第379話
ロッテリーの祭り会場だったどこかの林から声がした。辺りはシンと静まり返っていたものだから、その荒げる声はよく聞こえてしまった。
聞こえてしまったら、気になってしまう。そこに居合わせてしまった人間はひっそりとそちらを伺った。
「どうして応えてくれない!?なぜなんだ!」
地面の方から荒げる声が聞こえると思ったら、体躯が大きく少し気持ち悪い色合いのドブネズミが叫んでいたようだった。
人の言葉を喋るネズミに驚いて声を上げそうになったけれど、どうにか気を落ち着かせた。
「オチツケ」
ネズミの近くにはこれまた大きめのサルがいた。そいつはネズミと違って冷静そうだった。そしてコイツも人の言葉を喋っている。
「もっと作戦がうまくいっていれば応えてくれたんじゃないのか?」
それを発したのは明らかに人間の老齢に片足突っ込んだような男だった。
「なんだと!?それを言うのならオマエラみんながフヌケでマヌケで手伝いもデキないボンクラだからだってことか!ハハハ!いい加減にしろよ?私はやるだけやった。総動員したんだぞ!」
ネズミは自分は悪くないと主張している。
「そうデスね。みなサン、ヤッてくれてますデスね。」
どこからともなく声が響いた。前から声がするはずなのに、後ろからも聞こえるような錯覚を起こすような感覚のそういう変な声だった。
「いいデスか。女神サマは今はネムっているのかもデスね。女神サマは言ってましたデスね。『人間は少なくて良い。モンスターの楽園をココに作ろう』とネ。」
その声の先には人間らしきシルエットが見えるのになぜか顔が一切見えない。黒い装束などで身を包んでいるようには見えないのに、その独特なしゃべり方をするその者の顔がなぜか見えない。意識しようとすればするほど見えない。
「あの2人はドウしてますカ?」
「あの2人ってどいつのことだ?」
人間の男が疑問を口にした。
「あの2人は領主を殺すか、もしくは領主を使って場を混乱させるために私らの元に連れてくる算段だったと記憶しているが?」
「おい、だからあの2人って誰だよ」と人間は言っているがお構い無しにネズミ達の会話は勝手に進行されていっていた。
「フクロウのアイツとレンラク取れたらラク。ナゼ、デキない?」
サルは疑問を口にした。
「ソレはまた奇妙デスね。オカシナ話デスね。うん、オカシい。」
何かに怒っているような声に聞こえる。
「無視するなよ」と人間は言っているがさっぱり相手にされていないようだ。あのとても変な声に臆すること無く話せる胆力はちょっと彼もオカシイ部類なんだろうと思う。
あの声はとても変だ。まるで、幽霊・・・・
そう思った時、その黒い物体のような人間のようなシルエットの目元と思われる部分が赤く光った。
とっさに隠れた。見つかったと思ったのだ。心臓が鼓動を速める。
「キノセイ、デスかね?」
早鐘を打ち鳴らしている心臓が落ち着く頃にはその赤い目の持ち主もこちらの事は気の所為だったと思ったのかそれ以上見てくることはなさそうだった。
というか、こちらももうあちらを見ることは止めた。さすがに危険だと判断したのだ。
そして、いち早くココを離れてこれを聞いていた人間の主に話さなくてはと、更に息を潜めた。
気を抜いて見つかるようなことがあってはいけない。
メイド姿のリネアは、騎士団の報告で館からアンドレ達の元へ向かっている途中だった。
幸いにも館を出る前にディナーを沢山平らげて来たから安心だ。潜んでいる時にお腹が鳴ることはないだろう。
そことはそこまで離れていない、とある洞窟近くで3人の男は会話していた。
「申し訳ない」
冒険者のヒイカは領主に頭を下げていた。
「おいおい、頭なんか下げんなよ。俺らは今やお尋ねものだぜ?それにコイツ結局は殺さなきゃいけないんだろう?」
シャケノミーは情け無用と切り捨てやすいように心無い言葉をかける。
「ころ!?そうなのか、君!?」
人の良さそうなぽやっとした領主は混乱していた。
もっとつつけばパニックになって暴れそうな雰囲気もあるが、今のところただガタガタと震えすぎててなんかもうそういうマッサージチェア人間ですよと言われたらそうなのかと納得しそうなくらい震えていた。
震えすぎではないだろうか。
「自分の身がかわいいから震えなんてするんだ」
「ふ、震えが止められるもんなら止めてますけど!?」
領主も半ばヤケクソ気味だ。なんでか本人も止められ無いらしい。
「俺達、実は変な奴らに脅されてて」
「えっ!?そうなのかい!?」
領主はそれを聞くやいなや震えが止まった。
「いや、それ、わざとだろ!」
シャケノミーがツッコミを入れたが2人はスルーした。
「ど、どういうことか説明してくれないかな?私は、死にたくは無いけれど、君達には護衛としてお世話になったし、なにか私の薄っぺらい知識が君達の役に立つものが出てくるかもしれない。」
「あいつらに言った事も1部は事実なんだよ。でも全部じゃねー」
「昔の事を掘り返した上で、人質と俺らの人権とをネタに、俺らは今無理やり働かせられてるってわけなんだ。」
「君らは冒険者じゃないか!腕っぷしも魔法も何もかも凄いじゃないか!倒すことは出来なかったのかい!?」
「それが無理なんです」
ヒイカがそう言うと、シャケノミーは証拠を見せるかのように、シャケノミーの額にいつも巻かれていた土木業者がよくつけているようなヘアバンド巻きのバンダナのような薄い布地を取り払った。
そこには何かの術式なのかまるで呪のようなソレが露わになった。それをトンと指でつつきながらシャケノミーが言う。
「あいつらに攻撃が出来ねぇ。俺らの仲間にも、もしコイツをつけられたら全員があいつらの仲間にさせられちまう。俺達、あんたが言うように冒険者としての腕っぷしはいいほうだからな。」
「会話や俺達の意思にまでは干渉してこないようなのですが、俺達があまりにも違う行動を取りすぎるとわかるようで、俺の恋人やシャケノミーの王都にいる友人、そして俺達は一斉に心臓を鷲掴みにされるような強烈な痛みに悶絶させられます」
「な、なんだと。そんなことって、あり得るのか?聞いたこともないぞ?」
「そこでアンタなんだよ、領主様」
「え?」
「こんな事を頼むべきで無いのはわかっています。護衛対象の人に命をかけさせるのも間違っていますが、シャケノミーと相談して考えたんです」
「ま、まさか」
「俺達の作戦にのってください」
「ひえええええええ」
領主はまたブルブルとバイブレーションしたけれど、言うだけ言った2人は落ち着くのを待つしか無いのだった。
コタツが天国です。あったかいです。死ぬほど眠くなりますね。
ビャッコ「俺様がキンキンに冷やしてにゃろうか?」
テンクウ「やめてあげて!」
フテゥーロ「それならお外に雪ふらせてほしーなー」
スズ「それ採用!スズも雪遊びする!」
ビャッコ「え、めんどい。」
テンクウ「出来ないんじゃないんだね?」
次回の更新は25日予定です。
チキン食べてケーキ食べて・・・。あっという間に今年が終わりそうですねえ(遠い目)