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第372話

最近予告の1日後になってしまう更新。作者の怠惰がすみません。


右側の頬は差し出すので、左は何もしないでください。ぶつのは片方だけでお願いします(急な頬差し出し)ビンタは嫌ヨ!(なんだこれ)



◆冒険者、森林の首飾り。メンバー全員男。


マジーニイヒート(リーダー)

シヨトヒオ

ユウージオ(テイマー)

シャケノミー

ヒイカ


メルト(ユウージオの鹿モンスター)



◆ロッテリーの領主


と、護衛1名



今回はこのメンバーでのお話です。

ハアハアハア・・・。何人もの息を切らす声が重なり合う。


「つっかれたぁ」


カスカスな声をひねり上げたのはマジーニイヒート。名前は長いのでマジーニと呼ばれる彼は冒険者“森林の首飾り”のリーダーだ。


辺りにいるのは彼のパーティーメンバー達と、本来一緒に居ないはずの領主とその護衛の1人だ。そう、本当はこの場にロッテリーのご領主様は居ないはずだった。


マジーニはもう辺りに危険が無さそうな事を確認しつつようやくと言った感じでその場で腰を落ち着けた。


「マジーニ、服汚れるぞ。」


仲間のユウージオから声がかかる。


「だめ、むり、休まないとやってられねぇー」


「わかるぅ〜」


同意しつつパーティーメンバーのシャケノミーまでその場でしゃがみ込んだ。それを見つつ比較的パーティーメンバーの中でもあまり疲れをみせていなかったシヨトヒオは疑問を口にした。


「ネズミの大量発生に領主様は関わっていると思っていいですか?」


「違う違う違う!私は何も知らないよ!!」


領主様は突然話を振られ一瞬止まったが、即座に否定を返した。森林の首飾りのメンバー達は以前見た炎を纏う鳥の記憶を頼りに、ロッテリーの街のマックドゥの森で名前の通り、冒険に勤しんでいた。


お祭りも好きだが、こういう人間が騒ぎ立てている時、モンスターも動く場合がある。あえてその賭けに出てみたのだ。そして、賭けに勝てそうだと思ったその矢先、大ハズレを引いてしまった。


なぜか現れた領主達とネズミモンスターの大量発生。


冒険はしたいが命を危険にかなぐり捨てたいわけではないし、安全マージンを取るために戦いやすそうな地形にメンバーは移動した。なぜか増えてしまった領主を守りながら。


今、疲れ果てた面々の周りには、放置し続けたら病原菌がわんさか溢れそうなネズミの死骸のオンパレードだ。


しかし、戦い続けた彼らの服も今やそれらの血や砂埃や、辺りの草木の残骸などで何とも言えない格好である。


今更、土が付こうが大差ないと思う面々は腰を下ろすのだ。


「本当ですか?ではなぜこんな場所にいたのですか?」


「そーだよー。なんで領主様いんだよー。びっくりしたぜ」


「す、すまない。ハハハ。そのぉ、色々と君らにはお世話になったからね。お祭りでお酒でも奢ろうかと思って、貴族の接待そこそこに抜け出して来たんだ。」


貴族の接待って、お前もおんなじ貴族やろがい!とは、多少思っても誰も口に出さなかった。


「いやぁまさか森に突っ込んで行くとは思わなくて、びっくりしたけれど、年甲斐もなくワクワクしてしまってね、私も冒険者に成った気分でついつい君達の後ろをつけてしまっていたんだ。いやぁ、それにしてもまさか、サル騒動のすぐ後に、次はネズミ騒ぎとは恐れ入ったよ」


なんだか笑えない空気がその場に漂った。


この領主様は前回の視察の時と違って護衛は最少人数の1人をつけただけ。


マジーニは毒づくつもりはなかったが、先日護衛任務もしていたその人に苦言した。


「サプライズだかなんだか知らないが、そんな心もとない護衛のみで歩き回られて間違って死なれでもした日には寝覚めが悪いったら無い。リーダーの俺にだけでも1言でいいから言っておいてくれないか。その方がこちらとしても助かる」


精神衛生的に。と、言いたかったが、そこは飲み込んだ。


「ああ、本当に申し訳なかったね。ごめんね、ヒイカくんとシャケノミーくんには話ていたからてっきり。」


「「「え?」」」


その言葉を聞いて、ヒイカとシャケノミー以外の森林の首飾りの3人は素っ頓狂な声を上げた。


「あ、時間指定とか話していなかったから今晩の話だと思ったんだね!思ったより、早く私が目的地についてしまったからなのかな?そうだよね、冒険者は冒険者で、色々あるだろうから・・・」


領主は勝手に1人で自身の想像の中の出来事に勝手に妄想して勝手に納得して、うんうんと自論展開自論解決という見ていて痛々しい事を行っていた。


領主の隣の護衛の人は少し呆れながら領主の周りのネズミの死骸などを片付けていた。ネズミがもし生きていたら呑気な領主の害になるかもしれないから、危機回避の一環としてやっていた。


森林の首飾りと違って領主様を守ることを念頭にした戦いをしていた護衛のその人は、森林の首飾りメンバーとは違って疲れ切ってはいなかったというのもあった。


しかし護衛はその行動をすぐさま後悔することになった。この世に絶対はない。


「かひゅっ」


領主の方から声とも言えない声が聞こえた。


「ハハハ。ダメですよー、領主様。」


いつもと同じような口調で、領主の背後に立ち、領主の首元にナイフを突きつけた、ヒイカがそこにいた。


ヒイカはさっきまで領主の間に護衛がいて、さらにシヨトヒオのその先に居たはずだった。


何をどうしたのか、護衛は護衛の役目を果たせていない事に驚き、領主とその後ろのヒイカを見るが、嘆き悲しむ時間など無い。


辺り全員が敵かと剣を構えるが、その辺りの空気までもがおかしい。


1人だけ歩く人間がいた。ヒイカと同じく領主から名前の出た、シャケノミーだった。


「あー、ヒイカ。ダメだろーがよ。こういう時はそういう行動は基本的に悪手過ぎるだろうが。やり過ごしてから逃げて、後日領主さんを暗殺なりすればよかっただろー?」


シャケノミーが冒険者というより賊のような思考を話した。仲間だった人間がおかしなことを言っている。そう感じた面々は開いた口がふさがらない。


何がどうなっているのか。


戦い終わって労るために撫でていたメルトと共に硬直しているユウージオ。


剣に手はかけているがヒイカの行動が不可解すぎて剣を向けられないマジーニ。


シヨトヒオは「あっ」と間抜けな声を発した。


「わかった。これもサプライズ?」


和むかと思われた空気は一向に冷えついたまま。そうこれはサプライズでも何でもない。


「君達、仲間割れか?」


護衛は言った。シャケノミーが返す。


「ま、似たようなもんだよ。」


「どうして」 


「どうしてもなにも、この街が廃れてしまったからね。この領主に変わってから、俺ら2人は副業がうまくいってないんだ。本当はみんなが他のことで、そう、例えば探索中とかで離れている時とかにこの人を殺して、仲間であるみんなにはアリバイ作りとして協力してもらおうかなぁって思ってたんだけれど。うーん、うまくいかなかったなぁ。まさか、大量のネズミが出没して領主様が出てきちゃうだなんて」


思いのほかヒイカがペラペラとしゃべり始めた。半ばヤケクソが感じられる。


「副業ってなんですか。ヒイカ、シャケノミー。・・・領主が変わってから?まさか、2人とも、前の糾弾された領主の裏金が動いていたっていう、どれかに手をつけていたんですか?」


この街をテイマーの街として栄えさせた前の領主は、モンスターを道具として扱うことをテイマーの第一としていた。


道具として扱うにあたっての多大な量の魔道具製作、及びこの街のテイマーの街としての発展をさせるための巨額の資金を色々な手を使って作り上げていた。


ある意味凄腕ではあった。


闇取引のオークションやらを開催し、違法ルートを独自に作り上げモンスター討伐武器の製造および販売をし、地下カジノを経営しさらにその景品などにモンスターの剥製や革モンスターの加工物品をつけることによって、裏から市場価値の底値をどんどんと引き上げさせていた。


人に興味を持たせ人を動かす事に長けていた人物ではあったが、ざんねんなことに人から受ける恨みを避けきれる人物ではなかった。


事業を大きく大きくすることは出来ても、大きく大きくした舵を取りきる己の技量を測りきれない半端者とも言えた。


キレイなハリボテを作った元領主は刑罰に処されて生きてはいない。


残念な事に、ヒイカとシャケノミーはその元領主の恩恵を昔、受けていた。大したことはない、ひとつの投資事業のようなことだった。


返ってくる金だったはずなのだけれど2人は運が無かった。


元領主が捕まった時、2人の金は流れが不透明過ぎて、追えるものではなかった。元領主ならば全貌を細かく戻せたかもしれないが、それはもうタラレバの話でしか無い。


元領主の不透明な金は、全て国に没収されてしまった。1銅貨たりとも戻っては来なかった。



次回もこの続きです


次回は12月2日予定です。



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