第75話
顔の目の前にズドーン。私の体が思うように動かないのを良いことに、私の顔の目の前に瓶が1つ置かれていた。
「あの。」
「それもらっておくれのぉ」
「これって高級ポーションですよね」
目の前過ぎて逆に視界が悪すぎるんですけど!?透明なキラキラが入ってるからわかるけど、こんなに近いんじゃ瓶以外全く見えないんですけど!?吐く息も瓶にかかるしかない。近い近すぎる。お婆さん、なんでここに置いた!?頭を横向きから天井への向きへ直そうとしたら顔に瓶がグラリ。
「へぶっ」
痛い・・・・。
「デボラさん・・・」
「ああ、こりゃこりゃ。よかれと思って近くに置いたら倒れたの」
「もにゃ、イタイイタイ、とんでけ~!」
トウシャくんのエア・いたいのいたいの飛んでいけ!に癒された。可愛い声。是非とも痛めた鼻の頭に触った上でやってほしい。ジンジン痛いので。
ヨコシャルさんは上司に頭の上がらない平社員みたいな立ち位置でワタワタしてそうな声をあげていた。瓶がベッドに横倒しになったおかげで視界が良好に戻った。あっやっぱり高級ポーション。しかも、丸々1本分だ。
ユーグリッドさんにもらったのは4分の1に分けてもらった小瓶サイズだったが、目の前のは分ける前のやつ。つまり・・・日本円にして1億円の薬である。
「もらう理由がありません。」
ユーグリッドさんがもし渡してきても同じことを言うだけだ。大体ユーグリッドさんへの2500万円の借金の返せる目処も立ってないのだ。自分でこれ以上首を絞める真似はしたくない。
そりゃ~もらえたら嬉しいかもだけど。この目の前のお婆さんにもらう理由がない。
「ユーグリッドがの、届けようとしてたから私が届けただけだ。アイツ手持ちがないってんでソレ買うって頼み込んで来たから、急ぎかっつーこと聞いたらの、助けてもらったお礼に渡したいんだと抜かしたからな、渡す相手見たいっつってユーグリッドには苦渋飲んでもらったのよぉ」
「・・・・えっ・・・えっ??」
「なーに呆けてんだ。騎士団達助けたのお前さんだっつー話だったが違うのかの?ポーション飲ませまくったんだろう?感謝してたけどまだ昨日の今日だからのう、元々ユーグリッドは今日はココには来るのは難しいからの。」
「ポーションを飲ませ・・・助け・・・。あの、スミコットさんから軽く話は聞いたんですけど、本当に皆さんお元気になったんですか?」
「疑うんか」
「あ、いえ。ポーションはキズとかしか治せないって今日聞いたばっかりで、症状とポーションが合致してなかったら意味がなかったなぁって反省してた所なんです」
「なるほどなぁ。んだがあのユーグリッドが言ってたんだ。騎士団はちゃあんと回復した。目利きがよかったか、運がよかったか、それとも・・・。ま、とにかく治ったのは確かだの。お前、手持ちの高級ポーションも飲ませまくって騎士団みぃんな助けて、野良ネコも、熊獣人も、なにもかも関係なくポーション飲ませて助けた。だからこれはお前への褒美だの。」
「褒美・・・」
「お前が女神に見えたっていうのもチラホラいてな、私はその場に居なかったし何とも言えないけども、この2人もおんなじ事言ってるんだのぉ。」
「みたの!もにゃがメガミ様になって助けてくれたの」
「俺は、見たような見てないような・・・多分見たかも程度なので。」
・・・・・・・大人な姿になったのを見られたのでは!?!?大人→中学生→5歳のモナに変化していたのを色んな人が見ていたかもしれないことに今更気づいたモナだった。
「褒美・兼・お供え物。だの。受け取らんとゴミ箱行きになるだけだから、とっとけとっとけ。」
「んえ~・・・」
「デボラさんは捨てるといったら捨てるぞ。百叩きだってするし、無茶な納品だって出来ると言ったらやるし、有言実行なんだ。デボラさんは。」
「ゆーげんじっこー?とうちゃ、ゆーげんじっこー?ってなぁに~?ゆーげん?ゆーげん!ゆーげん?」
「そこまで言うなら・・・受け取ります。」
かすかに動かせる手をプルプルさせながら高級ポーションに手を伸ばしてみる。少し回復したと思ってたけど、腕重いぃぃ~ふんんっっぬうううぅぅ!!
「ああ、はいはい」
この中では一番身長のあるヨコシャルさんがパッと取って私の手に持たせてくれた。ん。高級ポーションも重かった!!!!
「大事に、使います。」
みんなのありがとうが詰まっていると思えばこの重みにも耐えられる。
「長いこと時間使わして悪かったな。ゆっくり休むといいのぉ。あと、また何か薬で困ったことあったら誰かに伝言頼むなり、中央公園の避難場所にいるからの。私が力にやつ。なってやるからのぉ。」
「えっ!デボラさん!?モナさん!凄い!」
「もにゃ!スゴい!」
なんだなんだと思いつつ返事するしかなくなくない?
「あ、りがとうございます。何かあれば頼ります。・・・???」
デボラお婆さんとヨコシャルさんとトウシャくんは帰っていった。残ったのは大人しくしてくれていた、猫6匹とセイリューちゃんとテンクウちゃんだ。
「女神とかウケるーーーー!ぶっはーーー!」
「ビャッコったらーーーー!!」
テンクウちゃん達、急に賑やかになったなぁ。女神って聞いて思い出すのはNYの自由の女神。モナWith自由の女神。緑になった自分を想像していた。
「あの娘気に入った」
「おおおおお、珍しいな、ですね。」
「お前達も気に入ってるんだろう?ヨコシャルなんかずっといつもの口調と違ったしのぉ。か!か!か!か!」
デボラお婆さんはカスタネットの音のようなよく響く笑い声を上げた。
「さすがにあの時ポーションを飲まされてなかったら今日も意識不明状態だったと思うんだ。デボラさん、あの娘は命の恩人だ。避難してなければ、家に招待してもてなしたいぐらいなんだ。」
「昔から、熊は恩義を巣穴で語るっちゅーものなぁ。か!か!か!か!ああ、いやいや、だからこそ、あれをみんなの総意としてあげたんだ。のお!」
「もにゃ、喜んでたね!よかったね!」
「落ち着いたらまた家に呼んだらいいんじゃないのかの?」
「そうだな!はい!そうですね!」
デボラよりもモナに敬意を払い過ぎているのが見て取れたがデボラお婆さんはヨコシャルに追及はしなかった。動物的本能から来るものだからだ。
(今後が楽しみだのぉ)
なんか自由の女神以外のネタっぽいのが思い付かなかった。くそぅ。モナが真面目子ちゃんに。
次回は6日更新予定です