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第381話

「どうなっているんデスか!!」


ダンジョンと変化したはずの地下施設から続々とネズミが飛び出して騎士団達に葬られるという謎の展開に憤っている者がいた。


憤っているのは、昨晩、メイドのリネアが見えなかった人物である。正確に言えば元、人間なので人物と言っていいのか測りかねるところではあるが、そこは大した問題ではない。


彼もモンスターである。ただし、人間の皮を被ったゾンビという状態。片方の目はくぼんで今にも落ちそうだし、口は半分皮膚が無くなって歯が剥き出し。


体だけは高級そうな死に装束を身にまとっているため、見た目だけなら司祭のようにも見えなくはない。しかし彼は司祭だったこともないし、過去のことは記憶に残っていない。


モンスターとして生まれたときにはもうモンスターとして生まれ変わったのだとしか記憶にないのだ。


彼が元々何者だったのかも、彼自身知らないし、どうでもいいし、知りたいと思ったこともなかった。


しかし、実はそれこそが今回の作戦の失敗の元になっているなど、このゾンビモンスターの彼は思いもしなかった。


「どうシテ!」


モナが1度死んでしまった元のこの世界では、実はこの作戦は成功していた。小熊のトウシャが攫われ、騎士団副長のユーグリッドが姿を消し、その後祭りは普通に行われ、その数日後にこの騒ぎが起きるはずだった。


しかし何の因果かこの騒ぎは数日遡りこの祭り当日に起きた。そう、騎士団員が揃い踏みな上、色々な人間の色々な思いが入り混じっている特殊な状況が起きている、そんな日にこのネズミ騒ぎが起きているのだ。


「そんな事言われてもだな。怒りたいのはこっちだぞ。眷属達が一気に減ったんだ。お前の作戦の失敗のせいだ。」


彼らは近くで騎士団の面々が穴から出てくるネズミモンスターを駆逐しているのが見える範囲で口論していた。しかし、騎士団の面々は気づかない。


ゾンビモンスターの特殊能力によって声も姿も見えないようにしてあったからだ。昨晩も、というか、基本的に仲間にはずっと、そのスキルをある一定範囲内に入ればソレが適用されるようになっていた。


本来昨晩も声も姿も誰にも聞こえも見えもしないはずだった。リネアだけが見えていた。リネアも気づいていなかった本人だけの能力に目覚めていた。たまたまその能力とその場がかち合っただけだった。


だからその範囲内にいるゾンビモンスターとネズミモンスターは大声でわめき散らしていた。


互いに互いをけなしあって、作戦の失敗はどちらのせいだと失敗の原因を押し付けあっている。それを間近で見ていたデカいサルと人間の男、ナエは呆れながら会話をしていた。


「キモの小さいヤツラ。私イッタン引く。ニゲル。キサマも好きにしたほうがミのため」


「そんな!行かないでくださいよ。俺はどうしたら良いんですか。アナタ達の手足には簡単になりますが、俺はそういう策略とか出来ないんです。あ、そ、そうだ!どこへでも連れて行ってください!俺なんでもしますから、このキングヴァギアンの国からこのロッテリーの街までの全ての人間を根絶やしにしてくれるって、信じてついてきたので、ソレが見れるまではアナタ達の手下です!俺は何でもしますから!へへへ」


「手下、イッパイ。イルカラ、いらない」


「そこをなんとか!!」


「・・・・」


土下座に近い状態でデカいサルは地面に額を擦り付ける人間を見て呆れていた。人間とはここまで愚かで下等な種族なのかと。しかし、見える範囲で戦っている騎士団と呼ばれる同じ人間達にはここまで下等な種族には見えない。


「私、オマエ、いらない。デモ、そうだな。トカゲかウシで良ければ、ハナシヲ通してやろう。」


「本当ですか!!」


「マッテイラレルのなら」


「待つ、待ちます!でも、どこで?」


「信用シテル、サイキョウとタイサイと連絡トレない。あの目の前のふたりのドチラカトいれば、そのうち。」


サルの指さすふたりとは目の前で罵詈雑言吐いてるネズミとゾンビのことだった。不安しか無い。


「さ、サイセツ様・・・あのふたりじゃなきゃだめですか?」


「マテ」


「・・・・はい。選択肢は俺にはないですよね。わかりました。」


ナエが渋々と言った感じで諦めると、ゴリラのような大きなサルのサイセツと呼ばれた存在は、どこかへ去っていった。


まだ目の前で争っている。争いが止まないと、居なくなったサイセツのことについて話すことは出来ない。


作戦のひとつは潰えたけれど、領主を殺すという作戦はまだ進行中だったはずだし、火山うさぎや洗脳して戦力にできそうな近場で拐えたモンスターの調教もこれからしなくてはいけない仕事のひとつがある。


「連絡をまつ、連絡をまつ、連絡をまつ・・・ええと、ウシとトカゲって言ってたっけ。名前なんて言ったっけな。」


ナエは彼らは神の眷属だと聞いていた。この地が汚れているからこの地を作り変える仕事を手伝っているという。ナエは復讐心も満たされる上、神の手伝いもできるこの新しい仕事が好きになっていた。


本当に神がいるかなんてどうでもいいけれど、大義名分が勝手に転がってきてくれたのだ。楽しくすがりついて何が悪い。


「そうだった、そういや、神殿に全部像があったな。ええと、ウシ・オウバン、イノシシ・サイキョウ、サル・サイセツ、ヘビ・サイハ、トカゲ・ダイオン、フクロウ・タイサイ、ウマ・タイショウグン、ネズミ・ビョウビ。だったよな?昔はよく、デートして名前当てゲームとかしたっけな」


元奥さんだったミギィの事を思い出す。


今回の失敗の原因のひとつにミギィの近くにいた女の子が騎士団達が戦うその場にちらりと見えたのが引っかかった。レフティもいたように見えたけれど、まあアイツは戦えるからわかる。けれど、あの子供は何をしていたのだろう。


「ビョウビ様、ゲーリー様、そろそろ落ち着いてください」


今更だけれど、ゾンビのゲーリーは誰かに似ている気がする。誰だっけ。と、ナエは考えるけれど、この街を離れて久しかったナエは思い出すことも出来なかった。











ゴールデンハムスターのゲンブは驚いていた。探していた“学者先生”を見つけたのだ。大粒の涙をぼろぼろと流しながら突撃した。辺りはなんだかめちゃくちゃ臭い匂いが立ち込めていたが構わなかった。


「会いたかったぞぉぉぉ!学者先生ぇぇぇ!!!!」


「うわっなに!?」


「きゃあ!?どうしたのダーリン!?」


突撃したのに受け止めてもらえなかったゲンブは痛みが切なかったけれど、会えた嬉しさでどうでもよかった。


「学者先生!私だ!ゴールデンファムストファーのゲンブだ!」


「え?いや、知りませんけど??」


「何を言ってる、20年前の事は謝るから許してく・・・」


「ゲイリーはその頃子供よ?学者先生はきっと別の人だと思うわ」


横にいた女性がバッサリと切り捨てた。


「そうだよ。マリーも私もこの街に移り住んだのはミリーが生まれる前だから7年より前にはこの街にはいなかったよ?勘違いだね、小さいモンスターくん」


「な、なんだ、と!?」


「もうそんなに経つのね、ダーリン」


「時が経つのは早いよハニー」


ラブラブな夫婦、そこにいたのはマッドサイエンティスト的な街医者夫婦のマリー・ゲイリー夫婦だった。


「そ、そんなことはない!!そっくりだぞ!!」


夫婦は朝もはよから、ラブラブしながら薬の調合に勤しんでいた為に辺りは独特な匂いが立ち込めていたので、普通の動物も、普通ならモンスターも近寄らないぐらいの場所だった。


ゲンブは夢に見たのだ。この街に戻ってくれば学者先生に会えると。


ゲンブは知らなかったのだ。


20年前の学者先生も実は学者先生では無い別の人物だった。学者先生はとうの昔に死んでいた。それを知っていて、悲しませたくないと思った人が、ゲンブに優しい嘘をついていたということを。


ゲンブは目の前の男が学者先生だと確信づくほどゲイリーという男は、学者先生にそっくりだった。


「名前だって同じじゃないか!ゲーリーなんだろう!名前が好きじゃないからこう呼べって言ってただろう学者センセー!!」


「あ、多分それ、祖父ですね」


「「えっ」」


マリーもゲンブと共に驚いたのだった。


ゾンビさん、実は新キャラとかじゃなかったんだよ〜。学者先生だったんだよ〜。死んでいたんだよ〜。「デス!(死)デス。(死)」


ゲーリー「そういうデスだったんデス!?」


ビャッコ「あわれだにゃ」






2024年は色々ありました。来年もよろしくお願いします。


次回はちょっと間が空いちゃって申し訳ないんですが、1月10日予定になります。


良いお年を〜〜!

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