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第300話

滾々(こんこん)と話を続ける。


どんなに平坦な日常だっただろうか。


こんなにつまらない日々はなかなかない。


とくに、異世界と聞けばわくわくドキドキが待っている。


そう思っていた。


けれどそこにあったのはやはり、日常なのだ。


そして、その中で私は、私自身は、神様の手によって、神様の計らいによって、多くのモンスターの主となって人間を辞めさせられる手筈のレールに乗せられて、その人生を走らされている。


つまらない人生だ。


日本に帰りたい。


お母さんとお父さんに会いたい。


神様の願いを聞けば帰れるようになる。


テイマーとしてモンスターを仲間にすれば魔力が上がり、私自身がモンスターと繫がることで、強化され、異世界に帰れる力を手に入れることが出来るようになる。


ニワトリの卵が先かニワトリが先かの理論問答と同じような、問答ループに入っているようなものだ。


私は異世界に来て半年、そう、1年の半分が過ぎてしまった。


半年。


楽しい事もあるにはあったけれど、死出(しで)旅路(たび)を楽しむ余裕は無かった。


大きな大人が何を言ってるのかって?


大人だろうが子供だろうが、自分の命がかかってたら、愛されていた肉親にまた会いたいと願うことくらい私にとっては普通のことですけど?


泣きたくなる。


泣いてはいけない。


負けないで、もう少し、最後まで、走り続けて、どんなに、離れてても・・・。


泣きたくて、笑いたくて、ほんとの自分、我慢して・・・・。


ああ


ああ







そう、まだ大丈夫だった。暗闇に落ちることは無かった。


隣にはずっとスズちゃんがいたし、なにより、馬車には3尾のキツネのテュルフィング、グレムリン2匹、イノシシのサイショウ、ヤギのパンさんにんが待っていた。更にそこにアンドレくんとディオさんが乗ってもまだ乗れる広さの馬車だった。


どれだけ大きな馬車だろうかと頭を悩ませることなかれ。


魔法がかかって中だけ大きいという仕様の場所だ。


だから、みんなは大人しく待っていてくれたんだと思う。


私の心が筒抜けでどんよりとして馬車に乗るのを見た時、みんなはモンスターだけれども、誰よりも私よりも、心配してくれたんだと思う。


馬車に乗ったら静かにグレムリン達とパンさんにんがくっついて来た。


いつもなら少し嬉しくなって子供を愛でるようにうりうりと撫でたりしただろうけれど、気力もなかった。


多分、あのウマヅラに少しだけでも、期待していたんだと思う。


覆ることは絶対にないと、わかってしまって、胃液が喉元まで来たけれど、飲み込んだ。


ディオさんもアンドレくんもアイツには疲れさせられたからか、特に私が無口になってしまったからといって、心配してくることもなかったように思う。


まあ、ここに着く前も馬車の中の空気はあまり良くなかったから、さほど変わらない。


モンスター達がくっついてきたのも、離れていたからだと思われているかもしれなかった。


本当にモンスター達は静かだった。


だから、王城についてからも静かにしていてくれたし、手がかからなかった。部屋についたらそうもいかなかったけれど。





「覚悟が足りないわね」


キツネのテュルフィングさんがため息を吐きながら言った。


「私達は覚悟が決まっているから、一応はモナに賛同したにすぎない。気持ちが揺らぐ程度なら、降りるよ」


「シンラツー」


「アクラツー」


「「アイシテルー!ケラケラケラケラ!」」


グレムリン達は楽しそうだ。


「テュルフィングさんの言うことはもっともです。ここのお城ってところは、ボク達にもきつそうなのに、(あるじ)のテイマーのモナが揺らいだらこのお城から今にも飛び出したい気持ちになっちゃいます」


「ソウダヨ、ここの、うくき、じゃない、空気、んがっ、気持ちワルルルルル。おえっ」


「俺が守ろうか?」


「ちっさいイノシシに守られるヤギのパンじゃないよ?それより、モナちゃんには、本当の本当に神を殺してもらわないといけない。」


「「「だってモンスターの敵だから」」」


ヤギのパンさんにんは過去にあったことを悔やんでいるらしい。詳しくは知らないけれど、神様のイタズラで心を引き裂かれる事があったらしい。そしてそれがさんにんの利益になるとか。


「この城に付いてきたのだって、森に行きたいが為についてきたのだしね」


特にテュルフィングのテュルさんはこの城の裏手の森に御執心だ。イポトリルのヴェールも来たがっていたけれど、お城でパーティと聞いたら香水の匂いがする所は気絶してしまうと言うので、来るのをやめてもらった。


気絶し続けてもらわれてしまったら、その対応に追われたら何もできやしない。


「イノシシだって役に立ちます。この森は元々俺の住んでた所です」


イノシシのサイショウくん。頼もしい限りだ。


「モナちゃん、モナちゃん!悲しんでいるヒマなんて無いよ。スズ、モナちゃんの隣にずっといるからね!」


優しさが身にしみる。


「しかし、この儚さは弱みだ。どうにかならないか?私がイライラしてしまう。見ていて不快だ。あの館にいた時はまだマシだったのに、どうしたんだ?」


「どうしてだろう」


私にもこの変化がわかる。王都に付いてからなんだか体がおかしい。心が弱っただけだと思っているから、どうしてと聞かれたら、どうしてだろうと思うしか無い。ウマヅラがなにかしたのだろうか?


「多分!」

「それだ」

「カモネー」


「ん?なに?」


パン達がなにかわかったと声を上げた。なになに?なんなの?








明日も更新予定です。

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