第306話
ちなみにもクソもないけれど、まあモンスター達は部屋で留守番してます。
うん。急だったけど、置いてきて正解だったと思う。
「その姿、もう少しどうにかならなかったの〜?うふふっ」
「こらこら、ララァ。失礼だぞ、急に呼び出したのは我々だ」
アトム様からのお叱りもっともです。半ば、騙された感じで連れて来られたわけですし。普段着、と言ってもこの王城に来るにあたって、一応新調したばかりの普段着用のドレスですけどね。
ロッテリーの街も王都から一応離れているから、流行りとか追えるアレじゃないからって無難なのですよ。
プントさんとキジンさんのお墨付きもらっているのしか今回持ってきてませんけど、インフルエンサーみたいに流行追いまくってる系の王族にとっては古い洋服にしか見えませんよね。すみません。
「でもぉ」
「ララァだってお姉様に急に呼ばれて『ドレスが無いわ!』って叫んでたじゃないか、ハハッ」
「あっ!バラさないでよ!アムロ!ヒドいわっ!」
「相変わらず言い返されるとトマトになるの面白い」
仲がいいんだか悪いんだか、一応私より年上らしい双子のアムロさんとララァさん。“様”?この2人には言葉ではつけるけれど、心の底から、様付けしたくないなぁ。
初っ端から、人のことニヤニヤしながらの値踏みが丸わかりで、王族だろうと人間性どうなのって思ってしまう。
「私の兄弟が申し訳ない」
耳元でこそっとディオさんが言ってくれた。ディオさんも足が伸びる車椅子で私の横にずっと居てくれる。頼もしい。
というかこれだけの挨拶のために呼ばれたのだろうか?それならどこかに時間作ってもらって日を改めたかったなあ。
そうじゃなくてもパーティ用のドレスの採寸とかドレスの工房に頼むから早くても明後日、まあ、無理だろうからそれ以降?に来てもらう算段つけて、とかさ、一応メイドさんに工房の紹介とかを王城のそういう紹介してもらう部署に話を通してとか、色々さ、今日とかやっちゃいたかったんだけど、これに呼ばれて、今めちゃくちゃ気疲れ中ですけど、どうしたらいいですか。
色々考え事していたら、月が似合う第2宰相様こと、ヒューマ様が私に向かって喋りだした。
「急な呼び出しで申し訳ないとは思うが、籍を抜けたとはいえ王家の血筋のひと柱であるディオが婚約者が出来たという。正直に言うと、まあ、変な虫なら早々と排除しようという話なのだ。」
正直過ぎます。うへぇ。(吐血)
「ハハハ!まあ、その話をするってことは、我々としてはまあ、合格ラインだったと言える。落ち込むな、モナ殿!」
「左様でございますか」
どこが合格ラインなのか全然わかりませんけどね。私ココに来てから全然口を開いていないのに、何がわかったんですかねぇ??謎すぎる。
「せっかくだ、席を用意しろ」
アトム様がパンパンと手を鳴らすと壁際にいた従者らしき2人が隣の部屋から椅子を1脚運んできてくれた。2人がかりで持ってくる椅子。重そう。
というか、すぐに帰りたかったなぁ。座る前にひと言。
「では、失礼いたします。」
椅子に腰掛けるとその隣でディオさんの車椅子の足が引っ込んで、座ってくれた。いや、元から座ったままだけどね。心意気の権化か。私がニコッと笑うとディオさんがニコッと笑う。隣に居てくれてありがとう。泣きそう。だけど、そのディオさんをダシに使われ呼ばれたのはちょっと許せないなぁ。こんにゃろう。
「それでね、今回こんなに早く呼び立てたのは他でもない。ある話がしたかったからなのだ。」
アトム様が真剣にこちらを見つめてくる。いや、見つめるだと語弊かもしれない。希望があって何かを求めているようにも見えるし、困惑してるから真実を明らかにしたいようにも見えるし、なんというかこう・・・えっと
あ!例えるなら、マジシャンに手錠付けて頑丈な箱に入れてさらに鍵を外からかけた上に炎で箱を焼いてる状態で脱出します!ってそれを実践してる最中の周りの観衆の大丈夫なの!?っていう顔に似てるかも!
うん。分かりづらいな。まあ、そういう顔だ。というか、多分私も今そういう顔してそうだよね。鏡ないから見えないけど。
「どのようなお話でしょうか?」
私が口を開かなかったら誰も喋らなそうだったから、あえて聞いてみた。隣にいるディオさんさえも、前に座っているアンドレくんも、口を開くことはなさそうだった。むしろ、察しないでほしいと言わんばかりに顔が暗い。
対して、他の王家の方々はワクワクしている人もいるし、複雑な表情だらけ。
「ある時、噂で耳にした。」
このあとアトム王から出た言葉は私を驚かせた。兄としての愛だったのかもしれない。
次回は29予定です
皆様ゴールデンウィークは楽しく過ごされるでしょうか。私は、ゴールデンウィークは全て仕事になりました。なので更新が早くなるとかは残念ながら、ありませんのであしからず。ごめんね!