第414話
ごちゃごちゃの続きです。
わちゃちゃちゃーごちゃちゃちゃー。
静まり返った。私もカーペットの敷いてある床に座り込んだ。
私の前に、真横に、私の後ろにあるベッド上に、モンスター達が私を見つめている。
部屋には、
テンクウちゃん、フテゥーロちゃん、スズちゃん、キジンさん、ビャッコくんとビャッコくんの仲間の、コエキちゃん、トカキくん、タタラくん、スバルくん、アメフリちゃん、トロキさん、カラスキくん、タイモちゃん、リスと仲間っぽいリスがいっぱい、ハトと仲間のハト。
ってめっちゃ多い。
多すぎでしょ多い。よく部屋に入ってるな。もうほんとマジでな。
・・・床抜けないよね?気にしたら負けだ。
今いない子達も気になる。ネズミの騒動の前にはこの部屋にいたのに。今何しているんだろうなぁ。
ううん、このことはまた後で考えればいい。さっきからこればっかりだな。
・・・ふう・・・。息を整えた。
そしてピースサインをみんなに見せた。
「今回、大きな事件が2個ありました」
そう、2個。
「“サルの騒動”で稲妻熊というモンスターのトウシャ君が奪われそうになったことが1つ。」
少し前だけれど、そんなに時間は経っていない。ピースサインの人差し指だけをもう片の手の平で握りしめる。
「それと一番の直近の話で“ネズミの夏祭りの大騒動”が1つ。」
残されたひとつは、本当につい最近のもの。そして残った中指も片の手の平に包まれて消える。
単なる指遊びだ。ハンドサインほどのものではない。手品と同じで、目線誘導だ。大事な話の入り口にコレで全員の意識が1つになったのだ。
「夏祭りに起きたネズミの大騒動については、未確認のダンジョンがあったけれど、そこのコアが結局使えなくなってダンジョンがなくなった。そのダンジョンは、誰かが作ったものだった。そしてそこには、モンスターらしき気配が残っていた。そうだよね?」
いつのまにやら揃っているネコねこ軍団のリーダーでボスで司令塔でなんだか凄いビャッコくんに、話題をふった。
「そうだにゃ。」
流し目加減がなんだかカッコいいです、シロねこビャッコさん。そしてビャッコくんは続けた。
「モンスターもにゃけど、人間と、おかしな気配、それと人間達に渡した変な壁。色々多すぎて、今回はぜぇんぶ怪し過ぎる事件だったと言えるにゃ」
ざわついた。とくにテンクウちゃんとコウチンさんが“えっ!?”ってなってる。
いやいやいや、コウチンさんはいいとして、テンクウちゃんはビャッコくんと一緒に結構あっちこっち行ってくれてたんじゃなかったっけ?
「わろす?わろす?」
パタパタと私の肩でヒソヒソ声でスズちゃんがなんか言ってる。聞こえない。「ワロスワロス」「www」だなんて、スズメがネット用語で草を生やそうとしてるのは夢で幻で、気のせい。うん。
テンクウちゃんは単純可愛いワンちゃんなだけ。ビャッコくんの冷たい目線に、何でか見つめられて照れてるテンクウちゃんは、うん、置いとこう。話、マジで進まなくなるからね!
「そこに何か手がかりがあったらしいけど騎士団の方が調べている。結果が出るかは分からない」
一応 みんなに伝えておく。
「そうですねぇ。ひとつわかっていることは、この街や森周辺が何か大きな騒動に巻き込まれているっていうことですん」
キジンさんが喋り始めた。
「神殿にある、女神像のところにあった“女神の使い”たちにはサルやネズミの像が祀られていますん。もしかしたらそのサルやネズミの“女神の使い”たちに何か関係があるのではないかという、浅はかですが、あたくしのひとつの意見でございますわん」
そんな事ってあるだろうかと誰もが思う。しかし、神がいる世界で、なおかつ、その“女神の使い”も存在している。
「でもさでもさ、それならおかしくなぁい?女神が使いたちを動かしているはずでしょ?使いたちは眷属である女神にしか従うことはないって話だよ。」
ビャッコくんの所にいるぶち柄ねこのコエキちゃんが疑問を話す。その言葉についに触発されたのか、他の今まで黙っていた面々も口々に話しだした。
「それがもし本当なら女神様は何がしたいの?」
「神様って偉いし、みんなを助けてくれる存在のはずだからそんなことしないよ」
「女神なんて関係ないよ。サルもネズミも暴走しただけで偶然起きたことだよ」
「コレに答えなんてあるの」
「そうだよ、こんな話したところでどうだって言うんだ。」
「騒動が起きたのなら、どこかへ逃げるべきだよ。」
「逃げる?ハハッ女神様が守ってくれるはずだ。だって誰よりも信じているもの」
モンスターだろうと会話なんてものは人間とそう変わらない部分に少しだけホッとしてしまう。何かを信じている時の発言はモンスターも人間も大差ないんだなぁ。
ハトは一貫して無言っぽいけど、リスとハムスターがすごく喋ってる。ここはシルバニアファミリーか。小さい服作って着せたろか。
会話の流れが停滞している。混乱ともいえる。“神という存在が私たちに何かをする可能性があるかもしれない”という憶測の話だからだ。
『何かをしてくれる』分にはいいだろう。得るものがあるかもれないという話だからだ。『何かをされる』と話は変わってくる。それが神からの害かもしれないからだ。
そしてみんなの話の根幹には、“あの女神様が”という事が前提だ。
でも口には出さない。出せない。モナは知っているから。あの女神は“今は”いるはずがないのだ。横竪は死んでいる。
神はある意味、概念の存在である。神というものは、そういうものだ。
“深層心理の奥底”で少しだけ『思い出の流れ』と違う部分でたまたま記憶が戻ってきた部分、あの真っ白い男性の神様の順流様は もともとは横竪様だったということを思い出した。
その“神に関しての記憶が復活した要因”としては、あの空間で長い時間一緒に記憶を巡ったからだろう。
神様で思い出した記憶の中。その記憶は、私の過去であり未来のあの場所での起きたことを全てを思い出したわけではないけれど、でも“深層心理の奥底”で“理解だけ”は早くなった。
“納得”するほどでもないけれど、体験していた経験が私の根幹に響いているのだろう。
順流は横竪と同じ神だけれど、全く同じではなくて、ましてや彼らの魂の多くの根幹部分は全く別物だとなぜか確信していた。
簡単に言うと、神様も“転生”したような感じとでも言えばいいのかな。
同じ魂だけれど、輪廻転生を経て記憶を無くして新しい未来を生きる。
転生っていうとどうしても最近は“なろう系”の“記憶だけ持ち越しちゃった!転生だって!どうしよう”展開多いよね。
んでまあ、そういうテンプレ的な展開の“転生”では残念ながら無くて。
本来の『人の魂は実は巡っていますよ』って宗教的な教えとかのそっち方面のやつに近いと言うべきか。
人間と全くもって違うのは“消滅”しているのに誰にも気づかれないっていうこと。
変わっているのに世界の歯車の中では変わっているように感じることが出来ない。だって結局のところ、同じ神様ではあるから、別の神なのに別の神として認識できるのは“出会った者だけ”なんだ。なんせ神としての器は同じものなのだから。
・・・私は理解出来るけど、この話テンクウちゃん達にしてないんだよね。話した所でやっぱり“出会った者”ではないから、混乱させるだけな気がする。
うーーーん。
「モナちゃん、考え込んじゃった。ウンウン唸ってるね」
「モナママ?」
あっ・・・しまったな。テンクウちゃんとフテゥーロちゃんが心配そうに見ている。
「ナア?その方向で行くと神と使いたちは繋がっていないような気がするナア」
私が唸り声を上げている間にもみんなの話がごちゃごちゃしていたんだろう。声を上げて主張したのは毛が長くてナアナア喋りのネコのトロキさんだった。
話を途中から聞いていなかったけれど、どの方向性からそういう話になったのか分からない。
「・・・神なんていない」
ボソッとネコのタタラくん。そういうセリフ吐くとなんだか厨二病っぽく見えてしまう。ちょっとかっこいいよね。『神なんていない』って少しだけ言ってみたいワードではあるよね。『計算通り(ニヤリ)』と同じベクトルだよ。うんうん。
さてその“神”について話すべきか否か。結局、まだ神殿は女神信仰のままだから、言った所で、モンスター側に受け入れられても、人間側に広がった時に異端認定されて大ごとになりそうな気配がする。
ここは日本みたいに“他宗教どんとこいごった煮カモンベイベー”的な、周りに“無宗教認定”されるくらい宗教的に寛容すぎる場所ではないんだよなぁ。
どうにかなれー?
えっこのまま続くの!?
はい。そうです。
次回は6月8日予定です。めんどくさ展開とか言ったやつ前に出なさい!お酒飲みに行くぞコラァ!←!?