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第350話


ーーーぱちり。


「えっなにこれ。(くら)っ。せまっ」


モナはとある場所に移動してきていた。そしてついつい口に出た。なぜって口に出した通り、辺りは真っ暗な上に、5歳のモナがギリギリ立てるかどうかという本当に本当に狭苦しい土のトンネルの中だったからだ。


ちょっと動いて頭が天井を擦るだけで砂煙が舞い上がりパラパラと土くれが落ちてくる。崩落が簡単に起きてしまいそうだ。


「えっ、いやぁ。えっと、おかしいな。ここにいるはずなのに。え?死んでる?もう死んでる?そんなバカな?」


モナのスキル“愛似移動友(アイニードユー)”は友達に会いに行ける移動手段だ。それでここに来た。だからいるはず。しかし、こんな場所にあの大きな身体があるということは?と、ついつい要らない考えがよぎってしまう。良くて重症だったり・・・。


モナの顔が青ざめた。想像で青ざめてしまった。どこ?どこなの?


「ユーグリッドさん・・・」


大声で言いたかったけれど、よくドラマや映画で大声のあとに雪崩れや崩落シーンを観てきたモナは躊躇(ためら)いがちに呟いた。


目の前は暗くてよく見えない。この声が届くはずもない。と、思っていたら、暗闇がもぞり、と、動いた。


「えっ」


暗闇だったと思ったものは何やら大きいモグラのようなもの。目が2つこちらを睨み、息が荒くしかし巨体の為方向転換がままならないようで、モナは生ぬるい空気を感じ、気持ち悪さに身を固めた。


叫んだら危険そうだとわかっていても叫んでしまいそうになった時、モグラのようなものの背中側からバキッと変な音がして、グッタリと倒れ伏した。


その後ろから声が聞こえた。


「・・・あ?嬢ちゃんじゃねーか!?」


ユーグリッドさんがそこにいた。そのモグラもどきと同じぐらい土のトンネルギリギリを匍匐前進(ほふくぜんしん)して来たのだろう。倒されたモグラもどきはよくわからない光に包まれ、消えた。まるでゲームでモンスターに勝った時のように消えた。


間にあった障害物が消えたことにより、モナはホッとして目から大粒の涙をこぼしながら、ユーグリッドの首元に抱きついた。


「よかったぁ」


ユーグリッドはよくわからず、抱きつかれたのでモナの背中をポンポンとなだめるがごとく軽く叩いた。泣いた子供は泣き止むまでが長い。








「ずびっ」


「で?」


「で?って?」


「いや、だから、どうして嬢ちゃんがここにいるんだ。どっから入ってきた?出口どこだ!?それかまたネズミか!?ネズミが飛ばしたのか!?」


矢継ぎ早に聞かれた。というかここがどこかも知らない。だって目標で目的でスキルの指標にしてたのは目の前のユーグリッドさんなのだから。


「それより!ユーグリッドさん、怪我はない?大丈夫なの?さっきのモグラっぽいやつ、バキッってやったのユーグリッドさんなの?どうやったの?バキッってやったせいで腕痛めたりしてない?無事?」


こっちも聞きたいことは山だ。


「いやいやいや、答えろよ」


「そっちこそ!心配したんだからね」


真剣に見つめ合っていると、途端にぷはっと息が漏れた。先に折れたのはユーグリッドだった。


「ったく、怪我はねぇよ。熊獣人ナメんなよ。」


“ナメんなよネコ”通称“ナメネコ”もビックリの“ナメんなよ熊”が目の前に爆誕である。“ナメクマ“はあんまり需要が見込めなさそうにしか見えない。なんだかカッコいい気もしなくもないけれど、ちょっとイカツすぎる。


「さっきのはな、こう、腕で捻りを効かせるんだよ。ここは狭いから腹に力を入れて上半身だけ浮かせる感じにしてな。」


腹筋じゃなくて、背筋エクササイズみたいなヨガみたいな、なんだかよくわからない高度な動きのような事をサラッとしてのけたらしい。熊獣人スゲェ。


「さっきから変なのがでてくるんで倒しながら進んでたんだよ。多分だがな、生まれたばかりのプチダンジョンだな、ここは。」


なんですって。


「で、どうやって来たんだよお前は。」


「スキルを使用して、ぴょいっと飛んできました。友達の元にだけ行けるやつなの。」


「おお!?そんなの使えたのか。スゲェな。じゃあ俺達すぐに帰れるんだな!?」


「・・・・・・ユーグリッドさん、ここ探検したい」


「嫌だよ。すぐ出ようぜ。床を這い回るのめっちゃ疲れた」


ぐぬぅ・・・。助けに来たんだからユーグリッドさんを見つけたら、他の子達の所にまた愛似移動友(アイニードユー)すれば簡単に外に出れる。


しかし、この場所は地下だ。どこの地下なのか全くわからず、1度転移脱出してしまえば出入り口もこの地下の正確な場所も一切合切謎のままになることは明々白々(めいめいはくはく)


この世界に来て初めてのダンジョン。異世界お約束のダンジョン。せっかく入ってきたのにもう去らねばいけないダンジョン。IF世界でも全然全く入ったことがなかった、あの、ダンジョン。


だからゲームのようにモグラが消えた。なんだよそれ、楽しそう。


とか、考えてたらユーグリッドさんにあきられた目を向けられた。いわゆるジト目だ。


しぶしぶほっぺたをリス並みにぷっくりふくらかせながらユーグリッドさんをまたも抱きついて、言った。


「帰りますよ。愛似移動友(アイニードユー)!」


その場からモナとユーグリッドは消えた。モナの未練をそこに残して。



リネア「次回は11日予定です」


チェルキョ「また忘れたりして」


プント「そうしたらまた追加で書いて貰えればいいだけですよ」


チェルキョ「あれ?そっちのほうが読者はオトク?」







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