第447話
ミギィさん視点という特異ページ。
いやなんか書きたくなっちゃったんだよね。
ミギィさんは結構なんだかんだ内気。人見知りとかじゃない。内気。
「いやぁー、今日も天使ちゃんは天使だったなー」
「使徒ちゃんでしょ?可愛いよねぇ」
「勇者ちゃんファン倶楽部っての作ろうってうちの娘が言ってたのよ。アンタもどう?」
「それって若い子の集まりだろう。俺らみたいなジジババに入りたいなんて言われたら変な顔するだろーが、やめとけやめとけ。聖なる子サマは見守るだけでええだろぉ」
なんて話してるんだべ。
昼の営業もぼちぼちになった所でモナちゃんをいつも通り遊びに行っていいよと声をかけてから数分も経たずに、客から出た言葉がさっきのそれらである。
というかまとまりがないのに会話が成り立っているという不思議。天使に、使徒に、勇者に、聖なる子。どれかに絞ってくれ。まあ勇者以外ほぼ意味一緒かも知らんけんど。
「ミギィミギィ、一段落したんなら、少しお茶しようよ〜コッチ来い来い」
店の常連のナナメが呼ぶ。
「来いって他はいいけど、ナナメは仕事いいんか?営業時間中だべ?」
「んなもん今日は息子や旦那に押し付けて来たに決まってるわー。いつも押し付けられないからってナメられたら終わりだわよ?」
「・・・まあええか。ナカバも、ちっと休憩するべー?」
「えっいいんですかぁー?」
「今日はスミコットおらんかったから大変だったべ」
今日はスミコットは用事があって来ていない。
「やったー!ありがとうミギィさん」
「んえー?アタイらはー?」
厨房の方からレフティとスミコットの旦那のハジーがこちらを覗いている。
「2人はあとでな。全員いっぺんに休んだら片付くもんも片付かんべ」
「うす。」
今日も今日とてうちの食堂は忙しかったからか、休憩はハジーも取りたかったようだ。
「あいあい。んだっけ、タイマーでも入れとくなー」
レフティは変なとこしっかりしとる。
砂時計が全部落ちきると、横に付いてる小さいゴング型の鐘が、カーンと鳴るシステムの魔道具を30分ぐらいに設定して砂を落とし始めた。
バタバタしてる料理の仕込みの時とかに重宝する魔道具だ。音がそれなりに響くから騎士団では仮眠する時や、訓練の時にも使うらしい。
呼ばれた近くのテーブルは埋まっているから、カウンター側に腰掛けて、男2人女2人集まっている「ジジババ」と本人らが言っていた自分世代より少し若いその4人の方に体を向けた。
ナカバはとくに会話に入るつもりはないようで、店の端のテーブル席でひと息ついて水を飲んでまったりするようだった。
「んで、なんだべ?」
ナナメに聞いたつもりが隣のオヤジが喋りだした。
モナちゃんが『とみーりーじょーんずっていう名前の、顔を多少知ってるオジサンと顔が似てるんだー』って言ってたけんど、王都で劇団とかで活躍するような感じの人に似てるとかなんとか。とみーりーじょーんずはわからんけんど、目の前のオヤジの名前はアヘッド。
「ミギィんとこ、騎士団に弁当卸しとるからなんか聞いとる?ほら、クマの兄ちゃんとも仲いいだろー?」
「聞いとるって、なんだべな。」
モナちゃんが“ジパニーモンクモンキー”や“スーアスメルマウス”と大人以外で唯一大きく関わりすぎてしまった子供だと言うことは、そんなに浸透していないはずだが、騎士団とかから漏れたか?
今回のネズミに関しては目撃者がかなり多いため多少騒ぎにはなっているけれど、公然の秘密として、モナちゃんの前ではあまり騒ぎ立てないようにしようという流れになっていっているんだけんど・・・
ミギィは緊張でノドを鳴らしそうになった。しかし
「聞いてねえか?リーリーんとこの息子が帰って来たんだと!んで、騎士団通じて、だいぶ前に取りやめになった、ほら!“商店街とモッスサニーの貴族街の取り引き”が再開されるって噂で流れて来てんのよ」
「ん?」
全然違った。
「リーリー、上手いことやったみたいよねー。うちもあやかりたいわー。貴族様がリーリーんとこの小物に金貨付けたって話よー。」
「聞いた聞いた!王都から来てた貴族様らしいべ?別荘にいたらしいからもう帰っちゃったらしいけど、また来てくれないかんなぁ〜うちにもお金落として欲しがったわぁ」
「んでさ、この食堂に食べに来てたってホントか!?」
「「ええっそうなん!?」」
「あー、見たことあっかもー?」
「別荘ある側だけど、普通モッスサニーに行かないのかねぇ。不思議なこともあるもんだ」
「貴族様特有の気まぐれってやつだったんじゃ?問題とか起きんかった?」
みんなが話す貴族とは、王族の御兄弟のディオ様とアンドレ様に他ならない。混雑時は避けてくれていた配慮のおかげであまり周知されていないことに心底ほっとする。
モナちゃんのともだちだけんな。変な貴族ではないことだけは印象付けておかんと、な?
「療養してたらしぐってな。ほら、昔この辺りに住んどったプントって覚えてるか?プントがそのお貴族様のお世話係しててな、ツテで体に良い食べ物ねえかっつっで、ココに来たんだ。」
「ほーー。プント、プント?んー、どんな顔だったか覚えとらんなぁ」
「あー、プントね!見かけてたわ。ほら、こうほっそいフクロウみたいな人よお。シュッとしててこうーほっそいのー。若い頃はカッコよかった。え?覚えてない?いやぁそっかぁ。もっと話しておけばよがったなー。この辺りじゃなくって、モッスサニーの方で勤めてるんだとばかり思ってたわあ。」
「私は何回か喋ったよ。モナちゃんと小さなお貴族様が仲良くしてるって話は聞いてたけど、リーリーの所とツテが出来てたとは盲点だった。商売人として鈍ってたのね私。」
「「「それなー!」」」
それぞれがそれぞれに商売っ気が減っていたという心持ちが同じく下がっていたと、同意がノリでスゴイ。
「・・・」
みんな元気すぎだべ。
元気を取り戻して若者返りしているジジババに少しだけ引いてしまっているミギィ。
「そうそう、リーリーに聞いたんだけどな、息子夫婦来たけどそれでも人手足りなくなったら手伝い雇いたいって相談受けたべ。」
「おお!ほんとか!?うちのボンクラ畑仕事はやる気ぜんっぜん出んけど、趣味の女神の絵を描いたりするとかの細かいことやるのは苦じゃねえとか抜かすから、送り込もうかな!?」
「あらあら!良いじゃない。景気のいい話は好きよー!」
「景気いいと言えば、あそこの店の料理食べたー?」
「ああもしかして、新しい料理とかいうスープメンってやつのこと?」
「そー!それ!お昼の今時ずっと行列なの!食べに行ったんだけど、美味しかったわぁ。ちょっとスープ多めだし、見た目お値段は高いかなーって思ってたんだけど、あれはハマるわよー。ズブズブよー。」
きゃっきゃとナナメと隣に座る奥さんのアミーニはメンスープの行列は並ぶ価値有りと言う話題で盛り上がっていた。
「あー、で、話は戻るんだけどよ、そういう新しい仕事のツテとか無えかなって」
「なー。どうせならこの波に乗りてえもんなぁー」
同意してるのはデルニエール。
「んなこと言ってもなぁ、そっちの仕事、詳しくねぇべ?ツテって言われても思いつかねえべ?聞く相手間違ってねが?」
そう言うのを聞いた2人はキョトンとしたあと、アヘッドとデルニエールが共に顔を見合わせて、またこちらを向いた。
「いーや、間違ってねぇよ?」
「そーだよぉ。ミギィはいつもそうだ。」
「この辺りじゃ、いっとう仕事に打ち込んでいて、すげえなあってみぃんなミギィのこと尊敬してんだから」
「そーだそーだ。レフティも男顔負けってくれぇすんげぇなーとは思うけど、この食堂来た奴はみーんなミギィに1度は負けたーって思うよなーー」
「わかるわかる。おふくろの味なんてどっちかってーと上手いもんじゃないのに、ミギィの上手い飯を食うと『あー、ここが帰ってくる場所だったかもしんねぇ』って思ったこともある。ミギィはおふくろだった!?ってな!ははははは!!」
「滅多らこと言ってっと奥さんにどやされるべ?」
「あ?うちの女房も同じ意見だぞ?」
「ええ・・・・」
初耳も初耳。
「天国のおふくろも頷いて聞いてくれてるに違いない」
根拠のない謎の剛速球な言葉に、ミギィは照れるどころか『見たことねえけんど、巻き込んで申し訳ねえべ、おふくろさん・・・』と心の中で謝罪していた。
つい書くのが楽しくて書きたいとこまでが長くなってしまった。ミギィさん視点、次までつづきます。
〈ざっくりオマケ〉*重要事項はほぼありません
ナナメさんはだいぶ前に出たことがある、福顔の雑貨屋のおばちゃん。
とみーりーじょーんず似はアヘッドさん。オジサン。名前の由来は“前”。砂糖農家であり養蜂家でもある。欲張りなおうちの人。息子さんは女神像ヲタク。現代にいたらコミケに行くタイプ。
デニエールさん。オジサン。名前の由来は“後ろ”。造園業。材木取り扱い有り。アヘッドさんとは腐れ縁な親友で農法について色々相談うけたりしてる。
アミーニさん。商売根性を取り戻したおばちゃん。名前の由来は“アミノ酸”。ガチョウ飼い、ヤギ飼いの仕事をしているので、卵、肉、お乳の販売などもしている。とくに赤ちゃん用のヤギの搾りたてのお乳のお届けはどこよりもスピーディーにやっている。
みんな揃って「自分がジジババっていうのはいいけど他人にだけは言われたくなーい」派の皆さんです
ジパニーモンクモンキーとスーアスメルマウスは敵です。そして、女神オウジュの本来の仲間です。
作者の近況
「穏やか貴族休暇のすすめ」と「新しいゲーム始めました」の新作のドラマCDが早く欲しい・・・(過去CDもっかい聞いて待機するべきか・・・)
次回はこの会話の続きです。6日更新予定ぐらいかなー。




