第74話
階段から足音が聞こえる。独特な音だ。ドンドンタン、ドンドンタン・・・。聞き覚えのあるテイスト。ドンドンタン、ドンドンタン、ウィーウ●ルウィーウィル、ロックユー!・・・に聞こえてしまう。・・・・・来たみたいだ。
「わふっわふっ」
「テンクウちゃんお疲れ様」
激励を寝ながらした。少し体が動かせるようにはなったけどすぐに疲れてしまうし、まだまだ声だってガラガラ声だし、病人は寝ているがヨシである。テンクウちゃんがドアから離れて私に近づくとテンクウちゃんの後ろにいた子が突撃してきた。
「もにゃーーーーーーーっ!!」
「トウシャくん!」
と言ってもベッドの上には登れなくて、んしょ!んしょ!と聞こえる。小さすぎて横になっている私からはトウシャくんの小熊の指しか見えない。トウシャくんが突撃したので猫さん達は窓側のベッドの端によってくれている。
「もにゃ、見えない。もにゃ・・・ぐすん。」
「まてまて、今持ち上げるから。」
「とうちゃ、抱っこ。」
突撃したトウシャくんの後ろには、トウシャくんのお父さんのヨコシャルさんと見たことない熊のお婆さんがいた。ヨコシャルさんはトウシャくんを抱き上げると挨拶してきた。
「モナさんこんにちわ。本日は急に訪ねて来て申し訳ない。あの、保護者の方はこちらに居ないのでしょうか。」
あれ?スミコットさんから聞いた話だと今日も炊き出ししにミギィさんとナカバさんとハジーさんが行ったはずだし、お店にはレフティさんとスミコットさんが居たはずだけど??そう思っていたら下からピョイッとベッドに乗ってきたのは真っ白い猫、ビャッコくんだった。
「ネコさんがついてこいって言ったからね、ついてきたの~」
あっヨコシャルさんのお疲れ様な顔が物語っている。これはトウシャくんが走ってヨコシャルさんとそこのお婆さんがついてきちゃった的な感じかな?
「もにゃ、あのねあのね、ありがと~~って言いたかったの」
「?」
「俺おサルさん達にさらわれなかった。ネコさん達がね、もにゃがやっつけたのって教えてくれたの。だからね、当分はもうおサルさん来ないからダイジョブよ、安全よ、って聞いたらねすんごくすんごくとってもとってもうれしかったの。だからね、ありがと~~って言いにきたの!」
「モナさん、ポーションを飲ませてくれてありがとうございました。後で騎士団の方からも昨日のことについてお話があるかと思います。詳しい話は保護者の方にと思っていたのですが」
「えっと私の保護者はともだち食堂のミギィさんとレフティさんなんです。だからこの近くのお店に行ってもらえれば居るはずです」
「・・?モナさんの保護者はそのお二人なのですか?ご両親はどこかお仕事でお出かけとか?」
「居ないんです。私・・・えっと」
話すべきかな。本当の事を話すつもりはないけど、どこかの誰かに拐われてこの街に来ちゃったことになっていることを話せばなんとなく納得してくれるよね。
「ハッ・・もしや・・・・すみません。」
あっ。どもっている間にこれは一番悪い想像してそうだ。両親殺された~とか、私の両親はこの世界にはいないけど生きてるよ!勝手に殺すなし。
「こら、勝手に完結させたら喋れるもんも喋れないだろうがの。」
後ろのお婆さんがつっこみを入れてくれた。ありがたや~。よし、今のうち。
「私、誰かに拐われて来たらしくって、いわゆる、迷子っていうか、保護されてるんです。騎士団の人達もこの事知ってて、それでミギィさんとレフティさんの2人が保護者代わりになってくれているんです」
「そうか、すまない。てっきり・・・。いや、なんでもない。」
うんうん。物騒なことは聞きたくないです。
「もにゃ、俺と同じ!いっしょ!俺とうちゃがパパとママのかわり!」
おおお、理解の早い小熊。頭いいな。そういえば昨日の騒動の時にトウシャくんが拾った子だとか他の熊の獣人さん達が言っていたな。トウシャくんをサルに勝手に渡した熊獣人のお母さんは解せないけど。
と、考え事をしていたらミギィさんとレフティさんに話す前に私に話してくれることになった。あれ?私に話さずに保護者にのみ話すとかさっきまで言っていた気がするのに、急に心変わりですか?
「事件は終わりましたが騒動自体は収束の見込みが立っていないのでモナさんみたいに小さい子どもは大人がいいというまであの区画には立ち入らないようにしてください。」
そんな前置きを踏まえてザックリと話を聞いた。トウシャくんを引き渡したあの熊獣人のお母さんは騎士団に捕縛されているらしい。
いわゆる誘拐傍所。従犯ともいう、犯行を手助けした人のこと。あの母親はそれに当てはまると周りが勇気を振り絞って口にしたらしい。告発である。
同族だから本来は仲間を売り渡すようなことはしないはずだけれど、今回はそれがあった為に事件が大きくなってしまった節が見てとれた。
あの母親には告発で恨まれるだろうが、あの母親の気持ちがわかっても、やって良いことといけないことの区別くらい熊だろうが犬だろうが獣人ならばできるはずなのに、とあの母親の友人たちが声をあげたらしい。
そしてその友人達もあの母親を止められなかったからと、やってしまいたくなる気持ちがわかってしまったが為に、罰を与えてほしいと騎士団に迫っているらしい。えっわざわざ罰を受けたいって?えええ・・・。
「俺も実は・・・」
ヨコシャルさんも、テロリストとまではいかないものの実はサルと一戦交えようと計画を練っていた中心人物の1人だったらしく、本来なら勾留中、のはずだったらしいのだが。
「コイツらじゃなきゃ案内頼まんしの、他に付いてきたらただじゃおかんからなって脅したからの。って言ったら渋々だけども小一時間自由にさせてもらったのさ。ま、こっそり何人か付いて来とるみたいだけどもこんだけ離れてれば、よしとするしかないけどのぉ」
ヨコシャルさんの後ろに居たお婆さんが自慢気に言う。権力者かな?
「私はデボラ。ユーグリッドの親戚にして、お前が使ったポーションの作成者だの。」
えっ!?このお婆さんが!!?
お婆さんの後ろにフレディマー●ュリーさんの曲「ドントス●ップミーナウ」が常に流れてそうだなぁと思った。薔薇を背中に背負う人とか(?)よりも、そんじょそこらのムキムキな男性とかよりも、絶対似合うと思うんだ。うん。
例えが悪すぎるけど気にしない。
この世界にその曲はないけれど。とにかく似合うと思うんだ。
クイーンで始まりクイーンで終わる。そんなデボラはある意味、熊獣人の女主人で老女王様。
次回は11月3日の予定です。すいません。ちょっと間を開けます。
(´・ω・)
その間に更新がもしあってもなぜもふの本編は3日の予定です。