第355話
いつも遅くてすみません。
家の家電がどんどん壊れていく現象が最近著しいです。呪われてんのかな。プリンター壊れないでぇぇ。
男はまるでおどろおどろしい墓場のような、物悲しく寒そうで人が寄り付きたくない不穏な空気のするような、そういう場所にひとり立っていた。いいや、今しがたそこに現れた。しかしそれを見ていたものはいない。
誰かが見ていたなら悲鳴を上げたかもしれない。ボコボコと泡立つように真っ黒いブドウが破裂していく中から男が現れたからだ。
男が現れた場所には同時に赤いモミジの枯れ葉が出てきたので遠くから見ていたならば、血を流しながらでてきたようにも見えなくもない。
出てきた男はその出現方法に驚きもせずに立ち尽くしていた。
男は憤っていた。胸で大きく息を吐き、気持ちを落ち着けた上で怒りを抑えきれなかった。男は、ナエは、元妻であるミギィの事を愛していた。
しかしそれ以上に自分に甘かった。自分可愛さに王都で店を立ち上げた。妻は愛して愛して愛して愛していたけれど、王都で人旗あげようというナエの心についてこなかった。
「ミギィがいれば、王都でのあのことは起きなかったかもしれないのに。ミギィがいればあの店は潰れなかったかもしれないのに。どうして。どうして。レフティばっかり、レフティまで俺を馬鹿にするのか。ミギィも一緒に笑っているのか。俺が、俺が俺が俺が俺が俺がどんなに、苦労したかも知らないで。」
目の焦点がとらえどころのない動きをしている。怒りからくるものだ。ナエの手は未だに温かかった。その温もりは絞めたミギィの首の温かさの残りだった。
黒い猫が邪魔をしてこなければ、冷たくなるまで触ったであろう首を、ナエは思い出していた。
「ヒュー。イカレたね」
「・・・」
「なになに、無視するの?無視なの。そーかそーか。」
「お前の」
「ん?」
「言った通りだ。」
「なーにが?」
ナエの前に現れたのは、細長くてとてもウロコまでもが細かく綺麗な体のヘビだった。とても細いのに長さだけはあり、軽く1メートルは超える。
「この街は潰れてもいい。」
「でしょでしょー。今さー、ビョウビが頑張ってるよ。役に立ってるー?アイツー?サイセツは熊の子捕まえるの失敗したし、ビョウビも力入ってるのわかりやすいよねー!」
「いや、結構悪戦苦闘しているみたいだぞ。一応、あの失敗の報復に熊の獣人を生き埋めにと、提案してみた。」
「うわ、人間ってエグいね。生き埋めかー、生き埋めはツライヨー。せつないよー。エグい、ヒドイ、こわーい。」
「何言っているんだ。人間を皆殺しにしようとしている奴らが」
「だって、僕らも報復みたいなものだもん。いんがおーほーってヤツだよ。」
「そうか」
「あ、ねえねえ。それとは別なんだけれどさ、サイキョウとタイサイ知らない?横竪様にまた会いたいんだけど、アイツら通さないとお目通りできないんだよね」
「さいきょう?たいさい?おうじゅ?なんだそれは」
「ん?なんだって、僕らの仲間と僕らの神様に決まってるじゃん。ふざけるのはやめてよね。マジで怒るからね。オウジュ様には1か月前に会わせたじゃん。全くもう。神々しいって言ってたくせに、人間って本当に神様に対して不躾だよね。もっとウヤマエー?」
「???ああ、すまない」
ナエはヘビからくる威圧にたじろぎながら思い出せないそれについて一応謝った。
「オウバンやタイショウグンは今回何もしないんだったな?」
サイキョウ、タイサイ、オウジュは思い出せないが、思い出せるこの件の人外の仲間の名をナエは聞いてみた。
「ビョウビはほら、ネズミじゃん?牛と馬はネズミ踏みそうだからってさ。んなのどーにかしろっての」
「まあ人間も“馬に蹴られて死ぬ”とかよくある死因だからな。」
この国での流通は馬だよりなので、よくある死亡事故のひとつだ。牛も馬も生きてる車みたいなもので轢かれたらひとたまりもないのだ。牛は特に暴れる種類もいて、それを楽しむ娯楽さえも王都にはあるらしい。年に何人かはその娯楽で轢かれて大怪我なんていう話もちょくちょく聞く話である。
「その要領で人間をバッタバッタとなぎ倒してくれていーのにー」
ヘビの体はぬらりと光る。ボーリングのようにパッカーンと人間が轢かれていくさまをナエは想像してしまった。
「サイハ」
「ん?」
ヘビはナエを見つめて止まった。
「俺もお前らと同じ、モンスターだったら良かったのに」
「だね。でも大丈夫。きっと成れるよ。今回、ビョウビが成功すれば、それはナエの成功みたいなもんだしさ。作戦立ててくれたじゃん。そんなにいっぱいじゃないけど、助かったよ。人間ってそゆとこ、ほんと怖いよねー。のーみそまわりすぎー」
「そうだな。だから、俺は人間を辞めたいんだ」
ヘビはニコリと笑った。悪意なく、他意なく、心の底からヘビのサイハは思った。
(人間なんだから人間辞める前に殺すに決まってんじゃん。仲間はもういっぱいいるからどーでもいーんだよねー。大して役にたってないしー)
「んじゃ今から暇だったよねー。サイキョウとタイサイ一緒に探そー。ビョウビの結果が出るまでさ」
サイハは呑気にナエに言った。サイハは人間の大半が死ぬだろうと思って、信じて疑っていなかった。
本来の歴史であれば、そうなっていた。
テイマモナという少女が異物としてこのロッテリーの街にいるこの時は、サイハの予想など水に溶けるティッシュのごとくペラペラだったのだけれど、そんなこと知る由もなかった。
砂棘猫のトカキは、3匹のオジサンタヌキと2匹の若いタヌキと共に来たる冒険者達に一泡吹かせようとしていた。約30分ほど前までは。
その冒険者達は何故か急に踵を返して来た道を戻り、人間が少し増えながら先を行き、ネズミの群れに飛び込んで行っていたようにみえた。
何が起こっているのかわからないまま。
3匹のタヌキはせっかく息巻いていたのに、どこかに行ってしまった人間達を追うこともなく、顔を見合わせ自身らを慰めた。
「はははー、アイツら追い払おう思ってたのに、おまいらの力借りんでも逃げてったわぁ」
「きっとおそれをなしたんだなぁ!さすが俺たちだ、多分。」
「あれ坊達はどこ行った。」
トサカなアホ毛のトウハツさんと、口がへの字にまがっているイカリさんと、真っ黒い体をしているタールさんは一緒に居たはずのぽん吉とポンポコ丸が居ないことに気づいた。
「えっ」
トカキも気づいていなかった。なんせ逃げた人間達がぎゃあぎゃあ言いながら戦っている様を見ていたからだ。
あわよくばそのネズミに加勢して人間討ち取ってからネズミ退治しようかとか、状況を見ていたのだ。でもネズミの異様な光景にやっぱり人間に加勢するべきか。とも思った。
あれこれと状況を見るのに必死になっていたら、後ろに控えていた仲間がいなくなってしまっていた。
「んっとだ。いねぇ」
「いついなくなったんだ。」
「みんなんとこ帰ったとか?」
「まあこれは狂気に満ちてるから逃げ出したくもなるかな」
人間VSネズミは混沌と化している。こういうときにこそ、2匹の「ぽっぽん」とか「ポコポン」とかの声を聞きたかった。
なんだかんだ2匹の声は若いタヌキだから声が可愛い。戦力よりもオジサンタヌキ達の癒しだった。
「長居してしまいましたが、人間達が勝ちそうです。今すぐ戻りましょう。2匹が戻っているかわかるはずです」
「そやね」
「んだな」
「居なかったらどうする」
「皆さんは里にいてください。僕のほうが機動力が早いので辺りを見てきますので」
「恩に着るわ」
しかしぽん吉とポンポコ丸はとっくに近くにはいない。2匹は人間VSネズミ戦が始まってすぐに、別行動をとった一部のネズミを怪しんで、それをこっそりと追跡していた。
行く先に待ち受けていたのは、追いかけたドブネズミのようなネズミだらけの場所のはずだった。しかしぽん吉とポンポコ丸の見たそれは、非常に変な光景だった。
IF世界で出てきた、サイキョウ(イノシシ)とタイサイ(フクロウ)とオウジュ様。何故かナエの記憶から消し飛んでいます。ふふ。
サイセツ(サル)
オウバン(ウシ)
タイショウグン(ウマ)
ビョウビ(ネズミ)
サイハ(ヘビ)
サルのサイセツは稲妻くま(ブリッツベーア)のトウシャくんをさらおうとしていたサルの親玉です。
神様
横竪(オウジュ
修慧(シュエ
順流(ジュンル
タイショウグン(ウマ)とシュエ様は、この世界では関係ありません。同じウマ同士だけども。
ウマヅラァなシュエはヘビのサイハと性格似てますね。でもシュエのほうがこう、なんていうのかな、理数系だぞ!オラァ!って感じの系統で、サイハはむしろ渋谷系だぞ!オラァ!って感じの系統のつもりで書いてるつもりです。つもりつもりです。つもつも。書くって難しいね。ぬぬぬぬぬぬ。
テンクウ「10月からのシャンフロのアニメ楽しみすぎて1期の家の録画したやつイッキ見しちゃった作者だよ」
ビャッコ「バカじゃねぇの」
作者「色んな配信サイトでもイッキ見出来る、見れるらしいって聞いたら、まずおうちの録画再生するに決まってるでしょーが!」(謎理論)
テンクウ「んあー?」
次回!フテゥーロちゃん泣き止む!ママァーー!(居ない)
25日更新予定。