第348話
びええええええええええええ
何かがなっている音がする。もしもこの場にモナが居たのなら「警報?サイレン!?」とか言うかもしれないが、ここにモナはいないし、誰もそんなことは知るよしもない。
「お兄様、あっちです」
「ああ、音がうるさいけれど、何が起きているのかこの目で確かめないと。ね。」
2人の少年、もとい、アンドレとディオはスズメのスズと共に音の鳴る方へと向かっている最中だった。当てもなくとりあえず通ってきた道を引き返していただけなのだが、その先がたまたま音の鳴る方向だった。
2人はモナを探していた。一緒にいるスズが、モナに問題はないとドヤァ顔でハッキリと言い切っていたけれど、目の前から急に消えられて心配するなという方が無理だし、なにより、モナは神殿で急に倒れてついさっきまで青白い顔をしていた。
モナ自身は全く身に覚えがなさすぎて、勝手に動いているけれど、助けようと努力したアンドレとディオは、モナに対して呆れる上に少しだけ怒りが沸々と沸いてきていた。
「アイツは!アイツは、どれだけ心配させれば気が済むんだ、むう。」
「本当だね。・・・おや?」
音が近づくにつれて、ディオがついに気づいた。それは音だったが音ではなく、実は声だった。遠くまで、それはもう遠くまで響いてしまっていたものだから、それが生物による発するものだと近くに来るまで認識出来なかった。
それだけ高音だったというのもあるし、だれもこんな場所でこんなにも音量のバカでかい泣き声を出すとは考えつかなかった。むしろ思いつけと言うほうが酷だろう。
「あっ!」
アンドレが先を行っていたからさっそく見つけたようだった。その声にディオもアンドレと同じものを見つけ、そして目的のひとつである、テンクウ達を見つけたことにより、少しだけ安堵した。
しかしその安堵もすぐになりを潜める。むしろ、困惑しかなかった。
声の主は唯一モナが名付けをした真っ白いふわふわの変わった生き物、ケセランパサランのフテゥーロが大泣きしていた。
そしてそのフテゥーロの周りには固まって動けなくなっている人間の大人達がフテゥーロを見つめている。固まって動けないのは泣いているからだろうかと思うが、それにしても、その大人達もなんだか泣きそうな顔をしているように見えるのは、なぜなのだろうかと、ディオは首をかしげた。
「お兄様?ここにはネズミがいないようです」
フテゥーロの泣き声でうるさいけれど、アンドレはディオに話しかけた。不思議と案外聞こえる。
「いいや、フテゥーロの周りをよく見てご覧。2、3匹だけれど、ひっくり返っているネズミがいる。予想だけれど、フテゥーロのあの泣き声で失神でもしたのだろう」
「ホントだ!なるほど・・・」
「しかし、これ以上近づくのは少し怖いね」
テンクウ達の近くにいたミギィは耳を塞いでフテゥーロの方を向いてしまってこちらに気づいていない。
ミギィ、テンクウ、フテゥーロと、あとは黒い猫がいる。
「お兄様、俺がミギィさんをこっちに連れてきます。モナは見えませんけど、ミギィさんなら知っている気がします」
「スズも行けるよ、スズならミギィさん連れて来るの簡単だよ」
「いいや、それよりも、フテゥーロを止められるのはアンドレだけだと思う。」
「え!?」
「スズはー?」
「スズちゃんはアンドレの護衛かな。アンドレがフテゥーロに近づく時に、他の人達からの横槍が入らないようにしてほしい、かな?」
アンドレは納得いかない顔をした。ディオは兄だけれど、弟に対しての評価がここまで過剰評価をつける人物だっただろうか、という疑念を抱いてしまったためだ。
ディオはアンドレの身長に合わせ腰を下ろして、アンドレの目線に合わせて、アンドレの肩に手を乗せ、言い切った。
「私には、出来ない。アンドレだけの才能で、絶対に出来る。安心して行っておいで。」
確信めいた発言だった。スズも首をかしげていた。アンドレの祝福後をキチンと知っていたのは、ディオだけだった。
次回は6日予定です
最近、体の不調がありまして、精神面もブルー気味だったのですが、きっと明日には持ち直す、かもしれない。なんかこう、なんかこう、季節の変わり目ってホント嫌いです。メソメソメソメソ。