第442話
遅くなりましたぁ!
「ぷはー」
ステージから少し離れた所では簡易な椅子が設置されていたので、『立ち話もなんですから』とゾロゾロと祭りの端っこでみんなでお喋りに興じる感じになった。
歌って喉が渇いたのをみこしていたのか、ミギィさんが先んじて買った飲み物を貰ったモナはただいま喉を潤していた。
(こんなに楽しい日なのに、領主様は心から楽しめてなかったなんて)
さっきまで話をしていた相手をチラ見する。
話を聞くとなんとも苦労人気質がスゴイ。中間管理職っぽい。
そしてその領主様の今1番の悩みのタネは“ネズミ騒動”の時の冒険者パーティーのことだ。結構気に入っていたらしい。
それと、ディオさんについての話をさりげなくしたら、苦笑いされた。領主様の親族と結婚して義理の息子になるというよりも、領主様の息子として籍を移す方が手続きは大変らしく、本決まりだとは言えないらしい。
まあそうか。王族の血を引いてしまっているからね。
日本でも皇族の結婚って色々しきたりとか多そうだなぁとかをチラッとニュースとかで見るもんなぁ。
それなのに結婚じゃなくって他の人の子供になるわけだし?そりゃあ大変か。
・・・うん。変なアドバイスしたおかげで、ディオさんとアンドレに嫌われたりしてなきゃいいな。言い出したの私だし。うーーーん。なるしかならない。なんとかなるなる。ハッハッハ。よし。
「ハッハッハ」
ん?
「アイツテンション上がり過ぎにゃ」
私の心の声が漏れ出ちゃったかと思ったらビャッコくんがステージの方を見ながら笑っている。
ふときになってステージを見るが、ステージの方では激しさはそこまでないけどノリのいい歌を若めの男性6人でハーモニーを響かせていた。
全然ビャッコくんが笑う理由がわからない。と、キョトンとビャッコくんに視線を戻すと、その私の視線に気付いて“アレだよあれあれ”と別の方へ視線を誘導し始めた。
何かと思ってそちらを見るが、そちらの方にはネコのコエキちゃんしか見えない。いや、人間はあちらこちらといるのが見えるけど、どう見てもビャッコが指し示すのはコエキちゃんだ。
「ほら、コエキのやつハシャギようがヤバいにゃ」
コエキちゃんはネコにしてはぴょんぴょんウサギみたいに跳ねてはいるもののお祭りが大好きと聞いてはいたので、ヤバいようには見えない。楽しそうだなぁのひと言に尽きる。
「ん?」
ただ跳ねてるだけかと思ったら、跳ねた地面がなんかを生成してる・・・生成してる!?
別段ファンタジーとか特有の「魔法使うとキラキラしてるよね!」な、感じが見えなかったから跳ねてるだけかと思ってた。ってたら、地味に、じみーーに地面に黒っぽい魔法陣がぺっぺこ現れては、石みたいなものが現れちゃー消え、現れちゃー消え。消えかかっていた所をさらに生成してるから結果消えずに生成したものがどんどん増えていっている。
増えたモノは近くのネコ達がせっせと運んでくれてて、なんかこう、そういうアニメーションなボット的な・・・動くラ◯ンスタンプが延々と繰り返されてる感じというかなんというか。である。
可愛い面白しんどい。そんなボット的なもので何を生成してるのかと思いきや。
近くにいる領主様も、ミギィさんレフティさんもネコから生み出される石にびっくり戸惑っていますよ。
「石」
炭のように黒い石。わあ。なんだこれ。
「価値のない単なる石にゃ」
「なあんだ。・・・みんなで集めてどうするの?」
「今集めてるのは周りの人間が石に足を取られたら危ないからだにゃ。アイツが落ち着いて石が出なくなったにゃらいつも捨ててる所に捨てに行くにゃ」
「そっかぁ」
なんだか小さい山が見える範囲にあって黒いアリ塚・・・いいや、正直に言おう。辺りがもう夜のトバリをおろしちゃったから、辺りは暗い。フンコロガシのフンの山に見える。
「見せてもらってもよろしいですか?」
ネズミ騒動でネコの大半は実はモンスターだとこの街のほとんどの人に周知の事実になってしまっているからか、領主様も物怖じせず・・・いや、まだまだ固いから慣れてはいなさそう。
「なるほど、石ですけど、キレイですね。」
領主様もまじまじと見るけど、子供が拾ってきた石を見るような大人の顔だ。この反応だと価値はやっぱりなさそうだなぁ。
わざわざ地面から湧き出るように出てきちゃってるし、異世界だし、「魔石だぁ!!」とかそういう異世界チートムーヴ的な面白反応をちょっぴり期待していた私は、がっかりだ。
「捨てちゃうなら、少しだけ今日の記念にもらってもいい?」
「いいぞ」
ビャッコくんからのオッケー。石を出したコエキちゃんはコッチの話すら全く知らない状態。ずっとステージに夢中。いいのかな?まあいいか。
遠くに見るとアレだけど、近くで見るとキレイな石だから数粒もらおう。数粒ならただの石にしか見えない。うんうん。
「食えニャイし、昔人間に売りつけたけど価値なんかにゃいってお墨付きもらったし、熱を加えても弾けにゃいし、魔力もはいらにゃいし、面白くもにゃいけど、アイツはしゃぎ過ぎると作っちまうんだよなぁ〜」
「そっかぁ、大変だねー・・・・ねえ、これの捨て場って近いの?」
「遠くはにゃいけど、モナみたいにちっこいのが行くとかなり遠いか・・・にゃ?」
首をコテンとして考え込むビャッコくんがなんだか可愛い。
「結局石だから、雪崩がおきたら危ないからな。街からは離れてる」
「ああそっかぁ。」
捨て場とかちょっと見てみたかったんだけど、この様子じゃ遠そうだから諦めるしかなさそうかな。この小さい足はマックドゥの森の手前のキジンさん達の所に行くのもひと苦労だったんだし、それより遠いってなると、結構キツイはず。
「えーと、白いネコ様?私はそこに案内してはもらえないですかな?」
領主様が案外食い下がる。どしたん。キョトンと領主様見つめると、苦笑い浮かべて理由を話してくれる。
「ああいえ、そんな場所はやはり危ないです。今まで聞いたことのない話だったので今からでも対策するべきか検討するために地質調査的な事を行いたく・・・」
お仕事だった。というか、土地を把握できてないんだなぁ。まあ人手もそんなにこの街は多くなさそうだし、仕方がないか。
というかビャッコくん?
すっごいめんどくさそうな顔になってますよ。言った領主様の動きが段々と挙動不審になってきてて哀れだよ。その目やめたげてー!
ここは伝家の宝刀的!な!
「だったら私も見に行きたーーーい!」
コレしかあるまい。
チベスナみたいな、すんげぇめんどくさそうな顔は収まった。よかった。よかった。
すぐには行かないそうなので、この話は一旦ステイ。ヘイ!ステイ!
今はテンションばちくそ上がって石を生成し続けてるコエキちゃんを生暖かい目で見守るのだった。
テンクウ「夜のトバリってなーに!?」
ビャッコ「“夜の帳が降りる”っていうのは、明るい状態から暗い幕みたいなもんが、落ちてきてて暗くなるんだよーっていう感じの事をひと言で表した表現にゃ。」
テンクウ「ビャッコあったまいーー!」
仕事が急に忙しくなってしまって寝落ちしまくってました。すみません。
貯め置き書き?休んでる間に?できてませんよぉ!ハッハッハ!
先日のちょっとした一件のせいで、体に変なクセみたいなものが出来て、マジで足に激痛が走るようになっちゃったんですから。
許すまじ、ストレスの原因!!イラァ
疲れてくるとシップとお友達になってます。せつなぁ・・・。
次回は12日ぐらいの予定です。




