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第399話

1日遅れてすみません。


またもや主人公のモナのいない回です。

モナがともだち食堂でイキイキと仕事に(いそ)しむ(かたわ)らで、前日のネズミ駆除の為の騎士団のテントではなく、ロッテリーの街の端にある騎士団の本基地の砦である建物の地下施設では、臨時用の収容施設があった。


言うなれば、“留置所”という場所である。


そこには面会に来ていた人間がいた。


「お前ら、いい加減にしろよ!俺達がどれだけ心配したと思ってるんだ」


「・・・」

「・・・」


収容されているのはヒイカとシャケノミー。そして面会に来ているのはその冒険者仲間の面々だった。そう、そこに居たのは、冒険者パーティー森林の首飾りのメンバー達だった。


面会と言ってもそれぞれ個室のような場所にひとりひとり収容されていて、さらには特殊な合金を混ぜ込んだ壁が彼らを阻んでいる。


牢屋とも言えるし、悪党に言わせれば見世物小屋だとも言われたことのある収容施設内は、今回関わった何かと容疑のかかった者たちが所狭しと収容されていた。


所狭しと収容されては居たけれど、面会などに来るような人間はあまり居るものではなかったので、森林の首飾りのメンバー達のような行動は逆に物珍しいのか、周りの者達に見守られるような形になってしまっている。


そんな微妙な空気感の中では、何もかもが筒抜け。外にいるメンバー達に言えることなど無いとだんまりを決め込んでしまうのも実のところ致し方ないのだけれど、ヒイカとシャケノミーの事を心配していたメンバー達はついつい声を荒げてしまう。


負のスパイラルが出来てしまっていた。パーティーリーダーのマジーニは自分が“メンバーの動向をキチンと見ていなかった”、“話をもっとしていれば良かった”と、気持ちを高ぶらせていた。まるで2人のオカンかのように。


「むきぃーー!」


「いやいやいや、マジーニ。落ち着いて。どうどう。マジーニが精神的に疲れて壊れた」


「と、まあ、マジーニはユウージオに任せておいて・・・。お前ら、答えなくていい。今の現状がどうなっているかだけ今から言うから聞くだけ聞いてくれ。」


と、仲間のひとりのシヨヒトオが語りだした。


内容としては“冒険者の2人が自分達で事件を起こし、それをわざと助ける側に見えるように画策した”というような、いわゆる“マッチポンプ”をやり、この街の領主を混乱せしめたというような、犯人として疑われているという状況なのだという。


それを聞いてもやはり2人は1言も発しなかった。


「領主様は、おふたりを助けたいと、騎士団に訴えているそうです。あと・・・」


「そろそろ面会終了のお時間です」


「はい。・・・あと、おふたりの大事な人達は無事であると確認されました。安心してください。」


面会時間が終わってしまい、メンバー達は地下施設から去っていった。今まで不思議と静まりかえっていたそこはあっという間に小うるさい場所になった。


みんな聞き耳をそばだてるのを止めて思い思いに喋りだしたのだろう。


ただ2人だけはその小うるささに救われた。自分が不甲斐なく悔しく思うことを悟られなかったから。











同じ砦内では朝も早くから、まだ終わっていない聞き取り調書やらの続きのためにアンドレやディオは呼ばれていて1室に待機させられているところだった。


部屋にいるのはディオ、アンドレ、チェルキョだけ。ハトのタイインは「主が軟化しているこの隙にずっとおそばに!」とか変態じみてきたことを口端っていたのでリネアが力尽くで抑え込んで館で待機してくれている。


まあ、砦はペットの類は入室禁止がほとんど。来たところで大人しくしなければならない。



主張が激しくとにかく存在がうるさいハトはNG以外の何者でもない。


「早馬で頼んだ。とりあえず1週間ですよ?って言ってもこの出発の遅れた今日の3日間合わせて、あと4日だけですよ。プントさんにも昨日こってり絞られたでしょう?」


ディオの護衛であり友人であるチェルキョがまたぐちぐちとディオにこぼしていた。ディオは騎士団に何通かの手紙を城へ送り届けてもらった。


状況がコロコロと毎日変わってしまうので逐一全てを書くことは出来るはずもないけれど、帰る旨が遅くなることくらいはどうにかなる。


「お兄様・・・」


隣に座っているアンドレはディオの顔を見上げていた。見上げるその顔は不安げのようにも見える。そんな顔で見上げられてしまうと、今この場にいること自体申し訳なく、罪悪感をかき立てられる。


前日もそうだけれど8歳という子供が大人に囲まれ続ける。大人でも疲れるのに子供はもっと疲れるはず。不安になるのは最もだと思う。


「アンドレが悪い訳では無いよ。そんなに眉尻を下げて落ち込むことはない。」


「いいえ!いいえ、お兄様!俺は落ち込んでなんていません。」


「ん?」


否定された。


「言うのをためらっていましたが、言います。4日後と言わず、お兄様はお帰りになってください!」


「えっ」


なぜか否定+拒絶に見えた。ディオは一時停止した。


「アンドレ様、どうしました?ディオ様が固まってしまいましたよ?」


「あああ、ち、違うんです!お兄様!えっと・・・元々は俺が祭りに行きたいってわがままを言って滞在を延ばしてもらった。お兄様は俺のわがままに付き合ってくださいました。でもやっぱりお兄様は今回このロッテリーに来たのはお仕事です。でも俺は療養目的で来ました。」


「そうですね」


「うん?で?」


「ですから!俺はまだ子供なのでまだまだわがままを行使します。ココに残ります。だって、事件があったから療養に来たけどもっと疲れてしまったからです!」


キリッとしながらアンドレなりの子供ならではのとんでも主張が始まった。とはいえ、どう見ても可愛い主張である。


「俺は、ココで、初めて同じぐらいの年の子供と遊びました。でもまだまだ足りません。王都に帰りたくありません。だって、まだ遊び足りないからです。」


そうは言っているが、とても楽しみにしているような発言とは思えないほど真面目に真剣に語っている。


「それにそれに、その、そのともだちが倒れました。俺はよく具合悪くなったけど、気絶なんてしたことありません。でも、モナが倒れた所を見てしまいました。だから、だから、気に・・・なるんです。」


「でもね、」


「それに!!神殿で俺、力が湧き上がったじゃないですか!変なハトもいるし、あとリネアもいます!モナの所のレフティさんとミギィさんはなんだかよくわからないけど、とっても凄そうな感じがするからモナと一緒にいればきっと大丈夫だとおもいます。」


否定させる前にまくし立てた。


「俺、ロッテリーでお兄様が帰って来るの待っています。行ってきてください。」


お留守番出来ます!ということらしい。ぐっと握りしめるコブシも可愛らしく見える。つまり、ホッコリ。


この街に来て、アンドレは何かといい方向に成長したように見える。ココで頭ごなしに押さえつけてはせっかく出た芽を潰すのも違う。


しかし大事な弟を残していくのもは踏ん切りがつくほど、ディオも大人ではない。彼もまだ若い。


「皆様、お待たせ致しました」


考え事をしていたら騎士団の人間が来てしまった。ということで伝家の宝刀“後回し”である。


「アンドレ?申し訳ないけれど、この話はまた後でしよう。」


「ぬぬぬ・・・。わかりました、お兄様。」


チェルキョにはわかる。どう引き延ばしたってディオに勝てる見込みなど無い。と。そして思う。


(アンドレ様がもし滞在を延ばすのであれば、せっかくまとめた荷を解き直さないといけないのは俺かもしれない) 


現実逃避にもならないけれど、少し遠くを見つめたくなったチェルキョだった。

チェルキョは見た目が銀さんに似た残念属性です。


名言は「親に貰った大事な名ぁ!」だと思っています。(by作者)



明日も更新します。いや、頑張って今日中・・・やっぱり明日かな。(気合だけ空回り)

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