第418話
「聖なるモノ。ってこの・・・・ええと。ぞうきんなんだけど、合ってる?」
「ぞ、ぞうきん、だと!?」
ハトが豆鉄砲食らったような顔をしていらっしゃる。ワンピースなら“ドーーーン”っていう効果音が妥当だろう。
「いや、本当にボロだな。形を保っているのは縫われたおかげか?」
「いやごめん、ぞうきんの形になっちゃってるんだ。まさかあとで必要になるものだと思ってなかったもので、人にあげちゃってから、回収したの。」
「な、なるほど。それなら仕方がないな。我によこすが良かろう!」
ぞうきんでも欲しいらしい。使い道が出来るのならいいのか?考え無しでスキルとか人に喋りまくるアホ系主人公みたいにぽんぽんとあげちゃっていいのかなあ。ああいうの読んでると「志村うしろうしろ!」みたいになんかこう「えええ話すの!?えええ」ってなるんだよね。渡すべきか、もっと話を聞いてから・・・・
とかうんうん考えてたら、婚活バラエティーみたいな感じに
「ちょっと待ったぁーーー!」
「って、下の階にミギィさん寝てるから静かにやって!」
小声で怒鳴った。違うな、小声で威嚇した?小声で威圧をかけた。
「「あっハイ」」
私が怖かったのか、速攻で静かになってくれた。コワクナイヨー、ワタシ5歳児ダヨー。婚活バラエティって聞くと親が“ねるとん”って言ってた気がするけど“ねるとん”ってなんですかね。ねればねるほどおいしいねるねるねるねの事じゃないことだけはわかります。
思考がねるねるねるねるしてきちゃったから、時に戻そう。違う、それはぺこぱさんのネタだ。じゃなくて、んんっ・・・元に戻そう。
「ハトに渡してはダメ!私達が貰う!」
「なんだとう、後からしゃしゃり出てきて何様ぞ!」
「なにさまでもない、見ればわかるでしょーーーう!リスだーーー!」
シャー。(出っ歯)
急にリスVSハトの図になってしまってそれに囲まれているオオカミのコウチンさんがなんでか間にいちゃうから、“まあまあ”とか“どうどう”とかいって双方を落ち着かせる役になぜかなってる。
なぜって、そりゃあ、そこにいたからだよね。絶対的不可抗力過ぎて可哀想。って思ったけど口には出さないよ。まあ囲まれてたからね。仕方ないよね。
ガン決めてオラオラしてるからなんていうか、メンチ?切ってるっていうのかな?
ほら、ハトとリスじゃん?
迫力無くて可愛いよね。(止める気が無い。)
このボロ布・ウィズ・ガビくさそうな物体!を取り合うとかどうしてこうなった?
「そんなものあったんですねん?」
「そーなの!スズもぞうきんピカピカ見るまでただの布だと思ってたー!」
横からタヌキのキジンさんがぞうきん覗きにきてぞうきんじろじろ見ている。スズちゃんはドヤァしてるけど、それ、ドヤァ出来る内容じゃないからね。
「聖なるモノ?」
「うん、テンクウちゃんもハトさん達みたいに欲しかったりするの?」
「えっボク、そんなくさそうなのいらない!」
「私には見えないけど、モンスター特有の何か聖なるモノダヨーってものが見える、とかじゃないの?」
「えっモナちゃんはそんなこと思ってたの?虫じゃないんだし、見えてるものは同じじゃないかなー」
「おや、虫は見え方が違うんですかん?」
テンクウちゃんがキジンさんの知らないことを知っているようでキジンさんが食いついた。
「ほらボク、風みたいにビューンって走れるでしょー?虫もビューンってボクに競走してくるのいるから負けないぞーってやったことがあるんだけどね、その虫がさー、意地が汚くてね、ボクが走ってる目線じゃなくてその虫の目線を見せてくる魔法かけてきて、ボク転んじゃったんだよね。ズルくない?ズルいよね!目がいっぱいあるからボクがやたらいっぱいいるように見えて気持ち悪かったー。」
「それはまた、すごい体験だね」
あっけらかんというテンクウちゃんは別段怒るというより、やっちまったぜトホホ!ぐらいのノリだ。
「んだよ、目がいっぱいってハエ型かにゃ?」
テンクウちゃんの話に答えを求めたのはビャッコくんだった。
「ちがうよー。ほら、羽がびょーーんって長いやつー。ボンボ?ベンベ?ブンブ?」
ゴンゴ?ポンゴ?タンゴ?オ、レィ!?そう言えばタナゴでタンゴタナゴでタンゴって歌がなんかあったような・・・・
「トンボのことー?」
「それそれー!」
トンボだった。目がいっぱい。
「トンボなら、負けても仕方ありませんですん。あいつらは勝ち虫ですからん」
「ほえ?」
「かちむしー?」
「ガチムチー?」
「かちどきー?」
「ガンムシー?」
ネコちゃんわらわらキジンさんのもとに集まってきた。って、誰だ、ガチムチって言ったやつ。みんなわざとだろう!?ね!?ツッコミどころいっぱい過ぎるよ!?
「知りませんかん?タヌキ族では有名な話なんですけんど、トンボっていうのは前にしか進まなくそして後退しないという習性があるから不退転の決意や勝利を象徴する、なぁんて言われておりますん。トンボのモンスターもそうそう現れないので、見かけたら縁起がいいと言われてますん」
「「「「「へーーーーーー!!!」」」」」
キジンさんのうんちく講座にみんなで聞き入ってしまう。
「「モナっっ」」
「おっとぉ!?」
「我は真剣に!!ものっそ!!しんっっけんに!!ゾーキンを欲しているのに、なぜモナどのはそっちで話をしている!?」
「そーです!そーです!今後のリス一族のためにも、そのちょっとボロボロのやつがとってもとってもとってもとっても、のどから手が出ちゃいそうなほどなのに、どーして話を聞いてなかったんですかーーー!」
あ、いやー、ごめん。いやー、だって可愛い喧嘩だけど、コウチンさんも間に入ってたし、結局やっぱり用途が行方不明だからなー。
「モナママ!あのねあのね!ぼく、わたし、いいこと思いついたのー!」
フテゥーロちゃんがぴょんぴょこ主張している。うんうん、かわいいね。え?なになに?なるほどー。
・・・・いや、普通に気づかなかった私が悪いなコレは。
フテゥーロちゃんがナイスアイデア。マジ感謝。
「感謝!」
「コレで少しは運が向いてくるはずー!あー、泣けてくるー!うれじいー!」
「我は新しい主の土産ものになった!」
1個しかないなら、分ければいいじゃない。つまり、ぞうきんを裁断しました。
〈ジョッキン〉
私の肌着→ぞうきん→布のカケラ。イマココ!
切っただけじゃバラバラになっちゃうから器用なキジンさんにも手伝ってもらって、ミサンガみたいにしてもらった。欲しいって言ってもこのコ達どうやって持ち帰るかも、これで解決。一石二鳥。フテゥーロちゃん頭いい。え、このコ天才すぎでは。
ところで。
「こんなものが聖なるモノってホントなの?」
「あれ?わからないですか?我にはヒシヒシとわかるのですが。」
なんかハトに後光が差してる気がする。アガペーって今にも言いそう。言っていいよ。ほら、アガペーっていってごらん。
「モナさんにはわかりませんかーー?んーー?たぶんアナタの身を助ける加護がついていた盾ですよーー。神のつくりたもうた究極の布地です。」
「にゃんだそれ、怖っ」
ビャッコくんの意見に少しだけ賛成。
究極の布地というわりに、ぞうきんとして縫われてますし、ハサミで裁断できちゃってますけど、盾ってなんだっけ。
「そちらのリスの言う通りです。我が推測するに、先ほどの未来からこちらに来た話がありましたけど、それは無謀だと思いましたが、コレがあれば話は別ですな。きっとこれがなければ、魂は消滅していたと思われます」
「・・・・・・え?」
「これがボロボロなのは汚くなっているのではなく、魂を守りきった次元移動の衝撃吸収の跡だと思います。それができるのは神のみです」
ポカンとしていると、感極まったらしく、ハトがアガペーって本当に鳴いたけど・・・・耳には入らなかった。
「タナゴでタンゴ」YouTubeで見れます。耳に残る〜。タンゴでタナゴのことが(たぶん)学べます。子供向け番組って耳に残る歌作るプロ過ぎて、脳内支配されそうになるよね。
テレ東の「しなぷしゅ」の音楽番組はじめてみたんですが、最初NHKかと思ってた。「みんなのうた」じゃなくて度肝をぬいた。
耳に残る、記憶に残る、忘れられないって凄いよね。CMに、曲に、デザインに。
プロ、すげぇーーー。(拝み)
何かを作る人ってマジすごい。素敵!最高!尊敬しかない。
大人になってからそういう事がわかるようになって楽しいです。子供の頃にそういう事がわかる子供だったら良かったのになー。もっと人生楽しかっただろうに。
次回は7月4日予定です。遅れたらゴメンねー。