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第364話

テイマモナは悩んでいた。


目の前のクマの獣人は“私が何者か”と聞いてきている。


どこまで言うべきか。どこから言うべきか。3年分?ここに来てからの分?


でも。いや。しかし。


モナは思う。


だって、言うのなら。


そう思って脳裏に浮かぶのはこの5歳の姿になってから1番お世話になったあの2人の老齢の女性達の事。


そう、まず聞いて欲しい人は。


目の前のクマの獣人ではない。


だからこそ焦る。ええと。うーんと、どうしよう。断るにしても断り文句が思い浮かばない。もちろん素直に2人に先に言いたいと言うことは可能だ。


しかしながら、この状況でなければすんなりいっただろうが、今の状況を鑑みれば、怪しいやつが怪しい動きをしているとも、とれる。


いや、私がユーグリッドさん側だったら怪しんで逃げそうなところを監視する人を近くに置くくらいの措置をしてもいいかもと考えるかもしれない。


そう、私がユーグリッドさんに私の真相をはぐらかしてしまうだけで、ユーグリッドさんと私の間に大きな亀裂が生まれるのだ。


いわゆる、“「はい」か「イエス」かの2択”とかよく書かれるキャンセル不可避のそういうアレの場面という訳だ。


過去を思い出したから、ミギィさんとレフティさんには少しばかり顔を付き合わせるのが気まずい気持ちも無くはない。でも、この5歳の姿で出会ったあの2人に関しては、私が大人の姿で出会った2人とは別物なのだ。


あの2人はあの2人だけれど、まだあの2人にはなっていない2人なんだ。


あの2人は、今のこの世界のミギィとレフティに関しては、私の保護者なのだ。忘れてはいけない。


睨まれ、戦いを挑み、血にまみれた2人はこの世界にはまだ存在していない。心に余裕がある。2人の本質は今の私が見れているこちらが2人の本質なんだ。・・・たぶん。


「おい、聞いてるか?」


「あ、うん。えっと」


考え事をしてたら声をかけられてしまった。えっと、何考えてたっけ。頭が真っ白になる。


2人に話すのが先。うん、そうしたいな。


じっと見つめられている。最初に会った時と同じく、私はつい、この熊を怖いと思い始めてしまった。


怖い。顔が怖い。威圧感が怖い。はい、としなきゃいけないそんな感じが怖い。嘘でも信じているフリをしたほうがいい気がして怖い。自分の気持ちがぐちゃぐちゃで怖い。2人に会えなくて怖い。みんなに会えなくて怖い。怖いと思ってしまったことが怖い。


「モナちゃん?」


黙っていたら、テントの入り口から聞きたかった声がした。その姿を確認したとたん、私の目には大粒の涙がとめどなく溢れた。頬を涙の粒がぽとぽとと落ちていく。


「れふてぃさん、れふてぃさん、れふてぃさん」


下唇に力がはいって顎に梅干しみたいなシワができているだろう。眉間にシワが寄っているだろう。


顔はきっとぐしゃぐしゃだ。この5歳の体に気持ちが引っ張られているのかもしれない。


椅子から転げるように降りて駆け出した。足元に抱きついた。老齢なのに足の筋肉がもりもりしていてたくましい。あといつもなにかの料理の匂いが体からでている気がする。


その足元で私は大泣きしていた。


「ユーグリッドぉぉ!?!?モナちゃんに、なんかしたべ!?あぁん??」


「や!やってねぇえーーー!」







レフティさんがそこにいた。片付けに行ったはずのお皿をまだ持ったままクリストファーさんがレフティさんの後ろにいた。途中で出会ってここにすぐ案内してくれたらしい。


ユーグリッドさんのことが私の目線から見えないように抱っこしてくれている、レフティさん。般若のような顔になっているけど、さっきまでのユーグリッドさんよりなぜか全然怖いとは思えない。


「やってたべ」


「やってねぇ」


「んーーや、覇気だか威圧だか知らんが、こんなちっこい女の子に尋問と同じことしてたべ!?んじゃねぇと、だいぶ慣れたモナちゃんが今更ユーグリッドなんがに、泣くわけないべ!?」


「今更・・・。無意識に・・出していたかもしれないな・・・・・すまない。」


「もっとちゃぁんと謝りぃ!!!!」


「すいっ!!ません!!!でしたぁぁ!!!」


テント内の椅子机セットの真横で、砂の地面に額こすりつけて土下座状態でユーグリッドさんが謝っているようだった。


曲がりなりにもロッテリーの街の騎士団の副長のひとりなのだ。弱い訳では無い。詳しくは分からないけれど、私は威圧みたいなものにあてられてしまったと判断された。そうなのかな?そうかもしれない。そういうことにしておこう(丸投げ)


「んっでも、本当にモナちゃんが見つかって良かったぁ。かなりあちこち探したんだべ?こったらところに居たなんて盲点だったなぁ」


ん?私がここに居るって知って来たとかじゃないの??


「はは、ババア当てずっぽうで探してたのかよ。年だな。」


レフティさんの睨み!ギャンッ!ユーグリッドさんに50ダメージ。ドゥルルルル〜〜。


「途中で人の匂いが多くなり過ぎてコウチンじゃあ難しかったみたいだから、カメーリャの道具ここにないかと借りに来たところでね。偶然だし、運命だ。」


よく見るとテントの入り口に犬っぽい影と人間の子供っぽいシルエットが見える。犬っぽいのは今言っていたオオカミのコウチンさんのことだろう。テンクウちゃんはゴールデンレトリバーみたいなシルエットだ。耳がピンと立ったシルエットで犬っぽい知り合いはコウチンさん1択である。


レフティさん、一人での行動じゃなかったんだね。というかその影の子供はだれだろう?シルエットから見てどう見てもアンドレではない。むしろもうちょっとだけ体は大きい。


なんかどこかで見たことあるような。


私が泣き止んでそちらを気にしだしたから丁度いいとレフティさんはそちらに向かって声をかけた。


「こっち来ぃ」


あっこの子毒スープの時の屋台の子だ。うん?なんでここにいるんだろう??


「こん、ふたりがモナちゃん探すの手伝ってくれたんだ」


なるほど?

次回は11月7日よていデス。


最近人付き合いが多くなって楽しいやら時間が足りないやら。小中高の時よりも今の私は充実してる気がする。変だなぁ。ははは。

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