ブクマ1000人超えたって、マ!?記念SS③
少し遅くなりました。前話、少しだけ訂正しました。話の流れは変わっていません。
今回は
IF世界のモナとディオのある日の会話です。
モナとディオ2人共に大人です。IFなので。
深い溜息が彼から漏れた。
ディオさんはつい先日、近場の領地視察で4日ほど不在にしていた。
近場と言っても、ロッテリーの周辺も様々で、日帰りが難しい場所もあるらしい。私は行ったことはほとんどない。というか行かせてもらえない。そういう場所は大概危険地帯だ。
この世界にもガスのようなものが吹き出しちゃっている場所やら、地面がゆるくなって地盤沈下の起きやすくなっている場所、むしろもう地盤沈下が起きたあとで崖になってしまっている場所やら、毒キノコの群生地だとか、巨大虫がはびこる地帯だとか、魔法があろうとなかろうと結局自然現象って脅威なんだなと思うほかないことが、どこそこかしこで起きているんだとか。
それはそれとして。
彼がため息をついたのは、その後の処理の方である。
「多くないですか?」
「ははは」
苦笑するしかない。
少しばかり遠出なんてしようものならそれを終えて帰って来ると決裁の終わっていない書類が山積みになっている。
山積みと言っても漫画みたいに何百枚、むしろ何千枚も積まれている山が5つとか6つとか机にあるのを想像するかもしれないけれど、そんなことはない。
極太のファイル、もしくは極太のバインダーが3つ程度だ。ちなみに1つ500枚から700枚ぐらい。ほら、山積みだけど絵にしたら、大したことないでしょ?
広辞苑みたいなのが3つぐらい。うん。絵にしたら大した事ない。たった4日分だ。
実際に対面したらやらなきゃいけない書類が少なくとも、1500枚とか絶対、死ぬほど多いと思うけどね。コピーとパソコンも電卓もないんだよ。手書きだよ。腱鞘炎になっちゃうのでは。
全部を全部、ひとりで処理してるわけではないけれど、私が読んでもチンプンカンプンなので、さすがに手伝えない。頑張ってディオさん。南無三。
ザックリと変な書類が紛れてないかノートめくるがごとくペラペラぱらぱらしてたら、何か見つけたらしい。
「ああそうか、また冒険者を呼ばないといけませんね」
「ん?なにかあった?」
私がひとこと尋ねた。
事件、事故の類だったら、領主から騎士団を派遣すればいい話。冒険者ギルドが無くなってしまってもうだいぶ長いらしいこの街に冒険者をわざわざ派遣しなくてはいけない案件とはなんだろうか?
1枚の書類をサッと出してくれた。読むと、ほかの書類は雑多な文面だったりするのに対し、もう決まりきっている文面なのかコピーなどないのにソレ専用の書式だとわかる。
「毒花粉対策、木の剪定・・・。毒花粉ってなあに?」
「魔法の1種です。木の形のモンスターに使うことの出来る魔法で、鳥とかで言う求愛行動みたいなものだよ。」
「ふうん?モンスターなら退治というかさ、狩っちゃダメなの?」
私の脳内は“ひと狩り行こうぜ!”の文言が並んでいた。
「木だからね簡単に倒せますよ。でも木だからね。刈取りし過ぎると結局土砂崩れのもとになってまうんですよ。木が多すぎても山火事が起きやすくなったりするし、モンスターと一概に言ってもこの辺りは難しい問題なんです。」
「ああ・・・なるほど」
そういう話聞いたことある。特に冬とか乾燥してくる時期に木が多すぎてこすり合わせ過ぎると火災が発生しやすくなるとか。土砂崩れが起きやすくなる原因は木が根から水を吸収してくれるから。木を切りすぎると、その場所の生態系も変わるとか聞いたことあったっけ。この世界でもそういうことは地球と変わらないんだなぁ。
「ってそういうのって“木こり”がやるんじゃないの?」
「“キコリ”?」
「そういう専門の職業の人。山に住んで管理してくれたりするの。」
ヨサクは木ぃをきる〜こんこんこーーん、こんこんこーーーん。ってさ。
「“キコリ”というものは居ないけれど、管理する人間はいる。私です。」
ドヤァ
「そうだけど、そうじゃない!」
ツッコミ。
夫婦漫才か。いやまあ、婚約者だけれども。
「言いたいことはわかるけれど、私が庭師ギルドを派遣はしているよ。」
日本で言うところの造園業者かな。
「毎年それでも人手が足りないんだ。それに一応普通の場所ではなくモンスターの出る場所でもあるし、木自体がモンスターですからね。冒険者を呼ぶのが1番なんです」
1番だったかー。それに色々手を尽くした後だったらしい。
「まあでもそっか、そうだよね。」
こっちの知らない常識をまた気付かされたなぁ。
「毒花粉って吐き出す前に止められないの?魔法なんでしょ?」
「実のところ、毒花粉って名前はついているけど、そんなに強いものじゃない。」
「“毒”って付いてるから“毒”が検出される花粉なんでしょ?」
「成分としてはちょっと強い花粉ですよ」
「え?じゃあなんで毒?花粉って害無いよね?」
「「毒花粉」、その毒に侵されすぎると1ヶ月から3ヶ月の間くしゃみ鼻水咳が出やすくなり、他の病気にもかかりやすくなるという、悪魔の所業のような魔法だ。」
あっ(察し)
つまり・・・異世界の花粉症だーーーーーー・・・・。
なるほど、”毒花粉“ね。
「冒険者に駆逐依頼は年3回必ずしている。冒険者は花粉が完全に飛ぶ約1ヶ月前に「木の剪定」をする。そろそろその時期だからまた呼ばないと、と言ったんですよ。」
「なるほどなるほど」
さっきの書類をもう1度見直すことにした。そっちに詳しく書いてある。なになに・・・
“切った葉っぱやついた花粉は依頼されたギルドに持ち込めば持ち込んだだけ報酬になる。”
おお、ボーナスステージでは?
“この時、花粉をまき散らしたりしてはいけない。2次災害にもなる可能性もあるし、なにより花粉も買い取りするので報酬が少なくなる可能性があります。”
2次災害というか花粉症被害者になっちゃったら、次からコレで稼げないよねぇ。
“「毒花粉」とは言うが「もの」が濃いから「毒」なのであって薄ければ「薬」にもなる。「土の養分」にもするので濃ければ大歓迎”
なんかこう、本末転倒気味な気がしてきたよ?大丈夫かこれ。花粉症発症した人にいつか訴えられない?
んー、大体は「薬」では無く、「土の養分」にしているらしい。
「ディオさん、ここの“土の養分”って花粉をどうやって使ってるの?」
「ああ、これはね、花粉は元から発酵を促す性質を持っているんです。他にも混ぜるけれど「毒花粉」と他のものを土に少量混ぜて配合したもので、農作物の育ちやすい、「魔法肥料」の開発に成功していて、近年ではほとんどの農家がそれを使用していいます。“土の養分”と書いてあるけれど「魔法肥料」の材料という意味で記載されているんですよ。」
「なるほど?」
わかったようなわからないような?
「この「魔法肥料」なかなか凄いんですよ。花粉が配合されているからか分からないですけれど、農作物に甘みが増して、その農作物を食べ続けると自然と「毒花粉」の耐性が付きやすくなるというおまけ付きです。」
ニッコリ
「すごい!」
拍手しちゃう!なんぞそれ!え、マジで凄い。わー、ぱちぱち。
あれ?・・・でも日本でもスギ花粉とかは枝落としをすると次の年は更に花粉が増えるってあったけど、ココは違うのかなぁ。
「剪定って事は枝を切り落とすんだよね?次の年から花粉大発生しない?大丈夫?」
人間でも動物でも“死ぬかも!”ってなった時にまず子孫を残そうと本能が動くらしいよ。木の花粉肥大もそれに近い気がしちゃうよね。
「花粉が増えるって?ああ、でも最初はそんな感じだったと聞いているけれど、ここでは毎年のことだからね。増えた気配は無いですよ?」
つまり付け焼き刃的な1〜2年程度の話じゃなくて、完全に林業のシステムに入ってるから木の方も『あ、今年もッスねー。あいあい、よっしくー』ぐらいの人間の散髪程度ぐらいの気持ちになっている。ということかな!?
「むしろ毒花粉が多いと、本当に土の発酵が早いから重宝されます。みんな鼻水垂らしながら「今年は多いぞ!大儲けだー!」とかいって喜んで森に突っ込んで行きますよ。」
きたねぇな。鼻も金に対しても。拭いてけ。
領主に見せるものでもないだろうソレ。
ドン引き気味である。
「でもやはり毎年毎年簡単に儲かるからって、多めに刈る人がいまして、むしろ“毒花粉は絶滅するかもしれない”って噂で流れるくらいなんですよ。ははは。絶滅はさせないけれどね。そのための見張りの庭師ギルドがいますから、その辺りは、ね。」
ひと通り話てしまったようなので、ディオさんは私との会話を切り上げて本格的に書類に目を通しはじめたようだった。
私も邪魔しないように・・・お茶でも淹れてきてあげよう。
いやー、でも、ほんと。
うわぁ。
絶滅?どんだけ狩るつもりなの。
やっぱり人間の欲は恐ろしい。
絶滅イコール人間の欲望。
リピートアフタミー、絶滅イコール人間の欲望。
はい。勉強になりましたね。
見たことないけど、庭師ギルドの人頑張ってね!!
・・・・・
・・・現代日本もスギとかヒノキとかの枝落としに大金をかければ、花粉症も根絶する・・・・?
ここは異世界。かもしれないは、わからない。
ただ、似たような環境があることはわかった。
だいぶおかしいが。
異世界の花粉事情おかしかった。
そんな事を始めて知った1幕だった。
夏も間近なのに、異世界の花粉症の話でした〜。
イチャラブっぽくないけど、IF世界の2人のよくある光景でした。
前話の「草の民族」の“カヌイハッタウ”は造語で、異世界語です。調べても草の民って意味合いの言葉はありませんからあしからず。山の名前も同じです。
次回から本編再開です。
次回は20日予定です。




