第90話
更新遅くなってすみません。
今回から数話、テンクウちゃんの1人語りなのが続きます。
モナちゃんにこの話をする前に、ボクがボクのことを話したいと思えるようになっていることがとても不思議だった。
たぶん数日前に聞かれていたら何も言わなかったと思う。モナちゃんと過ごしていると心が休まるんだ。本当の本当の本当に不思議。
今言いたいと思っていると気づいて提案してきたんだろうか?モナちゃんもボク達みたいになにか特別な魔法が使えるのかも知れない。
でももしそれが魔法だったとしても悔しかったり騙された!っていう気分にはならない。だってモナちゃんは言いたくなければ言わなくていいと言ってくれる。
だから語るんだ。あえて聞かせたいんだ。
頭の奥がチリチリと鳴っている気がする。これを終えたらボク達の関係が変わる気がしても、でも、話したいんだ。もしこの話を終えた後にモナちゃんとの関係が悪い方向にいってしまっても、ボクはこの話のせいにはしたくない。
周りはとても明るく夏の日差しがボクには少し強く感じる。けれど、静かに聞こうとしてくれるモナちゃんとそよぐ風に心が沸きそうだ。
あのね。
ボクは気付いたらボクだった。
その時はそれが普通で。それしかなくて。気持ちよくて。悲しくて。嬉しくて。どうにかなりそうで。
ボクがボクだと気づいたのは風のように草原を駆けていたときだった。
風だったのかもしれない。元々走るのが好きな犬だったのかもしれない。どっちでもいい。だってどちらにしろ、ボクは風になってる。
風になるのは好きだ。だから走るのか。わからない。
走るのが好きだ。だから風になりたいのか。違う気がする。
ある時、ボクがいた場所に集落が出来たんだ。後から知ったけどその人達は同じ人間から逃げて、ボクがいた場所に来たらしい。風が強く吹くから住むには大変だから、追いかけてくる人間はなかなか来ようとしないんだって。
なぜ知ったかって?そこの集落の人間がボクに勝手に話しかけてきたんだ。
ボクは食べ物を食べなくても死ななかったから荒れ地で走りつづけても問題などなかった。そこには草は生えていた。でも集落辺りから離れると草も生えない場所が多かったよ。集落を作った人間達は日に日に痩せ細っていった。気になって走るのを止めてどうしてわざわざ痩せているのか見に行ったんだ。
近づいた時には動けない人間が多かったけど、モナちゃんみたいに小さい人間は元気なのが多かったよ。だからその小さい人間が喋るのをずっと聞くことにしたんだ。だって勝手にボクに喋りつづけるんだよ。
小さい人間は“子供”っていうモノだって言うのをそこで知った。だってボクは子供だった記憶がない。ボクも子供だったことがあったんだろうか?
“子供”は言った。
『たべものが育たない。ここはカミサマからみはなされた土地なんだって。でもわたしたちにはココしかない。』
近くにいた人間はその子達の“親”で“大人”で。子供だけでも生き残って欲しいとなけなしの食べ物を子供達だけに与えていたからみんな、そこにいる人間は痩せ細っていったんだって。
大人も子供も苦しそうだったけどね、どちらもキラキラして見えた。ボクはそれが羨ましくなった。とっても素敵に見えたんだ。
だってね、そんなことボクは生まれてから考えたこともなかった。なぜってココにはボクはボクしか居なかったから。
それを“助け合い”って呼んでた。だからね、ボクも“助け合い”をしたら同じになれるかなって思ったんだ。今思えば、なれるはずないってわかるのにね。
ボクは走るのが得意だった。まるで風になるように。まるで消えてしまうように。だけどボクはその近くで走りつづけるのを止めた。
そしてね、ボクは人間達に人間達が食べれそうなものをあげることが“助け合い”だと勘違いしていたから、“助け合い”をたくさんする事にしたんだ。
何が食べれるものなのか全くわからなかったからとにかく色々運んだよ。いらないものもかなりあったみたいだけど、そういうのは“家”とかになっていった。
“助け合い”をたくさんしたらね、細っていった人間は徐々に少なくなったよ。
そうしたらね、最初に話しかけてきた子供達がボクの事を“カミサマ”って言い始めたんだ。それだけは違うってわかる。違うのにね、ボクの事を子供達が言い始めたら、他の人間みんなが言うようになっちゃったんだ。
最初は良かったけど、話を聞くのも疲れちゃったから
ボクはそこから逃げたんだ。だってね、もうボクの欲しいキラキラした人間はいなかったんだ。だってもう“助け合い”する人間は少なくて、つまらなかったんだもの。それに“カミサマ”って言うようになってから走らせてくれなかったんだ。
ボクはまた走り出した。集落は小さい村になっていたらしいんだけど走り出したらあっという間に忘れたよ。
次に行った所はね“町”だった。少し大きかったけどボクはその近くの森に入ったんだ。そこにはボクなんか敵わないくらい沢山のモンスターが住んでいる森だったんだ。
でもボクはボクだけだった。少し似たのはいたけど話も合わないし、つまらなかった。
少しだけ仲良くなったやつはボクとは全然違うモンスターだったけど、とってもお喋りなやつでね、勝手に色々喋ってくれたから、ボクもモンスターの1つの生命だっていうことをそこで知ったんだ。
モンスター達は本当はもっと大きい森に住んでたんだって。でもね、今人間達が住んでた場所が、森だった。人間がどんどん木を切り倒すから森が減って、モンスターは共食いを繰り返し、一部の奴らは今まで生まれたことがない恐ろしいモンスターに進化してしまったらしい。
進化ってスゴいよね。とってもとってもとってもとっても強くなるんだよ。
でもね、“共食い”の進化はダメなんだ。人間が言う、“禁忌”っていうやつと同じだよ。
頭がイカれちゃうんだ。どんなに強くなっても頭がイカれるのは見ていて気持ちいいものじゃなかったよ。
ボクがもし足を1本無くしてたら、“共食い”をしたかもしれない。だって3本じゃ、もう、風のように走れない気がするもの。
だからね、モナちゃんありがとう。助けてくれて嬉しかった。
あ、でね、そこの森でね、生まれちゃったんだ。ヤバイやつ。人間はその時は災害級だとか言ってた気がする。今もそう呼ばれているかはわからない。だってこの話は昔の話だから。
“キングオーガ”
その森の近くの町が一晩で壊滅したんだ。
明日更新予定。ちょっと多忙なので時間or日付ズレたら申し訳ない。
テンクウちゃんの語りなん話あるかなぁ(え?)