第353話
小熊ちゃん達が大きく貼ってくれたバリアのキワの場所で固まってワチャワチャキィキィとうるさかったネズミは駆除した。主に角材戦士が。
「誰が角材戦士だ。熊獣人で騎士団のユーグリッドさんって呼びやがれ」
「もう居ないみたい。みんなー!安全だよー!」
「聞けよー!ウガァ!」
聞いてはいるよ。返事してないだけだもの。だものだもの。そうだもの。
駆除したネズミの死骸はそのままにすると臭くなるので、深く穴を掘ってそこに入れた。そのまま土に埋めてもいいが菌とか怖いので、1度火葬してから土を被せることになった。
石灰とかあればかけておきたいが今石灰は残念ながら無い。駆除とか手慣れているみたいでほとんどユーグリッドさんがやってくれた。一部の大人もやってくれたけれど、滅多にないことなので、たどたどしい感じだった。
さすがだ。角材戦士。
「ったく。嬢ちゃんはこいつらとここでバリアん中で避難してろ。俺は制服も剣も無いが、祭りの警備テントが色んな場所にあるから、今どんな状況なのか、各所に聞いて回ってついでにここにも人を寄こしたりとか仕事してくるわ。」
「えっ」
そりゃ、ユーグリッドさんの仕事はそうだよね!そうなんだよね。
しまった。
土に埋まって死亡フラグって、この後も起こる確率あるんじゃ??だってネズミ駆除はしたけれど、そのネズミ達は特に魔法もスキルも一切使わず普通のそのへんにいるドブネズミと同じく大した強さも賢さも持ち合わせていなかった。
ネズミとナエさんが原因であの狭苦しいダンジョンらしき場所に飛ばされたって言ってたけど、そのナエさんは一体どこにいるんだかもわからないし、もし鉢合わせして、また何かの拍子にユーグリッドさんが埋まることがあったら、助けた気になった私はどうすりゃいいのよ!?ってなるじゃんね!?ね!?
「やだ!ユーグリッドさん。私と居て!一緒に居ないとやーーーーだーーーーーー!」
半泣きしながらヤダヤダ攻撃でござる。5歳児よ!大志をいだけ、子供らしく!心は打算でいっぱいだ!
トトロのめいちゃん並みにもうちょっと大仰に泣いて駄々をこねてみようか。それだとやりすぎか。いい塩梅が思いつかない。
・・・・なんだろう。『あーはいはい(棒読み)(ハナホジ)』ぐらいの勢いの顔してる熊の獣人さんがいる。鼻ほじったりしてないけど!ユーグリッドさん意外に紳士だけれど!くっそぅ、おのれ・・・。もうっ!こっちは!心配してるっていうのにぃぃぃ!!!むきぃ。
サツキおねえちゃん、サツキおねえちゃんはいませんか!トトロを呼び出してください。トトロの爪を煎じてこの目の前の、熊の獣人に飲ませなければ!
あとでミギィさんとレフティさんにチクってやる。
「あのな、嬢ちゃん。」
「いかないで」
色んな感情がないまぜになっていく。喉がなぜか詰まる。わかってる。わかってるってば。目の前のヒトは、ユーグリッドさんは、優しい大人なだけなんだから。
「ゆーゆりっどぉー」
「モニャ泣かす、めっ」
「おこるよ?ぷんぷん」
「いっしょに、きたなら、かえりもいっしょー!だよ?」
「そうだよ、ネズミさんタイジするの、一緒のほーがすごいもん」
「「「「「ねーーー!!!」」」」」
「いやぁ、ほら。嬢ちゃんがここにいたらお前らも心強いだろ?」
「モニャおねーちゃんいてくれたらうれしい。」
「でもね、あのね、困ってるヒト、お祭りにいっぱい」
「ゆーぐりっどと、モニャおねーちゃんは、お祭りのヒーローになるの」
「だからね、ここは僕たちにまかせて!えっへん」
「だからね、いってきて!おねーちゃんと一緒にいってきて!」
想像の斜め上をいく、子供らしくない勇気いっぱいな行動や言動は、さっきの“勇気100%”の歌のせいだろうか。
「んー、だがなぁ」
「ユーグリッドさん。私、結構スゴイんだから、連れて行かないと後悔するよ」
小熊ちゃん達の真剣なお目めと、私の真剣なお目めがユーグリッドさんに注がれる。
「ふはっ!ハハハハハハハ!!!」
なんか急に笑い出したんですけれど?
口を大きく開けて笑うと野生の熊みが強いのでやっぱりちょっと怖いんですけれど?。トトロと違って口がやっぱり肉食獣の歯をしてるん出るけれど!?(トトロは草食動物です。歯がね。そうなんだよ。)
「間違いねぇな!」
なにがだよ?!って頭をグシャグシャしながら撫でられた。え?よくわかんないんだけど!?どうした?
「ん。お前は、スゲェやつだ。本当にそうだ。すまん。今更だが、さっきはマジで助かった。助けてくれて、ありがとう。あの場所で俺は死んでたかもしれねえからな。」
ニカッと怖い熊顔な笑顔。
なんだろーなー。こんなんだから憎めないんだよなぁ。
「わかってくれたんなら、いいんだからね」
しまった。これじゃ、私の私による私のユーグリッドさんへの、ツンデレムーヴでは!?と言ってから気づいた。
忘れよう。
んんっ、とにもかくにも、小熊ちゃん達に見送られながら私達は次に向かうのだった。
その頃
「パパー!お母さんー!がんばってー!」
「頑張ってー!」
「ミリー!ユリー!そこから動いたらいけないからね」
「パパがんばるよーー!んちゅ!んちゅっ!」
「ダーリン、投げキッスは今はヤメて」
「了解ハニー!」
とある場所では、ひとつの家族がネズミと対峙していた。
次回は「戦慄!医者夫婦の本性丸出し!?娘息子がドン引き!?」乞うご期待。
テンクウ「え!?!?そんな内容なの!?」(ガタブル)
ビャッコ「間違っちゃいにゃいようだけど、ニュアンスってやつが違う気がする」
フテゥーロ「モナママぁ、モナママぁ!」
スズ「フテちゃんのこといつまで泣かせておけばいいの」
次回は19日予定です