第60話
「んあ?」
「・・・・」
「・・・・」
モナはこの世界に来る前の元の姿に戻っていた。
テンクウちゃん達に見つめられる私。わたし・・・。わた・・・!!!
「ってぇぇぇぇぇぇぇえ!!私!もどって、あああ!!服がっちんまい!ちょぉぉぉぉぉ!!このままじゃ痴女!!いやぁぁぁぁ!!!」
さすがに5才児が着ていた服では元に戻った私の体には合うわけもなく。ぶっ倒れてる騎士団の上着を3人分追い剥ぎした。だってちょうどいいものが近場にそれしか無かったんだもん。
2枚はスカートみたいに重ねて1枚は袖を普通に通した。騎士団って思ったよりガタイ良かったんだなぁ。比較的小柄の人からかっぱらったつもりだったけどぶかぶか。
「みんな倒れてる・・・」
ごくり。唾を飲み込んだ。これをやったのはもちろんサル。
「オマエ」
「フシギ」
「ヘン オカシイ」
「マリョクガ」
「ミチ タリテナイ」
「アンナニ」
「アビタ」
「ハズナノニ」
「うわっサルこわっ・・・ん?私今ディスられてた?」
「でぃ?」
なんだかよくわからない発言をする女性を見つめるテンクウのしっぽは下がっていた。
「テンクウちゃん?私、私、モナだよ」
「・・・・えっ!?」
しかめっ面に変貌した。大人になると色々変わるのでモナと一緒に居た時間が長かったテンクウちゃんでも首をひねるのは当然の行動だった。
「うーーん。なんだか見ずらい。はっ、メガネ!大人に戻ったからメガネないと見ずらい視力に戻ったのか!!これは戻らなくていいのにぃぃぃぃ。」
落ち着け私。
落雷と共に落ちる前に魂の体が大きくなりつつも、下を見ていた。次々に崩れゆく人々。あの強そうなユーグリッドさん。騎士団の面々。ハジーさん、スミコットさん、ミギィさん。ディオさん。チェルキョさん。アンドレ。
サルが何かをしたけれど、なにをしたのかはモナには皆目検討もつかなかった。
「テンクウちゃん私達サルを倒せるかな。」
言ったその言葉に目を丸くした。 モナだというその女性はモナの顔に似ていたがやはり大人になってしまったががために面影は残っているもののやはり見知らぬ女性に見えてしまったからだ。
「匂いかいでもいい?」
「いいよ!」
即答だ。そして女性が言っていたことは本当だと確信付いた。
「本当にモナちゃんなんだね!この匂いはモナちゃんだもん!」
確信を得て声が高らかに言った。
「どんな匂い??」
「ぽかぽかしてふわふわした匂い!」
ぽかぽかはともかく、ふわふわに匂いがあったのか。知らなかった。どんな匂いなのか結局聞いてもワカランポンタンだった。
「今モナちゃんって言いましたかにゃあ。」
「もなちゃんってあの小さい女の子のことだよね」
とまた猫がつぶやいた。
「そうだよあのモナちゃんだよ!僕のモナちゃんだよ」
テンクウちゃんは自慢気に言った。ふふーん!胸が張りすぎて鳩胸みたいになってるけどむしろそこが可愛い。愛らしい。・・・・・・“テンクウちゃん、そこが可愛い、愛らしい”あっ575になってるんでは?これは後でメモにとっておかねば。なにかに使えるかも。
なにに使うのかは一切不明である。むしろどこに使う要素を見いだしたのかはモナにしかわからない。
「そこにしびれる、憧れルゥ!的な使い道が・・・ブツブツ・・・」
「あの子、大丈夫にゃ??」
「どうして大人なんかに??」
「にゃにか幻術でも使っているんだろう。」
「にゃるほど〜。 」
確信はなかったがそれが一番想像に難くなかった。
そんなやり取りをしていたら猿はどんどんとモナたちの周りを取り囲むようにじりじりと近寄って来ていた。
うーん。サルが・・・・多すぎる。
味方側はテンクウちゃんや白い猫やその仲間たち以外はみーんな倒れてしまっている。反対に敵側はみんながあれだけ頑張ったのにサルはこーんなにも多かった。
こーんなに。どーん、ずばーん。勝ったほうが正義と言ったりするけど、こーんなにサルが居たらこっちは負け確定。負け確ですよ。マケカク。負けたら悪。そんなばかな。
これをこの今いるモンスター達だけで倒せるのだろうか。マケカク状態なのに?モナは無意識のうちに両手に力が入ってツメを食い込ませるような形で握ってしまっていた。
負けるということはこの後どうなるか全くわからないのだ。ディスられたとか冗談めいたことを言ってる場合ではない。
ただとても不思議だったのは落雷の後にこの場に立ってその後ユーグリットたちのように倒れなかったことがとても気にかかった。
サルの出した攻撃はもう止んでいると考えて良いのだろう。そして今すぐに出さないことを考えるととても時間のかかる攻撃なのかもしれない。 そうでなければ最初からそれを出していた可能性もあるし、もしかするとずっとその攻撃を出し続けてモナが落雷の後すぐに倒れたかもしれないからだ。
ただ切なかったのはそれが分かったといってモナは何をしていいのかがわからなかった。大人に戻れたからといって何か攻撃方法があるというわけではなかった。
異世界に行く前もモナは普通の凡人であり非力な女性なのですよ。
イノシシみたいに頭から突っ込むくらいしか思い付かない。
なんか使える力があればいのに!!
ピコーーン
《現在の魔力量を換算いたしました。現在“スキル”“大童”を使用可能。》
「うおっ。・・・・・・えっと。」
「モナちゃん?どうしたの??」
テンクウちゃんには見えないらしい。キジンさんも言ってた。手を空中でスライドしたりしてる変な行動してるのが異世界人だって。つまりはステータス画面は私専用画面。
「なんでもないよ」
私が現れてから距離をジリジリ詰めながらなにかをうかがっているサル達。多分そんなにこの状態は続かない。というかそろそろヤバそう。もうちょっと大人しくしててね~説明書読むから!
《使用すると☆★♢♡│=×日後に再使用可能になるまでお使い頂くことができなくらりまままますすす》
おん。バグってる。ふむ。説明文をつらつらつらっと読んだ。バグの虫食いみたいに所々なってしまって、読みづらいったらないけれど、ふんわり雰囲気は伝わった。攻撃魔法、のはずだ。たぶん。いや、どうだろうこれ。
でも今は使うことを決めた。
どんなスキルなのかは結構抽象的だから結構分からないし、“スキルを発動しますか”という画面自体もバグってしまっているので、何か副作用的なことが起きそうだなあと思いつつもモナには攻撃方法が全くもって他に思い付かなかったのでそれに頼るしかなかった。
一か八かの賭けである。
のるかそるかポルカオドルカ勝手に踊っているか。ポケモンの曲が頭に浮かんだ。エンディングだった気がする。
勝手に踊ろうじゃないか。だってモナちゃんだもん。
今は5歳じゃないけどそして自分自身の事をちゃん付けなんていうのも年相応ではないけれど、なんかもう異世界だし何かよくわからないから、とりあえずその場のノリと言うか、気合いみたいなものを自分自身の名前を言うことによって少し奮い立たせてみた。
「ふんす!」
「モナちゃん?今度はどうしたの?」
「気合いいれてみた!」
「変な子にゃ~」
「僕のモナちゃんは変じゃないもん!」
実際に奮い立っているのかはわからないけれどまぁ気持ちの問題である。おっと恥ずかしさが後から追いかけてきたよ。むむむっ。いいんです!(楽●カードマァァン)・・・よしっ。
テンクウちゃんたちの迷惑にならないようにしたいので、とりあえずテンクウちゃん小耳を挟ませてこういうのが使えるみたいなんだけどと言う。
と言ってもそのスキルの有用自体がよく分かっていないのでちょっとスキルを使いたいからテンクウちゃん達に囮になってくれといってるようなものである。
テンクウちゃんは今までで見せたことがないような感じの顔で困惑していた。
なぜならモナが言ったことを理解できなかったからだ。あれ?私の言葉にもバグのってる?
使えるかどうかも分からないのに命をかけろということだ。顔をしかめるのもだけれどテンクウちゃんは考え直した。
「わかった!やろう、モナちゃん!!」
「いいの?」
「モナちゃんの顔が自信満々ぽいんだもん」
私の表情筋もいつのまにかバグっていたみたいだ。
次回更新は9日の予定です。
2日に1度の更新に戻せたら戻そうと思っています。今のところ9日の次は11日。そのつぎは13日。の予定です。
★一部間違っていたので修正しました。
頑張ったのにサル鳩胸はこーんなにも多かった。
→頑張ったのにサルはこーんなにも多かった。
サル鳩胸ってなんやねん。Σ(゜Д゜)