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第354話

モナもお世話になったお祭り用の救護用テントの周りには患者や医者がかたまり寄り添ってその場に居た。そして目の前の家族から目が離せないでいた。


その家族は何を隠そうこのあたりでは有名な変人な医者夫婦である。


「ハニー、おととい実験したあの薬品ならすぐに作れるけど、どうだろうか?ネズミ退治にはいけそうじゃあないかい!?ワックワクするねぇ!?ねぇ!?はははは!」


「何を言っているの。それじゃ強力過ぎるわ。だめよ。ネズミは生け捕りにするのよ。いい?薬品の実験の検体に持って帰るのよ?検体実験やり放題だわ。薬品試し放題よ。こんなにも湧いてくるだなんて、最高だわぁ!うふふふふふふふふふふ」


見た目的には旦那さんの方が確実に怪しすぎるのに、言動は旦那さんよりもマトモそうに見える奥さんの方がネジがぶっ飛んでしまっている。誰も彼もがその2人を見て会話を聞いて、後退りをしていく。


怖い。関わりたくない。と、誰もが思い始めていた。テンションの高い生き物誰か止めてくれ。と思うけれど、ストッパー役などどこにもいない。


「パパー!やっつけちゃってー!」

「お母さん!生け捕り用のかごも袋も無いよ!無理だよ!諦めて!」


「ミリー!何もなくてもお母さん頑張るわー!」


お母さんは話を聞く耳自体を持っていないようだ。


「・・・お姉ちゃん。お母さんどれだけネズミ捕まえるつもりなのかな」


「見えるのは“全部“に決まってるわ」


全部という言葉に少し驚きつつも、その先のことにまず疑問に思うユリー。


「捕まえたら実験?」


「そうよ。」


「ふーん」


そっかあ、大変そうだなぁパパとお母さん。ぐらいな感じでユリーは安易に考えていた。その考えをミリーは顔を見て瞬時に気づき、あえて警鐘を発した。


「だめよ!ユリー、もっとちゃんと考えなさい!パパを応援して、お母さんを止めるのよ!」


止められないと心底わかっていてもミリーはユリーに言った。


ちなみにミリーのこの感覚はあの両親からではなく、叔母さんのリーリーから得たものだった。ミリーが幼少期から忙しかった医者な両親のかわりにリーリーが面倒を見ていたからこそ生まれた正常(?)な感覚が、ミリーを支えていた。


「え?でも捕まえてもどっちでも僕たちが今助かれば何でもいいよね。それにお母さん楽しそうだよ?実験いっぱいできれば、いいお薬作ったりするの早くなるって、前にもお母さん言ってたし、いいことなんじゃないの?僕もお手伝いしたほうがいいのかなぁ」


「だめよ!ネズミをあんなに捕まえたら、どこに保管するのよ!しかも実験って生きてなきゃいけないのよ!つまり、育てなきゃいけないのよ!」


「え?うん。そうなんじゃない?」


「ちがうの、ユリー!わかって!?」


「お姉ちゃん、全然わからないよ。もっとわかりやすく言ってよー」


「・・・かもしれないのよ」


「なに?」


「ネズミと一緒に暮らさないといけないかもしれないのよ!!」


「ひぇ!?」


ミリーは目を閉じ、手を固く握りしめて心底それを嫌がっているようだった。ユリーは一瞬、初めて姉に殴られるのかと思う程度には握り拳が固そうだったからだ。


ユリーは想像した。想像せずにはいられなかった。だってミリーがこんなにも嫌がっている。そう。つまり?・・・あのネズミが小さな(おり)に数匹。が、沢山。沢山の檻、檻、檻、檻。ネズミが1ぴき2ひき3びき4ひき5ひき67891011121314151617・・・・・・・・・・が、自宅のどこそこかしこにも山積みの光景を、想像してしまった。


「ひえ・・・・・。ぱ、パパ!パパ!そうだよパパ!ガンバッテ!パパーーーーー!!!!ガンバッテやっつけてーーーーー!」


心からの叫びに声が若干うわずっていたが、まさか息子が青ざめた末の叫びだとは誰も気づかず、当の呼ばれたパパは、感無量に息子の叫びに胸打たれていた。


「パパに生まれて良かった!」


なんかズレている事を言っている。推しに握手出来た時のファンみたいになっている。興奮している。パパだから。(意味深)


「よぅし!パパ頑張っちゃおっかなー!」


「お母さんも応援ほしいわー。」


あんまり頑張らないでほしい。辺りにいる人々は心底思っていたが、口には出さなかった。ネズミに囲まれたこの状況もイヤである。それを打破出来るのはあの夫婦だけだとわかっている。


パパは退治。ママは捕獲。


ママこと、マリーを応援すれば、幽霊屋敷よりも怖い怖い、ネズミの奇っ怪な悲鳴と怨霊のまとわりつきそうな場所になりそうだ。


仕事仲間や、薬を貰いに行っている患者達もここにいて、そんなんになったら通いたくない!と思うからして・・・・


「ゲイリー!応援してるわ!」

「ゲイリー!さすが男だ、奥さんの為に頑張れ!」

「ゲイリー!家族の為にカッコいいぞー」

「ゲ・イ・リー!ゲ・イ・リー!」


かつてないゲイリー・コールにマリーがめちゃくちゃ羨ましそうにゲイリーを見つめている。さらに気を良くしたゲイリーは、マリーが行動を起こす前に、やることをやり始めた。


「パパ直伝、害虫駆除とかのやり方〜」


大したことは言っていないのに、マッドサイエンティスト感が漂ってすごーく怪しく見える。それがゲイリー。


「まずはー、集まりやすい餌っぽいものを用意!ちゃかちゃん!次はその中にとある劇物を混ぜます。この時、手袋をちゃんとしないと手が荒れちゃうヨ!」


「で?それどうするのかしら」


「投げます!」


ちゅどーん。劇物は、毒ではなく爆発物だったらしい。離れて見ているミリーとユリーはパパの行動に目が点。


「それでどうするのかしら」


まだ終わっていないらしい。もうそれでネズミの一部はやられているからそれで終わりでもいいんじゃないかなと辺りの人は思ってしまう。でも続いた。


「ほら見てマリー!混ぜ方と投げ方が良かったんだよ。煙が出てきたよ。」


「あら、これはアレね」


「そうこれはアレだよ」


なんだろう?


「動物にはキツイだろう催涙煙幕と刺激物の混合劇物だから・・・」


と、解説途中にネズミはバタバタと動かなくなっていく。催涙と言っていたけれど涙目どころか、口からも何かでている。


「「うわぁ」」


ミリーとユリーは見なかったことにした。というか、途中からそのスッぱいような劇物の強烈な匂いにミリーもユリーも辺りの人々も涙をこらえる事が困難になった。


風上とか風下とか関係なく辺りに舞った劇物の中、夫婦だけは平然に辺りを見回しネズミを観察ていた。


このページ一部書き直すかもしれません。うーん。


次回は22日予定です



一部書き直しました。結構追加した。ハハハハハハハ。


見た目と厄介度が反転してるゲイリー、マリー夫婦。ただし、危険度はあんまり変わりません。ミリーとユリーは、リーリー叔母さんによって少しだけ清浄化されていますが、基本的にはサラブレッドです。(え?)


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