ? なんともねぇ……」
「大丈夫?」
「うん、まぁ……」
顔をそっと上げたとき俺は一瞬驚いた。街の看板の文字がハッキリと理解出来る。意味も、全て。
《新たにをスキル言語理解を獲得しました》
所持スキル
勇者
装備強化 剣豪 Ⅳ
鑑定
属性魔法強化 Ⅳ
攻撃力強化 Ⅳ
防御力強化 Ⅳ
《所持スキルに獲得スキルを追加します》
ん? ああ、良くあるアナウンス、と言う奴か。いや、そんな事より!!!
「すげぇ。分かる、分かるよ! 結衣もやってみなよ! 世界変わるから!」
結衣はさっきの俺の反応を見ていたため渋々承諾する様な感じだった。
「大丈夫大丈夫、直に痺れは治まるから、ね?」
「は、はい……」
スキル作製直後……
「う、う~ん」
数秒後
「あれ? なんとも無い」
《新たにスキル言語理解を獲得しました》
所持スキル
聖女
属性魔法強化 Ⅳ
攻撃力強化 Ⅳ
防御力強化 Ⅳ
《所持スキルに獲得スキルを追加します》
アナウンス? 異世界アニメで確かこんなのあったっけ。まぁいいや。
「な? 言ったろ? 何ともないって」
「うん。疑ってごめん。それにしても凄い! 全部意味が分かる!」
ギルドらしき建物の入口の上に書いてある『気#ヵ利3地15ヵ』というのもしっかり『ギルド』という意味に訳せる。
素晴らしい! 『スキル=偉大』だ!
〜魔法、スキル作製について〜
脳に直接作用する魔法やスキルを創る時は多少の痺れが発生する。
また、スキル作製にはコストを使用しない。