第314話
「始末してきました」
「ヒエッ」
「よくやった小娘」
「というのは嘘で、憲兵に引き渡してきました」
「「なーーんだぁーー」」
私が悲鳴をあげてサイショウくんに抱きついてる横でテュルさんはメイドさんのことを気に入った様子。前から思ってたけど3尾のキツネのテュルフィングさんはいかんせん、戦闘民族のケが濃いですね。忍者とか教えたら絶対ハマりそうなんだよなー。教えないけど。
「それに伴い、この部屋及び周辺区域は警備が厳しくなります。ご了承願います」
「ああそうか。まあ仕方ないね。あ、お礼言ってなかったね。本当にありがとう。凄く助かったよ」
「いえ、仕事ですから」
メイドなら当然ですとか言い出すのだろうか。創作物のメイドは何でもありだと知っているけど、現実ではそういうことないと思ってたから、結構今回のこと衝撃だったんだよね。
「他にご用事がありませんでしたら、一度下がらせていただきます。」
この部屋の担当だから毎日来てくれているので私もわかっている。憲兵の相手をしてしまって時間を使ってしまったから、やるべき仕事が出来ていないんだろう。
いつもなら掃除をしている時間だ。窓ガラス磨いたりとか毎日違う掃除をちょこちょことこなしている。今朝は私が散らかした酒瓶のゴミを片付ける途中のままだ。さっさとやりたいんだろうな。わかる。分かるけど、ちょっとだけ待って欲しい。
「少しだけ聞きたいことがあるんだけど、質問しても構わない?」
「守秘義務にさわる事でなければある程度はお答えできます」
どの程度がレッドラインなのか全然解らないので答えてくれるらしいので何も気にせず質問していこう。
「このお城に仕えている人って必ず護衛もできちゃう人ばかりなの?」
まずはこの辺りからかな。
色々聞いてわかったことは、私の部屋付きになったこのメイドさんがたまたま凄い人だったということが判明した。
王様の最側近の第2の宰相をやっているあのディオさんのお兄さんが手配した人で、例えディオさんの婚約者という肩書があったとしても本来私のような一般ピーポーが出会えるメイドさんではなかったらしい。
ある程度聞いたのでメイドさんは仕事に戻ってもらった。
「あの男モテたのだな」
「変なのに好かれやすいんだって」
「なるほど?」
テュルさんの目線がこっちに来たね。ハイ、私も変なのですよね!わかってるから見ないで。
ドアがノックされた。騎士たちが警備の為の人員を増やすとかなんとかさっきメイドさんから説明受けたけど、もしかしてそれかな?テュルさんたちも特に警戒していたりするわけではないから、ドア向こうの人は安全だろう。
開けてみると騎士らしき人と、ディオさん。おっと?
「申し訳ない」
「ディオさんの事が好きすぎたんでしょうね。」
ディオさんはこの手の話が多い。あらぬ嫌疑をかけられて女性から断罪されそうになったり、知らない所で駆け落ちされて振られたり、と様々だけど、ディオさんの直近で本当の本当に最近の嫌な思い出ナンバーワンは元領主の一人娘が長年浮気をしていた挙げ句、ディオさんのお腹を刺したという事件がある。
「それも謝るが実はもう1つ心から謝らないといけない。」
「?」
「昨日の今日で申し訳ないけれど、実は、許可が降りなかった。」
「昨日の今日で?許可?なんの話?」
「兄君が私の子種を使う許可に対して反対された」
「そ、そっかー」
というか、許可制なの?というか、少しホッとした。というか、お兄さん達にそういうコト話してなかったの?許可制なのに?
「申し訳ない」
「いいのいいの、気にしないで。許可が取れるまでは保留ってことでいいのかな?」
「ああ。この騒動のせいで、兄君への説得も岩礁に乗り上げそうだ。」
凄くがっかりしているディオさん。なんの因果かどうしたって女難がつきまとうディオさんである。ディオさんには悪いけれど、今は子育てよりモンスターと共にいることが優先になるし、私、本当にホッとしてしまったんだよ。
「心配しなくていい。私はあきらめないから大丈夫です。安心してくださいね。」
ディオさんの中での私はどうなっているのだろう。オーケーなお返事してなかったはずなのだが。ディオさんのなかでは私はオーケーを言うと思っているということだろうか。
困ったなぁ。
「「モナ、外行きたーい」」
固まったなぁ。
次回はまた明後日予定です