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第361話

モナはユーグリッドから少しだけ離れた。夏祭りの為の騎士団テントだったはずのここは、一般市民の避難所に成っていた。


ネズミに(かじ)られたりして怪我を負っている者、逃げる時に怪我をした者、被害に遭わずに済んだ者、状況自体が飲み込めずになんとなくここにいる者、などなど様々な人達がひしめき合っていた。


しかし、そんなにもひしめき合っているのに、今の今まで気づかないくらいに人々は静かに過ごしている。モナがその場を見るまで全く気が付かなかった。


人々がおとなしくしているのは、辺りの騎士団の動きを見て納得した。騎士団が人々の統制を図っているからだ。従わない人がいないどころか、むしろ親と子供まとめて、憧れの眼差しを向けている。


若干、宗教的なそういうアレか?とも、思い至ってしまいたくなる程度には、キラキラしている目をしているが、騎士団達の会話に耳を傾けると、単純に信頼されているだけなのだとわかる。


本当にヒーローを見つめている。そういう目線なんだろう。


モナは家族で共に過ごしている人々を見ているとなんだか落ち着かなくなってきた。


この世界で家族のように過ごした記憶がもうひとつ分、つい今しがた思い出した。それからまだ1時間も経っていない。


ゲームで言えばモナはこの世界の2周目をしているのだろう。しかし、未来の出来事だったとしても、モナにとってはただの過去。


忘れてしまっていたとは言え、体験した現実のひとつだ。あの時あの場所で出会ったディオさんとアンドレは、あの軸でのモナにとっての家族に間違いはなかった。


今のこの状況でのディオさんとアンドレはまだ友達程度だけれども。


仲良しそうな家族達の方から目線をずらして改めて辺りを見回しつつ、モナは情報収集してみた。決して淋しくなったからではない。決して違う。


騎士団達の口から出るのは決めた区画毎にどの程度の駆除、どの程度の避難民がいるか、というものが多かった。それだけでも練度の高さが伺えて、情報収集とか言ってみた自分が恥ずかしくなる。


そういえばと、さっきの事をまた思い出す。過去の話を思い出しはしたけれど、あの深層心理の奥底で思い出した時はつらつらペラペラすらすらと、なんてこと無く思い出せた過去の出来事が、今のこの状態だと、あまり思い出せる気がしない。


真っ白い髪、真っ白い服装で、肌もどちらかと言うと透明感があって白っぽい神様、順流(ジュンル)様に語った部分さえも、何を語って聞かせたかが今や曖昧だ。


不思議でならない。そして思う。やっぱりまたあの空間に行かなきゃならないんだろうなぁと。力はだいぶ戻っているから、実のところ、今のこの5歳の姿から変化しようと思えば出来る。


しかし、結局のところ、思い出せた辺りまでの戦闘力しか戻っていない。それだけははっきりと分かる。


モナは過去に約3年間この世界のあの場所で過ごした。いったい全体どうなってそうなっているのかは、やはり真っ白い神様の順流(ジュンル)様にご説明いただかないことにはわからないけれども、あの神が言っていた通り、話をしただけ力が戻っているのだ。


自分の体はどうなっているんだろう。そして今ここで思い出せればきっと力が戻せそうだとも思うのに、モヤがかかったような、本のページがくっついてしまって開かなくなってしまったような、どうしようもない気持ちに(さいな)まれた。


無理矢理モヤを払ったり、無理矢理本のページを開こうとすると、モヤに至ってはモヤを払おうとすればするほど体がズブズブと地面に沈み込んで行きそうだなと思うし、本に至っては開けそうなページがメリメリと音を立てて中身が裂けてビリビリになって2度と読めなくなる、そんな気がした。


どちらにしても単にモナが、そんな感じがするという比喩でしかないのだけれど。その比喩はモナにとっての安全装置なのだろう。


モナは眉を下げて思う。自分の力が多少戻ったところで、このよくわからないシステムに翻弄されている時点で、戻った力が有用に使える気がしない。


まだ確かめていないけれど、後で時間を作って力が十全に使えるのか検証しなくてはならない。


立ち尽くしていたら声をかけられた。ユーグリッドさんの相棒であるクリストファーさんだ。クリストファーの手元にはなにやらシチューみたいなものがある。


夏場だけれど、避暑地のこのロッテリーでは夜は少し冷える。とは思うけれど、まだ夕方で少し暑さが残っている。こんな時にこんな熱々そうなシチュー。しかも、ミルク色のシチューじゃなくて、牛系の茶色いシチューだ。


ユーグリッドさんの分だろうけど、どんなに食欲があっても、アレ、食べるんだろうか。聞くと、それはクリストファーさんの手作りらしい。そのチョイスで良かったんだろうか。天然だった?まさかね。


ユーグリッドさんのテントに戻るから声をかけられたらしい。それにそろそろ暗くなってくるからと。


モナはクリストファーさんについていくことにした。とても熱々そうだけれど、匂いはとても美味しそうだった。


夏にラーメン食べる感覚だと思えば食べられるよね。と、思い直した。クリストファーさんがモナの分もあると言うんだから、ご相伴に預かるに決まっている。


そういえばさっきお腹をめちゃくちゃ鳴らしていたあの、めちゃくちゃ怖い熊獣人さんは私が飛び出したことに怒ったりしてないだろうか。・・・・食べたらきっと機嫌も直るだろう。


全然怒ったりしていないのに、勝手にモナはユーグリッドの事を警戒した。取り越し苦労がわかるまで、およそ100歩。

前回までの流れの“3人目の男”はもう少し後にでてきます。神様ズより重要人物だなんて、誰でしょうねぇ。



今回モナは前半からほとんど喋っていないので、前回と同じような語り部になっていマウス。


ちなみに100歩は大体1分くらいの歩くペースだそうです。


活動報告今日もしくは明日書くかもしれない。のーん。


次回は29日予定です


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