0−5.地球の奴隷と星の奴隷
小鳥の囀りで目が覚める。
「う、う〜ん。あぁ、この体勢で良く寝たもんだな」
結衣はまだ寝ているようだ。寝顔は可愛いものだな。
いや、別に俺は変態じゃ無いからな……ホントだからな!?
そんな事を考えていると結衣が起きた。
「ん〜、あー良く寝た!」
「そうか。良し! じゃあ何か食べに行くか!」
「レッツゴー!」
とは言った物の、字が読めねぇ! どうした物か……?
何か規則性みたいな物は無いのか! 屋台があれば解決するのだが……無い。
取り敢えず店に入らないことには何も始まらない。
そう思って周りをキョロキョロすると良さそうな店が目に入った。
そういやここの人は随分地球の人とは違った見た目だな。やっぱりここ地球じゃないんだな。
「良し、結衣。この店に入るぞ」
俺は店内を見る限りカフェ屋らしき店を指差して言う。
「大丈夫……だよね?」
「うん。きっと何とか……なるさ……」
チリンチリン〜、と鈴が鳴る。何かこの音を聞くと地球に帰って来たようで少し安心するな。
「|糸#利?地3チ知#由!チ《いらっしゃ》………」
やっぱり。異世界ってもっとこう……いろんな髪の人間がいて……
ま、まぁこんな異世界も……ある……よな……
そんでもってシアッニッワシ……ってなんやねん!!! 意味が分からねぇよ……もう駄目だ……無理だ……
「もしかして、地球人の方!?」
いや日本語喋れるんかーい。いや待て待て。
言語とかそういうのが違うし見たこともないよな……異世界か他の星である事は解ったけど何で日本語知ってるん?
ここの人が地球人連れ去ってるなら当然っちゃ当然か……
「ちょ、ちょっと一旦外に!!!」
「え?」「え!?」
店員が何やら慌ただしく俺等を押し出す。
「急に何を!?」
「ま、まずはこっちに入って……その……後食事を済ませたら、えーと、すぐにこのまま帰って欲しいんだよね……」
え? 何で? 意味わからんて。
帰って欲しい? 何言ってんの? 頭の中が『?』でいっぱいだ。
兎に角理由だ、理由。それを訊かないと話にならない。
何故か裏口から秘密の部屋的なのに案内され、店員もそこへ相席した。
「話の続きをしますか」
「それで、すぐ帰らなければならないのは何故ですか?」
「余り他の人の耳に入るとアレだから小声で話させてもらいましょう。この壁、厚くはないのでね」
壁をコンコン、と叩きながら言う。
「は、はい」
「謎の緊張感……!」
「時は地球で言う2000年、つまり22年前の話。それはある日突然やってきたんだよ。君達も知っているだろう?」
「?」「?」
「君達、まさかあの事について知らないのかい?」
「そうですけど……あの事とは一体?」
「そうか、国民には知らされていないのか……良し。ならばまずは政府の正体から話そうか」
「政府の正体?」
「そうさ。君達は政府という物は君達が住む日本や世界を動かしている組織である、みたいな風に教えられたと思うが実は違うんだ。アイツ等は正義のお面を被った悪の組織さ」
なんと! 新事実発覚だ! これは続きが気になる!
「それで、その政府は多分極秘で宇宙船の開発を行ったんだろうね」
「それが2000年に起こった何かに関係が?」
政府がやった事なんだ。相当な計画に違いない。
「正にその通り。政府は宇宙船を完成させ、わざと公表にせずどうやって辿り着いたかは知らないけどこの星へやって来たんだ」
「その後、どうなったんですか!?」
俺は話を聞きたい一心で少し興奮気味になってしまった。
「はいはい、ストップストップ! 気持ちは分からないでもないが落ち着こう、ね?」
「は、はい……」
「それで、その宇宙船が着陸するなり、沢山の地球人が出てきたんだ。そして、口々にこう叫んだんだ。『神石を寄越せ』と。いやー完全に参ったね。他の星とかは神石を取り尽くして殆ど残ってないから沢山神石があるこの星、アインザムカイトを狙った感じかな」
酷ぇ……政府ってこんなのだったのかよ……ちょっとショック。そういや神石って何だ?
と、思っていると結衣が先に質問した。
「神石って?」
「神石の事も知らないのかい。こりゃあ長い話になりそうだね。良いよ、今から説明するね」
◇◇◇◇
とまぁ、こんな感じで色々話してくれた訳だが、簡単に纏めるとこうだ。
一、政府はこの俺等がいるらしい星、アインザムカイトへ神石を奪いに来て、争ってしまったという事。
二、そんなもんだから住民からの地球人への態度は終わっているという事。
三、それでも地球人の力無しでは神石を採掘出来る訳じゃ無いから交換条件で密かに人身売買とかをしているということ。
四、神石は魔法とか色々撃てたり創ったり出来るらしい。
アハハ、頭パンクするて。
あれ? 俺昨日神石って奴を使わなくても魔法撃てたよな? ……まあいいか!
そう言えばこの店員さんは何でこんな事を知っているんだろう? 本とかで読んだのかな?
まぁいいや。良し、この上手いタルトみたいなのも食べ終わったし帰るとするか。
ん? あれ? 何か忘れてる気がするんだよなぁあ……
〜霧谷貴也について〜
何の変哲も無い会社に通うサラリーマン。
最近給料が低くて苛ついていたが転移によってそんなことは頭から吹っ飛んでいる。
光喜の事が憎くて仕方が無いらしいが真相は……