第443話
コエキちゃんを見つめてたらテンクウちゃんとスズちゃんとフテゥーロちゃんが私の元にワラワラと寄り添って来た。
スズちゃんはいつも通りと言ってはなんだけども、肩にココぞとばかりに乗る。フテゥーロちゃんはスズちゃんと反対側の肩を占領。ふたりともムフー!ってしてる。かわえかわえ・・・。
テンクウちゃんは私の体に匂いをこすりつけるがごとく、頭のテッペンからグリグリしてる。どしたどした。可愛くてどした。
「テンクウちゃん?」
じっと見つめてみたら目がうるうるのキラキラになってるものだから、とりあえずムギュッとしておいた。
「えへへー。嬉しいー」
「なんかわかんないけど、スキンシップは私も嬉しいよ」
コエキちゃんばっかりを見てたけど、ステージの歌い手さんがちょうど切り替わる時だった。結構若い人多いんだなぁ。
商店街主催のカラオケ大会みたいな感じの印象もあるけど、辺りの人は結構みんなちゃんと聞いてるんだよね。地下アイドルのライブ会場並みとは言わないけど、人が変わる度に知り合い関係の人が台の方に移動して応援していて、熱量スゴイ人も紛れてる。
黄色い声援が聞こえるからそこそこ人気のある人なんだろうなー。知らんけどな。
そんな事考えてたらフテゥーロちゃんとスズちゃんが今度はスリスリしてくる。綿毛みたいなフワッフワと、スベスベサラサラな羽毛に挟まれてスリスリって気持ち悪いわけなんかないよね。
「そういやぁ、娘さん結婚するんだって?おめでとう。」
ふと、レフティさんの会話が聞こえた。
「ありがとうございます。婚約期間を設けましたので、まだ先の話ですけどね。」
領主様が苦笑いで返した。するとミギィさんが
「あんれ?お相手は下位貴族って話じゃなかったべ?私らとほぼ変わらんくらい平民に近ーいって噂で聞いたんだけんど。」
「私もまあたたき上げのように今の地位についてはいますが、父の代で没落ギリギリ待ったナシだったので、さすがに娘の相手の地位なんてものには何も言う気はありませんよ。」
チラッと領主様が目線をステージとは違う方に視線を向けた。暗くて見えづらいが、そこに男女がいるのが見えた。あれが噂のふたりなのだろう。暗くてわかりづらいけど、父親の察知能力なのだろう。
「大きな声では言えませんが本来、ディオールウェリス様と娘が結婚してくれたらと、政治面に置きましてもとてもいい話なのではと進めていました。この度、娘に想い人がいたと発覚した後、娘と改めて、じっくり時間をかけて話をしてみたところ、私は間違っていたのだと気づかされました。」
「詳しいことは何ともいえんが、政治面っつったら、王子との婚約期間っていうそれが正解な風にアタシにも思えるが、何が間違ってたんだ?」
「仕事ばかりで娘とココ数年まともに会話していなかったと言うことが、まずわかり、これもあまり大きな声では言いづらいのですが・・・ゴニョゴニョ」
「ぶふっ」
「カカカ!そりゃ大声で言ったらバチが降ってきそうだべ!」
「亡くなった奥さん、そだっけ粘着しいだったっけか?覚えとらんなあ」
「娘が奥さんと同じく一直線で、愛を貫き通す男前だったとか、ノロケだもんなぁ。聞いても、忘れる案件だべ?」
「違いない!」
「ああ、そんなに声出して言わないでください!もうっ」
領主様の声は小さい声でまるで聞こえなかったけれど、ミギィさんとレフティさんの暴露にてわかるのは、娘が成長して亡くなった奥さんと同じく“愛の戦士”だったということがわかったってことね。
オーケーオーケー。私じゃなきゃ聞き逃しちゃう所だったね。聞き逃した所で何が変わるというわけでもないが。
・・・あの世界だとあの娘さんが“やらかした”ことでディオさんが車椅子生活になったんだったよね。
あの記憶を思い出す前に言った何気ない助言が、ディオさんの足を生かすことになったってこと?なのかな。
まだわからない。
私がこの世界に記憶がなくなる前に落ちたのはこの先のまだまだ先の未来。いつかは、同じ結果にまだなる可能性がある。ってこと。
いい方向に行ってるならいいけれど、気づかないうちに、私、やらかしてる部分もあるかもしれない。
明日からはいっそうもっと全力で考えてから行動に移そう。そうしよう。うんうん。・・・自分で言っといてなんだけど、行き当たりばったり感がぬぐえないのなんでだろう。・・・・なんでだろ〜なんでだろ〜、なんでだなんでだろ〜。
・・・・ハッ
いけないいけない。ん?
「ククリさん。いないと思ったらそんな所にいたんですか。」
最初、領主様と喋り始めた辺りは近くにいたと思ってたら気づいたらいなかったんだよね。どこいって・・・ああ、ぽん吉達のところに行ってたのか。
「いやぁあの方はお美しいですね」
ん?
「熟年の醸し出す独特な雰囲気。妖艶ともいえますが、本人からした性格から出るカラッとした晴れ渡るような清々しいものがあるおかげで、見た目よりも心が若々しい。私のような若輩者にまで気を使って話していただいて、貴族のご婦人にしては、なんとも懐の広い方です。」
ご婦人、ええと。そっちにいるご婦人は・・・キジンさんしか見えないなぁ。
まじか。ええ。めっちゃ高評価。いや、キジンさんはいい人、もとい、いいタヌキだよ。『おまえタヌキにならねえか?』って言われたらちょっと迷う程度には、いいタヌキさんだよ。
「いいひとですよねー」
「頭を、頭を下げられてしまいました・・・」
急にククリさんのテンションがガチで冷え込んだーー!?情緒の緩急おかしくない!?ホワッツ??
「ぜ、絶望してるの?なぜ??」
「ぽん吉くんとポンポコ丸をよろしくお願いしますって・・・修行よろしくって頭を下げられたんですよ。私、流れで何となくキツネの子とタヌキの子とウサギの子のお世話してしまっていましたが、流れなんです。流れで何となくなんです。まさか保護者が実はいて、しかも、見た目からして貴族様で、なぜか感謝されて頭下げて今後ともって言われたら!言われたら!!荷が!重すぎる!!」
あーーー・・・わかるようなわからないような。
んーー、つまり「棚から重荷」ってやつだな。「棚からぼた餅」なんてなかなかないパターンじゃなくて誰かが置いた荷物が急に頭とか背中に落ちて来て少しばかり危険な目に合うっていう、私が勝手に作ったことわざだ。
誰かが放置してたりしたものが降ってきて頭をかすめたり背中を多少痛めたりするんだけど、持ちきれないわけじゃない荷物だから持ち上げるんだけど、そこそこ重いから両手塞がって身動き取りづらくなるよね!っていう意味。
上手いこといけばキャスターとか見つけてすんなり荷物を運ぶこともできることもあれば、間違って落として大惨事になることもある。元々自分のものではないから、人によっては、放置するし、放置したらしたで時限爆弾みたいなものに変化するか、ただのゴミになる可能性もなくはないという。
そういう気持ち?だろーなー?
“ねえねえどんな気持ち?ねえねえどんな気持ち?”って改めて聞き直したら、気持ち煽り殺しだろうから、聞けないけど、きっとそうだろう。
めんどくさツライ。重荷。おもに・・・オモニ?韓国語だとお母さん?オモニー、棚から重荷、棚からお母さん?
何考えてるんだ。お母さん降ってきたら怖いでしょ。おもにだけに。
「大変そうだね。頑張って?」
考え過ぎて月並みなことしか言えなくてゴメンね。
「ハッ・・・こんな小さな子に、愚痴のようなことを聞かてしまって私こそ!申し訳ありません。」
「ううん、聞くだけならいくらでも出来るし、えっと・・・・何よりも元々私のところにいた子達だから、手伝える事があったら言ってね!セイリューちゃん達は友達だし、ククリさんももう友達だと思ってるから。」
うん。そうなんだよね。ククリさんがなぜかみんなを急に背負ってる事って私のやってた事を引き継いだようなそんな感じに見えちゃうんだよね。完全にそうとは言えないんだけど、元々私がミギィさん達の家でてんやわんやしてたんだから、私がやるべきことだったのかもしれない??
チラッとキジンさんのほうを見てみると、ニッコリ微笑まれた。相変わらず私には二足歩行のタヌキにしか見えないけど、あの微笑みは覇王の覇気が背景にゴゴゴゴゴってなってるように見える、うん。多分覇王の覇気じゃないかな。
近くにいるぽん吉くんとポンポコ丸くんがなぜか脳震盪待ったナシぐらいの超高速で首を横に振りまくってて、高速で首振ってるからなのか、顔青ざめてるからきっと、私の考えはNG。つまり「NO-GOOD」。良くはないかなーってやつ。
というかみんな私の心読みすぎじゃろ?わかりやすいかな?顔に出てる?
「ありがとうございます」
ありがとうって言う割にはククリさんの顔が雄弁に物語ってる。『有り難いけど小さな子に負担はかけられないからなー』って感じの八の字に眉毛下がってる感じな。
「モナちゃん、安心せ。」
領主様と喋ってたはずのレフティさんが声をかけてきた。
「アタイらも神殿には世話んなっとるかんな。アタイらも何かあったら相談なり受付けるべ。」
「あ!ありがとうございます!」
私が声をかけた時より嬉しそうだ。解せぬ。むう。
「出来る時間があるかどうかはまた別だけんどな!カカカカ!」
・・・ククリさんの声に出なかった『ですよね~』な顔に
笑ってしまったのだった。
ふふっ。
久しぶりにごま豆乳担々麺を作ったら、辛くしすぎてやばかったです。
美味し・・カライ!カライ!カライ・・・美味し・・・カライ!カライ!カライ・・・。
結果は美味しかったです。
「オモニ(お母さん)」(韓国語のはず)とか「オハナ(家族)」(ハワイの言葉のはず)とか聞に馴染み安くて使わないのについつい覚えてしまいます。使わないのに。記憶せんでええねん。ってやつ。
次回は17日くらいの予定です




