第330話
2匹は私から付与されたソレと元からの魔法やスキルでかけ合わせて、腰砕けちゃった人達やらを罠の要領で蜘蛛の糸で出来た網で取っ捕まえ、強制移動させるという合せ技である。
本来、愛似移動友のスキルとしては、私が友と思っている人にしか発動しないようになっているけれど、私が他の者に付与したソレは少し使い勝手が緩くなるみたいで、ソレが付与された物体と触れれば、発動されるモノに変化した。
相変わらず私の行ったことのある場所にしか移動は出来ないけれど。
一瞬叫び声が響いたけれど、すぐにかき消えた。蜘蛛の糸が触れたなら、移動されたはずだから。ちゃんと行っていれば、さっきの避難所に騎士団の人も魔法使いの人も転移しているだろう。
スッキリした。すぐに戻ってきそうな気もするけれど、まあいい。
・・・・・今更だけれども 黒いカラスと白いフクロウは一体どこに消えたのだろう。相変わらずコスモオークはうるさく叫んだりしてパンのさんにんと死闘を繰り広げているように見えるけれど、私の周りは人が消えたのでそこそこ静かになった。
黒いカラスも白いフクロウも、私が来た時にはいなかったいなかったということは 私がここに着くまでにどこかに飛び去って行ったということだ。
騒がしかった面々がいなくなったのでパンのさんにんの攻撃が激しくなったように見える。
「あ」
コスモオークがパンのさんにんのうちのクプファーに土星みたいな攻撃を食らわせた。彼が見えなくなって、私の血の気が引いた。
しかし杞憂だったようだ。潰されてヤラれてしまったように見えたクプファーは生きていた。しかし嫌な汗がたれ流れた。
「また、死を目の当たりにするのかと」
「モナ?」
直近の死は体の痛みと情報として知ったので、見ていない。次も死を見たくない。次こそは誰も死なないでほしい。
そんなの無理だとわかっている。
クプファーはインキュバスを彷彿させるサテュロスらしきパンだからなのか動きが艶めかしい。端的に言うと少しエロい。
まるで踊り子のようだ。おや、コスモオークの動きがおかしい。まるでお酒に酔っ払ったような動きだ。あの動きで翻弄させたんだね。
「モナちゃん、あれはね“夢遊豪遊”だと思う。ほらキジンが言ってたあれだよ。アレ。」
「ああ、プントさんが幽霊だからって、そういうモンスターから出やすくて避けにくくて面倒くさいワザとか言ってたアレか。白昼夢を見せられてその中で気分が良くなり現実と夢の区別がつかない状態で夢遊病のように歩き回りつつ体力を徐々に奪われていくっていう・・・」
幽霊系のモンスターが使うって言っていたけれど、そっか。悪魔系もおなじワザ使えるのかぁ。
「モーナ」
気づいたら足元にグレムリン2匹がこちらに来ていた。
「お疲れ様。すごい作品になったね」
「「へへーん、イタズラいっぱい出来て楽しかったーーー!」」
ニパッとヤンチャに笑う2匹は可愛かった。
「テュルも手伝って、あっちでまだアイゼン達と戦ってるけどサイショウとスズはいかないの?オレ達もラクガキで戦ったのにィ?」
スズちゃんもサイショウくんも少しカチンときているようだ。
「さっきまで色々サポートしてたから、ここにいるんだよ。テュルさんもさっきディエースとウェスペルのサポートしてくれていたでしょう。ソレがあったからコスモオークをあんなになるまでイタズラ出来たんだよ。サポートってとっても大事な仕事なんだからね」
「なるほどぉ〜」
「ほどなるぅ〜」
真剣に聞いてくれてはいるけれどイマイチわかっていないようだ。
「「でもオレ達が1番!んでもってユーショー!」」
優勝ね。
「うわぁっ!?」
コスモオークとパン達が戦っている所から叫び声が聞こえた。そちらを見てみるとコスモオークを中心に地面が形を変え、月のクレーターのような様相に地面が様変わりしていた。
キツネのテュルフィングは姿勢が崩れていたズィルパーに手を貸していた。
「ダメだ!逃げるんだみんな!!」
バフォメットなアイゼンが叫ぶと同じくして、コスモオーク自身が爆発でもするように、辺り一帯大きな音と押しやられる空気圧に包まれた。果てしなく飛ばされるような感覚に陥り、気づいた。辺りに広がったのは空気ではなくガスの塊なのだと。
「超新星爆発・・・」
気付いたときにはガスを大きく吸い込んでしまっていて鼻から血がしたたり落ちたのを確認したと思ったら、その場でだれもかれもがバタバタと倒れていった。目がチカチカとして星が見えるような気がした。
この時、死んでいなかったのは奇跡だったと思う。
ーーーーーーーーーーーーそれと同じ頃、私達がコスモオークと相対している合間に事件は起こっていたようでして。
『なぜいつまで経っても騎士団達の追加人員や王族達が来なかったか、だよね』
ーーーーーーーーーーーー順流様は見ていたらしいですよね
『見ていたよ。見ていないわけがない。たとえソレが私であって私でなくとも』
真っ白い髪に真っ白い肌に真っ白い服装の男の神様はとても複雑な表情をしていた。嬉しそうでもあり、今にも泣きそうでもあった。
ーーーーーーーーーーーー白いフクロウのタイサイさん達は、アンドレくんのいる会議場に降り立っていたみたいです。私はあまり詳しくはないのですが。
『タイサイはね、こう宣言したんですよ”モンスターを引き入れ、厄災を引き入れたのは彼の者である“』
ーーーーーーーーーーーーそれって・・・
『ああ、もちろん火種をまいて混乱させるためだけの、噓、だよ。横竪がやったのは君も知っているだろう』
次回は13日予定です