第352話
ひと通りワチャワチャされて大満足(個人比)したあと、それを待っていてくれたユーグリッドさんが呟くように喋りだした。
「なあ、あっち。見てみろ。完全に消えたわけじゃないみたいだぜ」
遠くに見える。ユーグリッドさんの視力がスゴイいいのだろう。なんかこう、黒い点がちまちま見える。見えなくもない。見えるんじゃないかな。多分見える気がする?
「倒した、んじゃねえのか?」
おっと、それは勘違いだ。
「んーん。あのね、私がやったのはみんなの力をバフしてあげただけだよ。」
「ばふ?」
「「「「「?????」」」」」
バフってゲーム用語だったっけ。ええと。
「力を貸してあげる魔法みたいなものを使ったの。えーと、強化とでも言うのかな。小熊ちゃん達は私が来る前まで必死にバリアを張ってみんなを守ってくれていたでしょ?『疲れたよー』『もうむりー』って言いながら。」
「言ったー!」
「へへーん」
「がんばったよ」
「えらいー?」
「またつかれてきたなー?」
甘えん坊さんがいっぱいだ。可愛い。もっとモフモフしてやろうかぁ!記念に、蝋人形にしてやろうかぁ!(デーモン小暮風)んー、蝋人形は固くてモフモフしないからやっぱり却下で。(自問自答完結)
軽くなでなでしておいた。えらいえらい。イイコイイコ。
「そう。でね。みんながぐわーっとバリアをやっていてくれたからそれを私が歌で強化、強く強くして、勢いよく放ったの。一瞬消えてあのネズミ達が死滅したように見えたかもしれないけれど、広範囲にバリアが成長しただけなんだよ」
「ほほう。それが嬢ちゃんのしたことか。強化がバフってことか。バフ。バフ。バフって面白い響きだな。俺も今後この言葉使っていこう。」
なんだかめっちゃ気に入ったらしい。
大きな熊がバフバフ言ってるよ。あれ、デカい犬だったかな。バフバフ、バウバウ、なんちゃって。
「でもつまりはそのうちバリアがまた切れたらこっち来るってこったろ?」
「「ええっ」」
「「「がーーん」」」
小熊達ががっかりしている。まあね。そうなんだよね。今はバフ状態で高魔力のバリアが一時的に張られている状態だ。あそこにいるネズミ達の目的がよくわからないけれど、人を襲っているのだけはわかる。
「あいつら俺がやっつけたいのは山々なんだが、あいにく私服なんだよなぁ。」
ユーグリッドさんが何を言い出すのかと思えば、ユーグリッドさんは騎士団のそこそこ偉い人だったね。そういや。そういやブリーチに出てた京楽さんみたいな騎士団の団長さんは今頃どうしてるんだろーか。
「なんか武器ねーか。武器。あんだけ離れりゃ、一般人に危害のない範囲であいつらを退治することができるだろ。」
首をコキコキ、腕をぐるんぐるん、肩もバッキバッキ。ヤル気満々ですね。
「人々を守るのが仕事だからな。狂人的なそういう、バーサーカー的なやつじゃぁないからな。」
わかってる。わかってるって。
「でもヤル気なんでしょ?」
「俺はあいつらに、あの場所に飛ばされたっポイからな。」
「ん??どゆこと??そういえば、どうしてあんなに狭いダンジョンっぽい所にいたのか聞いてなかったね」
「あー、それがな?ほら、レフティのババアの家族がいただろ」
「あー、ナエさん。一緒に寝泊まりしたって言ってなかった?」
「あのネズミとなんだかコソコソと企んでたのを見たみたいでな。気づいたらあそこだった。」
モナは詳しいことは知らないけれど、今、目の前にいるこの熊の獣人のユーグリッドはモナが行ったIF世界の10年後のロッテリーには、居なかった。居るはずもなかった。もう亡くなっていたのだから。
あの世界のディオさんは言っていた。
『昔、ここの騎士団も活気があったんだ。私が覚えていて1番活気があったのは最後に獣人が騎士団にいた時だったよ。事故か事件か未だにわからないけれど、洞窟のような場所に土に埋まって亡くなっていたらしい。』
そんな話を聞いた事があった。
『仲のとてもいいクリス?だったかな、熊の獣人と仲の良い男性なんかはショックで騎士団をやめようとまでしたらしくって、元々次期騎士団の団長候補とまで言われていたらしく元領主の義父が騎士団を辞めないようにってかなり説得しにいったとお酒が入るといつも語ってくるよ。』
そんな話を過去の話をしている時にふと思い出してしまったのだ。
”クリス?“は、ユーグリッドさんの相方とも言える、クリストファーさんのことだろう。相当ショックだったに違いない。そんなにショックが酷かったのならもしかすると、ナカバさんとお付き合いをしていたけれど、それが原因で別れたりなんかしたかもしれない。
あの世界ではクリストファーさんには出会えていないから、結局辞めたのかもしれない。骨折り損のくたびれ儲けってやつだ。まあ、詳しいことは知らない。妄想の産物だ。
わかっているのは、熊の獣人が死んでしまう未来があるということだけ。
これで回避出来たのだろうか。
確実なものが欲しい気もする。
もし、本当に、ナエさんがあのネズミと一緒に何か企てているのなら、それをどうにかしないとまたユーグリッドさんが危ない目に遭うのでは?
「モニャ?」
「よし!」
「よし?」
「みんな!いい?武器を探してきて!」
「「「「「はーーい!??」」」」」
武器、は、なんか適当に棒でも持たせておけばいい気がするからどうにでもなりそうだよね。って小熊達がイベント会場の看板の1部を貰ってきそうだな、完全に角材だよあれ。角材ってヤンキーか。ヤンキーなのか。ユーグリッドさんウィズヤンキーなのか。
似合いそうだなぁ。黒い長い学ランとか似合いそうだなぁ。
でもアレだな。ネズミはうろちょろうろちょろと仕留めにくいよね。なかなかに難しいよね。しかもあいつら絶対攻撃して来るタイプの危険な奴らだよ。
今は安全とは言え、うーんうーん。
ネズミ達に攻撃させないようにするためには?うーん、うーん、ハッ
ネズミといえば、トムとジェリーやらミッキーさんやらいるけれど、ぐりとぐらも忘れちゃいないけれど、今はこの状況の打破に思いつくソレがない。うーんうーん。閃けパワー。
そういえば昔、お笑いの爆笑問題が爆チュー問題とかいうネズミの格好で歌を出していた!日本人ならお馴染みのアニメ、ちびまる子ちゃんのエンディングで!
「♪カタブラツルリンコ〜!♪」
アララの呪文という曲だ。
「♪パヤパパパパヤパパ、パヤパヤ、アララ カタブラツルリンコ、パヤパパパパヤパパ、パヤパヤ、 アララ カタブラツルリンコ〜 ちょいとへんてこだよ 呪文さ キミに教えてあげるよ ♪早口ことばではないのさ アララ カタブラツルリンコ♪ひとりで 泣いてる時も思い出してね ー、あなたの笑顔が 、きっとすぐに駆けてくる♪なんとなく可笑しいね♪願い事 叶うかなーーー、ジャンジャジャン!」
もちろん小熊ちゃん達にも教えた。だれか「ツルツルリンリンコ」とか新しい呪文開発してるけど聞いてない聞いてない。
「この呪文で目の前のネズミがツルリンコするのだ!うははははははは!(悪い顔)」
「5歳がしていい顔か?」
後ろ、うるさいぞ。その転げているネズミを倒しているのに私に困惑顔向けないで。やりづらくなるでしょーが。角材戦士は角材で戦っててください。
「これもバフか?」
「むしろデバフかなー」
「でばふ」
あべし、みたいに言わないで。
次回は16日予定です。気づいたらまた日付変わってるの何なんだろう。おかしいなぁ
テンクウ「情けない!情けないよ!」
セイリュー「きゅんきゅん、きゅーーん、きゅん!」
フテゥーロ「モナママ、モナママぁぁ」