第343話
『人間というものは感情ありきですよね』
ーーーーーそうですか?人間、ではなく、神様だって感情を重きに置いていますよね?
私のこの後の行動について言っているのだろうけれど、げせぬ。
『それを言われると弱いですね。フフ。でもそうですね、人間、ではなく、生きとし生けるものは感情ありきと言うことを忘れてしまった発言でした。うぅん、この場合モナさんの行動に対しての評価としては、どうという見方が正しいとかありますか』
ーーーーーーそんなもの考えて生きてる人なんてそうそういないので、順流様の聞きたいように聞いて、見たいように見れば良いと思いますよ。
『そうですか?ふむ。』
ーーーーーーどうしたんですか?
『いえ、フテゥーロのことです』
ーーーーーーフテゥーロちゃん?
『ええ、ああいう魂は滅多に有りうることではありませんが、今までも無かったわけではありません。そのひとつがたまたまモナさんの人生と道を共にした、それだけのことですが、横竪が元々人間から生まれた神だったからこそ、フテゥーロという存在が大きくなってしまったのかもしれないと・・・今感じたのです』
ーーーーーーよくわかりません。私は・・・横竪様の事は死んだ今でも嫌いです。本当のことは言わないし、人をこき使うし、総合してみると結構なワガママですよね。フテゥーロちゃんと会わせてくれたことには感謝しますけど、混乱の世にしたのは、修慧ではなく横竪様の
『申し訳ない』
ーーーーーー順流様。
話の途中で言葉を重ねれられた。真っ白く輝くような髪、肌、服。誠実を具現したような目の前の男は、ただただ全ての存在の友だった。
ーーーーーー謝られても、困ります。だって、アナタの体は元々・・・・
『だから、ね。過ちは繰り返さないように心に刻んで置かないと。ね?』
次の日の朝。地下の牢獄に来ていた。肩にスズちゃんを乗せて、そして私の前には第1宰相様のアチェロ様と護衛の騎士の人と共に。
アンドレくんは驚愕の顔をしていた。もう、こう、目が、バッと開いて冷や汗がタラタラたれてそうなマンガのイメージそのままを具現化してくれたような様相だったよ。
「姉上・・・」
こんなシーン見られたくなかったんだろうな。目がうろうろしては、チラッとこっちみて、また目がうろうろしては、チラッと・・・うん、わかったわかった。落ち着け落ち着け。おつちけおつちけ。
「ステイステイ。」
「なんです??」
変なものを見るような目で見ないで、宰相様ぁ。ごほん。本題にさっさと入ろう。
「アンドレくん、私は先にロッテリーに帰ります。」
「そ、うですか・・・・」
「私、ディオさんの妻になります。婚約者ではなく、結婚式を正式に挙げる予定です。帰ったら、すぐにでも。」
「そう、ですか。おめでとうございます。」
「そして」
「はい?」
「その先には子供を産む予定です。ディオさんとの子供を産む許可を王から貰いましたので」
「お慶び申し上げます」
顔が、全然喜んでないのが丸わかりだ。
「どうしてこんな報告を今こんなところでするのか、疑問に思いませんか?」
「疑問?いいえ、いつかは来る未来を見据えたと、俺は思っています。」
「本当に?」
「噓ではありません。」
「・・・私は、アンドレくんに今すぐにお祝いの言葉を言ってほしくてここにきてこの報告をしているんじゃあないんだよ」
「どういうことですか?姉上?」
「私、結婚します!」
「はい。はい?」
「だから、アンドレくんはここを正攻法で、キチンとでてきてください。」
「は?」
「結婚式はすぐにやってしまうかと思うから、それに間に合うように、ここを出て来てね。待っているからね。」
ジッとアンドレくんを見つめると少し呆れたように口を開けた。
「いやいやいや、無茶苦茶では?俺は、犯罪者です。」
「ううん、アンドレくんは無実の者だよ。」
「俺は」
アンドレくんが話すのを遮って私は声を被せた。
「アチェロさんが証拠と保証を持っているんだ。」
「は?え?」
牢屋の中でさらにさらに混乱しているアンドレくんをよそに、アチェロ様が説明をしようと口を開けた。
「昨日、ディオールウェリス様はパーティーに出席なさるふりをして、実は欠席していました。」
「・・・?」
そこに私が付け加える。
「アンドレくん、知ってた?私ね、アナタのこと実は敵のスパイか何かだと思っていたの。アンドレくんは王城にいる時間が極端に少ない上に、色々な場所に顔を出しすぎているように見えたから。」
「そしてそう見えたのは一様にもディオールウェリス様がアンドーレリユース様と何かを企んでいるように見えたという点もあります。そう、つまり、ディオールウェリス様には人に見せない、何かがあったのです。でもそうじゃありませんでした。そう、黒幕と言う者に雇われたりしていたわけではなかったんです」
ディオさんも結局アンドレくんとほとんど同じ立場だったってだけだったのだ。
だからね、アンドレくん。変な意地張ったりしてないでちゃっちゃと“出てこいやぁ!”(by高田延彦)
「あの、話がぜんぜん見えてこないんだが」
アンドレくんの小さい声が牢屋に響いた・・・ですよねーー!
第1宰相のアチェロ様の名前の由来書くの忘れてた。
アチェロ・・・楓という意味。
アチェロ様は宰相だけど女性。出来る女。良い母親ではないけれど、良き治世者という感じの仕事一筋で家庭に不器用なイメージの人間。
その辺りはまあほとんど出てこないんですけれど。
順流様。
真っ白く真っ白い男性の神様。フテゥーロが5歳の状態のモナに会えるように送り出した神様。言動はとてもいい人!しかしその実態は!?
次回は20日予定です