第406話
モナはお昼寝決め込んでるので、大人達の会話なう。って最近こんなのばっかりなきがするなぁ。
似たりよったり展開でスマヌ。マヌマヌ。
モナがお昼寝を決め込んだそのすぐ数分後のこと。準備中のともだち食堂で、帰ったはずのスミコットが戻ってきていた。
「モナちゃんはお昼寝することにしたようです 」
「おや、そうかい。わかった。」
単純に子供を見守る報告をしに戻ってきただけのはずのスミコット。
モナがこの後“誰かと遊びに行こう”が、“今現在と同じくお昼寝だろう”が、モナがこの後どんな行動をとったかというのは元から“報告”する手筈だったからして、レフティはスミコットの言葉に軽く返事を返した。今日の仕事の最後はそれでオシマイ。
と、いうことになっていたはずなのだが、なぜだかスミコットはそこにいる。
「・・・・ん?どしたん?スミコットはいいんかい、帰らんくて」
「ええ、やっぱり少しだけお喋りしてから帰ろうとおもいます。やっぱりまだちょっと気になる所が無いとも・・・ねえ?アナタ」
「ん。ウワサ、広がるの早いし心配だ。」
子供を育てた事のある2人からしてみれば、モナにおける今の状況というものはどう捉えても特殊だ。
しかしながら、どんなに特殊だろうと、それを噛み砕いて地面を均すなりをするのは周りの人間しかできることではない。
もし何も出来なくとも、子供を育てた事は基本的に一切ないミギィとレフティにスミコット達からなにか知恵を出せるのではと脳の片隅にチラリと浮かんでしまうのだ。
それが役に立つか立たないかはまた別として。
「そうそう、おやつを食べた後に、ヒツジの子が怒ってたので、モナちゃんはヒツジの子の毛をすいてあげて、お手入れしてあげていましたよ。」
ヒツジと言うと期待ヒツジのタイモちゃんのことだろう。
この数日騒ぎのせいで放置気味だった。悲しいかなモナちゃんは忙しかった。
神殿でぶっ倒れて起きたと思ったらどこかに飛ぶし、戻ってきたら土まみれのデカいクマと一緒だし、気づけば作戦の要について、特殊なスキルや魔法を使って、将来有望な子供として見られるまでになっている。←イマココ
まあつまり、タイモちゃんはモナちゃんにほぼ会えない状態になっていたのである。
タイモちゃん自身もなぜかわかっていたようで、数日だからと少し諦めていたようでもあった。
で、かわりにタイモちゃんはハジーがお手入れをしてくれていた。ただし、ハジーは丁寧に毛をすいてくれていたけれど 本当の本当の本当に、誰よりも 丁寧だったけれど気が休まらないのか残念ながら、あまり嬉しそうではなかった。
毛をすいてほしい相手がいる時はそれ以外の相手だとストレスの軽減率が低いのかもしれない。
しかし お手入れ自体をしないとストレスが溜まりすぎて死んでしまう可能性が高くなってしまうので人間の手でお手入れをしないといけない 。たとえそれが好き好んだ相手でなくても命に関わる。
期待ヒツジというのは自分の体のお手入れをする人間との信頼関係に飢えている、特殊なモンスターなのだ。
少し会話が途切れた時も完全に無音な空間になること残念ながらなかった。
音の先はミギィである。
ミギィは一心不乱に今日の夜ご飯のためのキッシュの器の部分を作っているようだ。キッシュの器の部分は簡単だ。クッキーを作る時の生地の砂糖なしで混ぜ込めばいい。
少し硬めの生地はボックスクッキーを作れるくらいの硬さだ。そしてその生地は厚さ3ミリぐらいの生地に伸ばされる。ミギィはめん棒を駆使して広げていく。
陶器の大きめの器ひとつと、陶器の小さめの器9つほど、計10もの器の上に伸ばした生地を乗せ丁寧に形を整えていく。
この後キッシュの生地だけ先に重しを中に入れて、から焼きをする。焼いたら後で入れる具材が生地に染み込みにくくするために卵液を塗る。ほのかな焼き残りの温かさで卵液は固まるだろう。
キッシュを夜に焼いておけば明日の朝ご飯の代わりにもなる。あまり長期に日持ちするものではないけれど、まあ前日の夜 の分を朝に持ち越す分くらいは特に腐ったりはしないので 栄養価もあるし、とミギィの好きなメニューであるので手際がいい。
具材はハジーに手伝わせたので、生地が冷めたら具材をいれ、具材用の卵液を作って具材の上から流し入れて、もう一度焼けば、完成だ。と、いつもの工程をレフティは思い起こしていたけれど、まだ生地のから焼き段階までいっていない。
レフティもミギィの手作りのキッシュは好物なので思い出して気がせってしまっていた。
まあつまり、ガタンゴトンと調理台はそこそこうるさいが、他の面々がほとんどの作業が終わっているので、ミギィだけみんなに見つめられる図になってしまっていた。
それに気づいたミギィがようやく視線に気づいたのか顔を上げて1言言う。
「もっと作ったら持って帰るか?」
「あ、ごめんなさいねぇ?物欲しそうに見ていたわけじゃあ無いんです」
ついつい見てしまっただけなので即座にスミコットは訂正した。まあ今作ってるのはテッパンだからな。ベーコンとほうれん草のやつだ。
「集会といえば、モンスターたちの方の集会の方は集まりはもうないんかね」
「そうだね。そっちの方はクマのおばあちゃんに聞いて見ないことには分からないべ」
「なんて名前だったっけか」
「デボラさんだ」
そうだったそういう名前だったな〜と。言っていると、キッシュの器をオーブンに入れようと屈んでいたミギィの動きがとまった。
「・・・ん?」
「どうしました?」
ミギィが従業員出口の方に向くのをスミコットが不思議そうに見つめたところを、レフティが補足した。
「大丈夫、お客さんだべ」
そう言ったほぼ直後に従業員出口からノック音がコココンと鳴った。
レフティの言葉に安堵したのか音の先の確認などすることもなく、ミギィは止めた動きを再開した。
レフティはミギィがなぜ止まったのか見当がついていた。
ホッとしているミギィをまた固めてもいけないし、お客さんが先だからミギィは一旦ほっといて、レフティは従業員出口に向かった。
「すみません、こんにちわー、どなたかいらっしゃいますかー」
「はいはいはいはい、ったく、こっちは色々忙しいんだよ」
聞き覚えのある声がドア越しに聞こえたから、レフティはああアイツかと、当たりをつけてドアを開きながらお客さんに対しての対応とは少し違うとっても雑・極まりない返事を返した。
「ははは、お忙しい所にすみません。」
居たのはプントだ。
「ん?1人かい?」
「いやいや、アナタね、ディオ様かアンドレ様が一緒にいらっしゃるなら、さっきの返事はダメでしょう。」
プントもわかっていて返した。
「いやまあ気配でなんとなく分かっちゃいたけど、裏手に数分でウチだもんでね、誰かそっちに向かったとかすぐいいそうだべ?」
「そんな不躾なこといたしませんよ」
プントがしないことは百も承知だが、子供のすることだから例外なんてすぐに湧き出る。
レフティはモナに出会ってから、子供の動きは予測不能でモンスターよりも厄介だと昔からわかっていたけれど、今更ながら改めて思っていたからだ。
特にアンドレ様は多分レフティからすると、モナよりも予測不能とも言える。
庶民生まれなレフティはお貴族様の思考がいまいちわからないと、そう思っているからだ。
「んでどうしたべ?今日は店は明日の準備しかしてねぇよ?あ、茶くらいは出すけど、どうする?」
込み入った話なら中に入って聞こうかと思っていたらプントからすぐに答えが返ってきた。
「ああいえ、すぐに立ち去るので今日は大丈夫ですよ。次来た時はまた、アンドレ様とお客として来訪させていただきますから。その時お茶もよろしくお願いしますね。」
「んで、どした?」
「延びていた出立が明日になりましたのでご報告だけでもと。」
プントが3通の手紙を出した。
「こちらがディオ様からレフティさん、ミギィさん達に宛てた1通で、こちらの2通はモナさん宛てにディオ様からとアンドレ様がそれぞれお書きになったお手紙になります。中身を検分してもいいように、封蝋は致しておりません。」
3通とも封筒自体が違うからわかりやすい。
保護者に当てたという封筒はいかにも豪華絢爛と言ったような模様が封筒に描かれていて封蝋なんてなくても手にとって汚したくないと言いたくなりそうな封筒だ。
モナに宛てたという封筒はそれからグレードを幾分か抑えた大人しめの封筒だけれど、白を基調として軽く花の絵柄が大人しめにはいっているいかにも女の子が好きそうな封筒と、いかにも男の子が好きそうな青地のシンプルな封筒があった。
誰が、と説明されなくてもわかりやすい封筒に、レフティは苦笑いするしか無い。アンドレ様はまだ子供だから送り相手に向けての封筒選びとか分からないんだろうなとは思うけれど、それにしてもディオ様は気を使いすぎでは無いだろうかと思ってしまう。
(んだっけ、たっかそうな手紙だべ・・・うっわぁ)
大体庶民にご立派な手紙は基本的に来ない。ほとんどメッセージカードサイズに字を細かく書いて、紙代とインク代を高くつかせないようにするのがほとんどだ。
今プントが持っている3通の手紙だけで、もしかしたらさっきのミギィの手作りのデカいキッシュワンホールが買えてしまう、いや、保護者宛ての手紙1枚でワンホール分3つぐらいの値段になりそうだな。とかレフティは予想して呆れたくなる。
気にしたら負けである。とか、思いを馳せていたら全ての手紙をひとまとめにして、プントはレフティに手渡した。
「本当は挨拶に伺うようにと私も申したのですが、期日をかなり延ばして滞在してしまっていますので、こちらでご容赦をと。」
「まあ、仕方ないべ。モナちゃんは悲しがるかもしんないが。」
「アンドレ様が聞き分けているうちにというのもあります」
「納得だ。」
いや、むしろ、アンドレ様の対策での手紙のみだった。来てたらやっぱり王都に帰りたくない!と、言いそうだ。
こっちはいくらでもこの街に滞在してもらっても構わない。むしろ滞在してもらったほうがお金を落とすので街は少しながらも潤うだろうし、今回の2つの事件での領主様との行動が庶民としても色々助かった部分がある。
いなくても困りはしないが、いると力になってくれる存在は大きい。が、とっくに帰還の準備は済んでいたはずだったから、ズルズルと滞在日程を延ばすとそれはそれで荷解きとか荷戻しとか面倒そうなのは容易に想像できた。
「まあ、また客として来てくれればええべ。」
「ふふふ、では私はこれにて。」
「おもてなしできんくて悪かったな。」
「いいえ〜」
プントは手紙を渡しに来ただけだったようでさっさと帰っていった。
「あれ?なんだ、そこに突っ立って。」
「あ?」
プントの後ろ姿を少しだけ見ていたら、他の訪問者が来たようだった。千客万来?また聞き覚えのアル声にドスを効かせたくなるレフティ。
もちろん訪問者といえばこの人、でっかいクマこと、ユーグリッドだ。
「あ?じゃねえよ。あ?じゃ。見回りで少し寄ったんだよ。こっちはなんもねえか?」
騎士団副長はまだ休み少なく働いているようだ。
すみません。ここまで書きたい!と、思っていたところまでが長ーーーくなってしまって切りどころがわからなくなって、1日ズレました。
んで、長くなってますがまだ大人のターンは次回も続きます。
キッシュは簡単ですよ。クッキーとシチューが作れる人間なら作れるはずです。お料理好きな人はレッツトライ!
セリアとかの100均の封筒とか凝っていて大好きです。たくさん集めたくなりません?可愛いのいっぱいあるよね。
次回の更新は13日の予定です。
ビャッコ「と、いうことは14日が濃厚か」
次回の更新は13日の予定です。
_(:3」 ∠)_