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第85話

「夏期・・・ナツ・・・な、つ!?うぇえ!?!?」


モナは現在“夏”だと言う事に驚いていた。


ナツナツナツナツここーなーつ。あーいアイあい愛アイランド~。(現実逃避)


はっ・・・。動け脳!動け私。現実逃避してる場合じゃ・・・・


だだだだだってだよ!?私が他店舗に移動ってんで引っ越したのって春頃・・・。あれから少なくとも3ヶ月は経ってるの!?あ!それとも異世界だから四季もずれてるのか!あっはっは!ならそれは仕方ないかー!


あ~真夏の~ジャンボリーレゲエ~砂浜~ビッグゥェーブ!あ~悪ノリ~の~ハートビート~ めっちゃゴリゴリウェルカムウィーキッ~(タオルブンブンタオルブンブン・・・)


・・・・じゃなくて!!(現実逃避パートツー)


異世界とのズレはもうこの際どうだって良い。そうじゃなくって!


「えっあの、聞いて良いですか?プントさん。」


おずおずと挙手した。モナの急な態度の変化に周りはキョトンとした。


「はい。どうぞ?」


「えっあの、この場所。というか、土地?っていうのかな。えっあの・・・・夏なのにあまり暑くないですよね、ココ。標高とかそこそこ高かったり、します?」


「ヒョウコウ?ああ、土地の高さですか。王都よりはかなり高い位置にはあると思いますよ。このロッテリーの街周辺は昔から夏場の療養地として親しまれている土地です。」


つまり、避暑地。あー、そうかそうか。ここは日本で言うところのあれか。軽井沢的な避暑地か。ソッカソッカ。


・・・・・悲報です皆さん。つまり、夏の水辺でキャッキャウフフが無いと言うことです。ってことだよね!?海無し!あーはん!?


あぁ~今年も夏がきた~(きたぜきたよ来たぜきたよ)おっきい波ちっちゃい波ちゅっくらいのやちっこいの、み~なみかぜにのり、おっきいお尻ちっちゃいお尻ちゅっくらいのやちっちゃいの、波間でプルプル、波間でぷりぷり~♪


っていうこち亀のエンディングで流れたあの曲のような出来事は垣間見えない予定となりました。


「ぬぅううううううううんん」


「わふっわふっ??」


「きゅーん?」


「うにゃあぁご?」


モナが1人モンモンとしていた、その周りでアンドレ達がどう反応すれば良いのか決めあぐねていた。


「なあ、リネア。なんかモナの様子が変だ」


「これはきっと!」


「な、なんだ!?」


「夏期療養のお別れが今からサミシイのですわ。その話題が出てからこうなのですから間違いありません」


「な、なるほどぉ!」


「坊っちゃま。モナさんはその後も質問なさって唸っていました。別れがツライ以外にもなにかあるハズです」


「そうだよアンドレ。短慮は王族としてただの欠点になりかねない。熟考のし過ぎも良くないけれど、発言は考えてすることを学ばねば。」


「はい。お兄様!」


「ハッ・・・もしや」


「チェルキョ、なにかわかったのかい?」


「冬場はこの土地めっちゃんこ寒いのを今から危惧しているんでは!?」


「それは早計では?」


「モナの事だからあり得る」


「あり得るのか」


「そうなのか!?」


「まだ5歳でしたよね。なんて頭の回転の早いお子だろう」


なぜかウンウン唸っているだけでモナの株が勝手に上がっていく珍事が起こっていたのだが、モナの知るよしもなかった。モナは約ひとつ分の季節が過ぎ去ったことがただただ悲しかっただけである。


大人になれば忙しくて季節が過ぎるのが年々早く感じるものだが、モナはこの異世界に来て、5歳になってある意味二度目の青春を謳歌していた最中(さなか)とも言えた。


ともだち食堂のアルバイトも結局のところお手伝いの延長で、しかも5歳の体が出来ることなど限られていたから大したことはできない。結局のところモナはお手伝いしつつ結構ぷらぷらとお喋りしたりのんびりまったりしていたのだ。


でも。だからこそ。の、3ヶ月分である。もったいない。それにつきる。過ぎ去ったその期間でもっとのんびりまったり出来たではないか。と。


「くぅん??」


テンクウとコエキとセイリューがモナを心配してモナの足元に集まった。


「一週間過ぎたぐらいだと思っていたけど、あっちとこっちと時間軸が違うパターンでありますように・・

ああっでも浦島太郎みたいにあっちが100年経ってるのは嫌だぁぁぁ」


「あんれ。皆さん玄関集まっで、何しとるべ」


「ミギィさん、レフティさん。ってもうそんな時間!?」


ともだち食堂の営業時間がいつの間にか終了していた。


「モナ」


「うぇい!?」


「俺とお兄様の館に遊びにこい。」


「そうですね、クッキーを焼いてお待ちしておりますわ。」


「私からもお願いするよ。もう少しモナちゃんと話がしてみたい」


アンドレ、リネアさん、ディオさんの3人にラブコールを送られた。おおお。ハズイ。恥ずい。


「おんやまぁ。こらぁ行かねばなぁ」


レフティさんがニヤニヤしてる。春がなぜだか過ぎ去って夏だったことにビックリして浦島太郎に頭を悩ませたけど、私の周りの空気は夏よりも春よりもぽかぽかした空気が流れている感じがした。


そう。今更だ。一週間でも3ヶ月でもあの日本での“帝麻萌那”が1日でも消えたのならもう同じことだ。過ぎたことは諦めよう。時間は普通、戻ることはない。


「アンドレ、ディオさん、皆さん。今日は来てくれてありがとう。近いうちに遊びに行きたいです!」


「わふっわふっわふっわふっ!!」


「きゅんきゅーん!!」


「うにゃあぁご?」


「ニャアァァォ」


気付いたらまたビャッコくんが増えとる。神出鬼没ビャッコくん。


「ボク達も行きたい!と声をあらげとる」


カラカラカラとレフティさんが笑った。


「アンドレ?みんなもいい?」


「お兄様、良いですか!?」


「もちろんだとも!」


3日後に約束をし、アンドレとディオさん達は馬車に乗って帰っていった。


「ほら、家に入り。」


「何して遊んだん?王子様達と部屋で遊ぶって聞いた時はおったまげたけんど、使用人も王族も関係なく遊んだんだべ?」


「えっとねー」


今日やったことを話ながら、ミギィさんとレフティさんが私の手をとってくれる。2人の手は仕事人の手をしてて少し荒れているけど、年を取った女性の手でなんだかあったかくてフワフワしてて手を繋いでいるだけなのに全部を包み込んでくれてる様な、おっきな手だ。


つい笑顔がこぼれる。


「今って夏だったんだね。少しだけ暑い春だと思ってた」


モナがいう“ちょっと暑い春”とは“少し肌焼ける程度に暑い”のが日常だった。しかしそれは温暖化が進んだ現代日本での日常だったことに気付いていない。異世界は“異”世界なのだ。


そしてその何気ない一言でミギィとレフティは顔を見合わせた。


「「モナちゃ――・・」」


声をかけようとした、その時。モナの頭上から奇妙な音が鳴った。キャリキャリキャリキャリキャリキャリ・・・・・・・!!


「なになになになに!?この三輪車急いでこいだような音!?」


音が近かったので3人とも高い音が耐えられず耳を塞ぐ。


音が小さくなるとともにモナの頭上に大人の手のひらサイズのオーロラの玉のようなものが浮かび上がった。それを見てレフティは目を丸くさせ驚き声を上げた。


「空間魔法だべ!!」


そのオーロラの玉から、『にゅぎっにゅぎっ』っと変わった音を立て『ポンッ』とフワフワした白い物体がトコロテンを押し出した様にこちらに出てきた。


オーロラのような玉は『ポンッ』の音と同時に消え去り、モナの頭上にはその白いフワフワしたものだけが浮いていた。


「えーと。」


一番困っているのはモナだった。

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