第367話
かくかくしかじか(異なる別の世界から来たってことを詳しく。最初迷子かもって言ってたのは嘘だよ的な?)
「ほあー、人生長ぁく生きとると、不思議なことに出会っても驚かなくなるなぁ。ふーん。ほーん。ったっけ、結局別の世界っつっても、文明が違うだけで人間は人間なんだべ?」
レフティさんが全然驚かな過ぎて逆に私がその事に驚いたよ。もう少し驚いて欲しかったような、なんかこう、肩透かし。
「え?うん。人間じゃない人間ってなんだろう?」
「モンスターみたいなん、とか、天使とか悪魔みたいな羽とか生えてる奴とかいるんか?」
「あー、えーと、そういうのはいないよ。というか、まず私の世界には魔法とかは空想上の産物で、モンスターも全くいないよ。」
「えっ、毎日の食事とか、まさか火打ち石でやっとるんだべか?風魔法とか使えないと髪乾かすのも時間かかるべ?タオルとクシだけじゃ大変だし、あ、扇か?子供んころそういやパタパタやってたべ!そうじゃろ?」
火打ち石っていつの時代の話ですか。原始時代ですか。あれ、この世界マッチもライターもなかったのかな。ろうそくはあるよね。え、火の魔法使えなかったら火打ち石なの??
ミギィさんもレフティさんも日常で魔法色々と駆使して使っているから、私一切不便なくここで暮らしていたから、今更な疑問だった。え?って、あとで聞き直そう。
日本だと、えっと。
「家電製品っていう電気を通した魔法とはまた別の便利道具で色々やってるから、火も、ガスとかIHとかで調理できるし、電子レンジっていう便利な金属の箱とかもあるし、髪を乾かすならドライヤーっていうものもあるんだ。だから魔法無くても全然便利な世の中だよ。」
「???がす?あいえいチ?でんシれんじ?どらいイヤー?よくわからんが、調理器具は気になるべ。もっと詳しく。」
「ってレフティさん、調理器具はあとでにしよう。調理器具の話を話始めたら次に進まないよ。」
「ん?なんか別世界から来たからって話だべ?いいじゃないか、もう少し聞きたいべ。」
「外に人待たせてるからね」
「待たせときゃいいべ」
「あとで!」
「はいはい。わぁかった!わぁかったから。なんか日に日にモナちゃんがミギィと似てきてる気がするべ・・・。んで、違う世界から来たからどうしたべ。」
かくかくしかじか(神様の頼み事を聞いてこっちに来たよ。でも紆余曲折あってうちに帰れなくなってる。子供の姿なのもその影響なんだ、とかね。)
「モナちゃん、本当に大人だっんべか?迂闊過ぎるだろう?騙されて身ぐるみ剥がされて、捨てられてあっという間に死んじまうやつだっているんだがら、気ぃつけないといかんべ」
「はい。すみません。」
気づいたらお説教を切々と受ける感じになっていた。おん。正座すればいいですか。そうですか。しなくていい?5歳の体傷がついたら可哀想?ありがとう、うん。べそべそ・・・。
「ん?ちょいまち?結局どうしてアタイに話す気になったんだべ?しかもこんな場所で。アタイにもミギィにも話す気になったってことは、別に今ここで聞かなくでも、この騒動が終わった後でミギィと2人揃ってから話しても遅くなかっだんでねぇか?」
「うん。それなんだけどね、ユーグリッドさんが、そのぉ」
かくかくしかじか(どうしても疑われた言葉を先に聞かせたくなかった。順番が大事だと思った。今更かもしれないけれど!ってこととか。)
「あんのクマぁ。ってすぐ外にいるがら、引っ掴んで謝らせるなりするか?アタイはユーグリッドを伸すことぁ出来るべ?やるか?」
のすって、ヤンキーかい。レフティさん、物騒です。
「まあでも、アイツが何言おうが、アタイはモナちゃんが言ったことならちゃあんと信じるべ。」
「それって、この小さい身体が庇護欲を駆り立てるから・・・」
「ガハハハ!最初はそっかもしれねぇけんど、どうだかな。今はわからんけんど、でも、そんだけじゃないべ。人間てのは小さい頃にはもう完成しとるべ。そうじゃないべ。アタイがモナちゃんという人間が好きになっちまったんだ。」
レフティさんらしい答えだった。
「あ、ありがとうございます。」
面と向かって、照れる。
幼女だから好きとかではなく、本質を好きだと言われることなんて普通はありえない。どんな会話すればそんな会話になるんだか。
こんな会話すればたどり着くんだよ。ふへぇ。
・・・・レフティさんも、今ここにいないミギィさんも、年齢イコール大人という見方をしていない人物なんだろう。
もし私が本当の5歳だったとしても、その態度を変えることはない。そういう凄い人たちなんだろうな。
10年後のあの未来の2人とはやはり少し違う。
私もそうだ。完全に人が変わるには、大きな出来事が心にも体にもかかってくるからこそ、だ。
だからこそ、私はこの人達に話しておきたいと思った。
思ったんだ。
うん。
時間はそんなにない。
色々とかくかくしかじかしたけれど、これは本当に最善の判断だったのだろうか。
“事実は小説よりも奇なり”とはよく言ったものだけれども、私のこの人生は、私のこの経験は、私のこの今までの行動は・・・・
小説寄りなのか
現実寄りなのか
それともそれよりももっと・・・?
「・・・・」
「モナちゃん?」
「えっとぉ、だからその。」
「どこまで話すべきか迷ってるのか?」
「・・・」
コクリと頷く。全部話すべきとは思うけれど、時間も足りないし、とそのあたりで迷っていた。
「モナちゃん、いいたかないんだげっどな、アタイはそのモナちゃんの真実ってやつぁ、全てをはなしてくれなぐでもええって思っでるんだべ」
えっ?
どういうことだろう?
「信頼してくれてるってのは有り難い。んだけどな、聞いても何も行動できない、行動なんてしないかもしれない。つまり、聞いて終わりになるかもしれないと言うことを念頭に置いて欲しいってことだな」
っあ?
私はいつの間にか、勝手に、本当に身勝手気ままに、レフティさんとミギィさんに全て話せば何もかも解決に導いて助けてくれるのでは?という期待が入っていた。そう、無意識に。
「んー?よっぐわっかんねぇんだけんどもさ、そりゃアタイも知りたい事とかあるし、色々話してぐれたらええなって思う時もあるよ?でんもな、全てを曝け出すだけが人間同士の付き合いじゃないべ?ん?いいか?嘘が身を助けることもあんだから、全部が全部真っ正直に喋ることだけが全てじゃないべ。ほら、例えばだよ、オッサンら3人いただろ?ヒゲ面コワモテなのとハゲ気味のイカレたヤツとハゲ気味のカタブツっぽそーなヤツ」
ああ、フレディマーキュリーみたいな顔の人とでんじゃらすじーさんみたいな人とおやじっちみたいな人の、あの3人のことだよね。
「あいつら、同じような時期に急に毛が生えてる位置が後退してきたんだけんど、あいつら3人とも”そんなに後退してねぇべ”ってアタイが言うと嘘とわかっていても嬉しいらしいんだべ」
なんの話だ。
「あいつらとくに、2人はもう後退どころか毛が危ういくせに“まだイケる!”って楽しそうに喋るんだべ。ムカついた時はあえて言葉でイジるようにしてんだけんども、イジるともーー、これでもかってぐらい落ち込んで、ほんっと面倒くさくてなぁ」
なんの話だ?
「自殺してやるぅ!って言い出す始末よ。」
そこまで!?
「あ、つまり『ウソも方便』ってことを言いたいってことですよね」
「それだ!そう!そういうことだべ!!」
はい。
ちょっと話が進まないので、ある程度話したらみんなをすぐに呼び戻そうと決意したモナだった。
最近お仕事忙しい。
がんばるぞい。
次回は17日予定