第311話
「モンスターではないな。しかし人間とは少し違う気がする」
「ええ、なにそれ・・・まさか、神様系統?」
いやいや、ヤダよ?横竪さんや修慧で神様はお腹いっぱいだよ。もういらない。ホンマに。
「神?ははっ、バカ言え。あんなものとは全く違う」
それを聞いてホッとした。それにしてもテュルさんの神に対してすんごいバカにした態度。最高です。かっこいい。私もそのくらいあの2人に対してそういう態度で行きたい。
無理だけど。うん、無理。なんかこう、うん。本能って言いたかったけど、多分そういうんじゃなくて、これもまた洗脳じゃないけれどそれに近いナニカをされている予感。
で、だ。
「じゃあ結局アンドレくんはなんなの?」
「ソレがわかっていたら、こんなにぐだぐだと話さず答えを言っているさ。」
「さいですか。」
そりゃそうか。テュルさんだってわかっていたらすぐに私達に言っている。もう出会ってから4ヶ月。アンドレくんとも過ごしている。でも、今までそれについて言わなかったのは、なぜ?
「それに、最近少し私の体に変化が起こっている。感覚が鋭くなっているというか、新しいパワーに目覚めたとでも言うような。」
「えっ大丈夫?」
「ああ、だから、森に行けて変わった部分を試すことも出来た。色々とわかる事もあったし、本当に楽しかったよ。しかし、モナが新しく仲間を増やした時はこういう事もあったと思うがココ最近増やしてはいないし、なぜこう気力がアップしているのか、不思議だ」
「この場所がいいのかな?王都だし、王城って魔法で守られているんでしょう?」
「なるほど?そういうこともあるのか?」
「・・・・城について詳しくないからなあ??どうだろ」
「まあいい。このおかげであの少年が人間であって人間とは少々違うと気付ける要因になったのだから。」
「もしかして、ディオさんも、そうだったりする?他の王族も?」
「さあ、他は直接見れていないからな。ディオもだけれど、この城には約2ヶ月も滞在するのだろう。きっとそれを見極める時間もあるはずだ。見れたらどうなのか教えるよ。それが私やモナの為になるだろうし。」
「ありがとう、テュルさん。」
「いいや、私は、かつてタヌキとキツネの同盟関係が瓦解した出来事の真相がこのキングヴァギアンの土地にあると思っている。あの女神が関わっているということの証明も全て、な。だからこれは、私の為でもある。礼などいらない。」
「ストイックが過ぎる。お礼は受けるべき。」
そこに口を挟んだのは今まで静かにしていたイノシシのサイショウくん。
「お礼は心の対価になる。やる気も出るし疲れも取れる。いいことだもん。」
サイショウくんは元々神の使いの次世代として生まれた子だからかそのあたりは自信満々に語りたい様子だ。だからそれを言われてテュルさんは目を丸めていた。
「そうだな、考えておく。」
「モナ〜?」
「いいのいいの。テュルさんはそういうキツネさんだからね。サイショウくんはサイショウくんのやりたいように、テュルさんはテュルさんのやりたいように行動すれば良いんだよ。それだけで私は助かっているから。」
納得まではしていないようだけれど、サイショウくんもテュルさんもいつも通りなので私には問題などない。そう、不満なんて無い。性格や思想が完全に噛み合う者なんてそうそういないのだ。
ディオさんが手配してくれたドレスのお針子さん達デザイナー様方は流行の権化だった。ディオさんの兄弟の公爵夫人をしてる人とか、あの双子の女性とか、こういうのに慣れてるんだろうなーと思ったけれど、あの呼ばれた場ではそういう話題にはあまりならなかったよね、ドレスが野暮ったい的なことくらいだった。
パーティー終わったら帰るからそのあたりは気にしないほうが良いとは思っても、人間、見栄というか馬鹿にされたくない、侮られたくない、というものがどうしても湧き出てしまうもので、半ば食らいついて行くのに必死だった。
「疲れたーーー」
「ふふ、お疲れ様」
ドレスの採寸、相談の第一弾が終えてからディオさんとどういうやり取りだったのか休憩。このあともう一度デザイナーさんたちとふたたび相談が待っている。なぜって、次はディオさんのものとのカラーリングを合わせるから宝石やらの装飾品含めて、の2人のバランスがどうとかを考えるらしい。疲れた。今日はまだ疲れるのか。
「姉君達はいつも気合いを入れて望んでいるけれど、モナみたいになったことを見たことが無かったけれどなぁ」
「うーん?やっぱり慣れじゃない?私スーツもオーダーメイドなんて作ったことなかったし。」
「モナのいた所では“既製品”というもう作ってある新品の服の方が多く出回っているのだろう?私にとってはそのほうが不思議だよ。そういう売り方をしていたら、この国じゃ大抵が中古に該当するからね。」
リサイクルショップ的な感覚なんだろうな。リサイクルショップ懐かしい。
「教会への寄付やメイド達や執事に家計の足しになるようにと中古の服を給料と別に渡すことは多い。良い布は高いからね」
リサイクルショップよりリサイクルしていた。
「売っても良いし。服を解体してスカート部分はカーテンに、袖はクッション、胴部分は飾りが多いからリボンなどにしたりと聞き及ぶ。」
「なんか日本の江戸時代みたい」
「エド時代?服を解体したのですか?」
「日本がね、江戸時代って呼ばれてた頃ぐらいは確か、その頃着てた着物はね、大きめに作ってこう、お腹のあたりで布の長さを調節して高さ調節して、端が汚れたら少しだけ裁断して縫直したりして長く着れるようにする工夫とかしてたらしくて、あ!あとね、長く来てボロボロになったら雑巾にしたりって聞いたことがあった。肌襦袢だったかな肌着部分は、いつでも怪我をしたときとかの止血ようにすぐに裂ける素材で包帯代わりに出来たり〜とか。流石にクッションとかは、この国と違って湿度が多いし、クッションよりも半纏っていう、冬用の上着に綿とか使用してたんじゃないかな」
「ふむ、そういう文化もあるのですね。」
今の現代日本人だったら着れなくなったら捨てて他の新品買ったほうが安いってなるけど、この世界も江戸時代も布は高級品だからきっとそういうリサイクルが常に行われていたんだろうなと思う。
「モナ」
「なぁに?」
「疲れるだろうけど、これが終わったあと時間をくれないだろうか」
「うん?わかった。え、また呼び出し?」
ドキッとしちゃうよね。
「違う!この城に景色がいい所があって」
「あ、前に言ってた所!行きたい!」
ここに来る2週間前くらいにデートした時に、そこでもデートしたいとか言ってくれてたヤツ!わぁい!ご褒美ですね!
「良かった。ふふ、このあとのドレスの相談も続けられそう?」
「うん!ディオさん、私をわかってる!」
まさかそこで、先日のウマヅラの家で後日言いたい事があるっていう、あの、ディオさんからの告白を受けるなんて思ってなかったよね。
目ん玉飛び出るかと思ったよ。まるでカートゥーンアニメみたいにさ。
次回は明後日予定です。
カートゥーンアニメと言うのは、ルーニーテューンズ、トムとジェリー、みたいなそういうヤツのこと。
テンクウ「ボクもあわわわわわってビョーンとかウワァ!とかやってみたい!」
ビャッコ「えええ、俺は、ぜーーーーーってぇイヤだにゃ!!!」
スズ「スズはね、スズだよ!カトーンじゃないよ!」
フテゥーロ「えっ?えっ?えっとーー・・・うーん、ぼく、わたしはね、わかんないなー。ぬーん。」
今更だけど「章」を付けてみました。
モナが深層心理のの中の奥底に入ってIF世界について吐露し始めた所になります。・・・ここで多分合ってるはず。間違えてたらすみません。
ではまた。