第298話
更新日1日遅れて申し訳なありません。
話がまとまらなかったので更新出来ませんでした。そんなわけで、
過去1番で少々面倒くさい回です。
分割しようかとも悩みましたがそのままで載せました。
ゆっくりと息を吸う。吸うよりも吐く方をさらにゆっくりと。うん。大丈夫。少し落ち着いた。となりでスズちゃんが、頬にすり寄ってくれている。私を元気付けようとしてくれているのかもしれない。
前にウマヅラと会った時とは違い、私の心情はかなり揺れている。
前回このウマヅラと会った時は、私が横竪さんを心のそこから信頼していたから、このヒトも信頼できると勝手に思ってしまっていた。
今
その心はない。
「神は嘘をつきますか」
「さっきも言ったけれど、もともと人間だった 名残から嘘はいくらでもつけるよ」
修慧はニコニコとしながら答える。
「神は殺せますか」
「それも同じだね。もともと人間だったのだから殺せるよ」
修慧の顔色は一切変わらない。そして続く言葉。
「ただどちらの質問も神という存在には例外ってものがあるんだよ 。たまに変なのがいるから注意しようね。」
そうなると?
「横竪さんとあなたはその例外ですか?」
「残念ながら 俺らは例外ではないよ 。いつかは死ぬし 。いつかは、何かをする。それがいつかは分からないけれど気まぐれってやつだね」
「何かをする?」
「そうなんだ!決まっていない事を成せることが神様としての本分だからね」
答えてもらっても意味がわからなかったので、次にいこう。
「例外って、時間を巻き戻す神様とかいたりするんですか?」
「うーん?君達の創作物の世界ではよく聞くキャラクターみたいだけれど残念ながらこの世界にも存在しない。この世界にも、創作物の中にしか存在しないよ。例外っていうのは、コバトリアムの顔料の中に毒物が約1%入っていて、その毒物をたまたま生物が舐めて死んじゃうくらい低い確率で出てくる、神様のなかでも神とは違う存在のことだよ」
コバトリアムが、何なのかもわからないけれど、知ってるよね!って自信満々に言われた。そして、やっぱりよくわからないので、次に移ろう。
「私の記憶をいじったのはあなたの発案ですか」
「よく分かったね 。でも誤解しないでほしいのだけど、君が 、君という存在ということを知らない“ただの人間の世界”に横竪が行くよ っていうところで「発案」しただけだから、君自身に対して提案したわけではないってことを言っておくよ。だって、ほら、どんな人間が来るかもわからないんだから 。横竪のためにも、防衛本能を働かせておいてもらわないと俺には困るからね。なんたって横竪は友達だからさ。」
「私は元の世界の日本に戻れると横竪さんは言っていましたが、本当に魔力が上がれば戻れると思いますか?」
「戻れるよ。俺が戻れるようにするんだから間違いないよ」
「その戻れる時に私はこの、今の人間の姿であると言い切れますか?」
「なるほど。やっぱり君はオウジュから話を勝手に聞いてしまった。で、合ってるかな?」
「たまたま聞いてしまっただけです。」
「そうだよね。だってあの横竪が君に話すとは思えないし、横竪って結構うっかりさんだから。」
うっかりさん・・・そういうふうに見たことはなかったけれど、友人という間柄ならそういうふうにも見えるのかな?
「でも私を人外に進化させるんですよね?それだったら、日本になんか帰れない」
「なんでさ。姿が変わっても君は君だろう。そんなになりたくない?世界最強クラスの強者だし、それこそ、神と同等。元の世界に帰ったら世界最強過ぎて誰よりも、」
「姿変わるんじゃん!日本に姿のおかしい人が徘徊したら捕まるし、人体実験にされるよ。いや、人体実験自体本当にあるのか知らないけど。」
スズちゃんの体がブルリと震えて、それからこわばった感じが肩や頬から伝わってきた。
「世界最強なら捕まるわけ無いよ。だからね、最強過ぎて誰よりも、」
「「全てを支配する力を得る」」
「なんだわかってるんじゃん。」
相変わらず修慧はニコニコしている。
「・・・」
私は相対して暗い顔をしていたのだろう。
「モナ、テイマモナ。君はこの世界に来て、今、横竪に騙されたと息巻いているけれど、そんな人生の使い方でいいの?どうせ人間の人生なんて俺達と比べたら長くないのだから、今をもっと楽しむべきだよ。例え、どんな結果になろうとも。君の力は楽しみながら成長する力だ。」
「スズね、スズのほうがね、モナちゃんのこと理解してるよ!!」
急にスズちゃんが修慧に対抗し出した。それを見た修慧は変わらずにニコニコと見ているだけだ。
「スズちゃんはかわいいね。これ食べる?」
「いらない。食べないもん」
「あー、霊だったね、忘れてたー、あはは!」
スズちゃんが喋るほど修慧は近所のおっちゃんよろしく、アメちゃん食べる?的な事をするのが面白かったようで、今日1番機嫌が良さそうに見えた。
私が怪訝な顔で見ていると、急に、そうだ!と思い出した事を話し始めた。
「そうそう、先日 暗殺者に襲われたんでしょ?さっきの真面目くん、そう、ディオさんがね、君もいたデートでの現場で狙われたって話していたよ。」
「 私なんて おまけです」
「 悲鳴もあげなかったんだってね 。強い心を持ってるって褒めてたよ」
「悲鳴をあげれる人とそうでない人がいます。びっくりしすぎるとかえってって声が出なくなるものなんですよ 。」
「ん?君もそうだったってこと?」
「私の場合はモンスターたちとの戦闘訓練のし過ぎの影響だと思います 」
「何それ どういうこと?」
「怖いというより先に戦わなくちゃと 体が動きました」
「ワオ。それって、もう騎士とか勇者とかの精神 だね 。おもしろーい。うーん、でもせっかく 女の子なんだし、守られなきゃもったいないよ。」
今は若い女性のように キャラ キャラと笑う 。シュエはたったひとりなのに笑う姿が、姦しいとはこれいかに。つまりひとりなのに騒がしかった。
「さっきの話に戻るんですけれど、記憶が一部 抜け落ちてるやつってつまり、あなたがやったんですよね」
「あはは、それは誤解だ。やってはいないよ 。あはは」
「なにかを作ったりもしてない」
「バカにしてるの? そういうのは作れるに決まってるじゃない!んー、けど、というか、 君にそこまで興味がないかな。 君という人生の歴史には興味があるけれど 人間なんてそこまで大差ないからさ。人間はアリの何倍だと思う ?」
急にアリと人間のサイズ比較を言われてもと、ポカンとしてしまう。
「ほら わかんないよね ?つまりそういうことだよ」
なにが「そういうことだよ。」なのだろうか。
「アリのようなちっぽけな存在だから、嘘をついたと?」
「ん?ああ、もしかして嘘ってそっちのこと?やだなぁ。嘘じゃないよ!本心!本心!この国をこの世界を助けてくれって話でしょ。ははは!君がモンスターを仲間にして戦ってくれているからとっても助かっているよ。」
「そんなの」
「本当に心の底から、君は俺達の、この土地の救世主さ!だってモンスターを仲間にしていく、ゲームっていうのが日本にはあるんだろう?それをリアルにやっていこうって話なだけだもの」
「ほらなんだっけ?電気を発生させるネズミと一緒にマスターに成り上がっていくんだろう。あれと全く同じだよ。君には魔物の頂点に立って貰えれば俺達の要望は達成されるからね。」
「マスター・・・」
「わかりやすく言うなら、君が大好きな漫画とか小説に、いっぱい出てくる「魔王」ってやつだよね!うん、俺達、違うな俺はどっちでもいいんだ。そうだね、それを強く求めている横竪のために「魔王」になってね!よろしくー!」
かなり話が長かったのか心配になったアンドレくんが個室のドアをノックしてきた。このままだと王城に今日中に入るのが難しくなりそうなので、近くの宿で一泊することになりそうだと言われた。
「俺としてはもっとモナと喋りたいなー?」
修慧はウマの歯肉が見えるくらいニコニコと、興奮しているようにみえた。
「私は・・・もう今日は、いいです。」
「ん!また来てね!王城からはそんなに遠くないんだから、君達王子兄弟もちょくちょく来てよ!頼まれたものも早めに用意出来るようにするからさ!」
修慧とディオさんとアンドレくんはなにか作成依頼を出したらしい。
疲れた。
今は早くここから遠ざかりたい気持ちでいっぱいだ。
私はポケットモン●ターの話を横竪さんと、あの、1番最初の神社で話した。急にその事をフラッシュバックしたけれど、時間を巻き戻せるわけもなく、過去の自分を呪いたくなるだけで、ただただ心から悲しくなっていき、心が冷えていく自分が、本当に自分なのかとわけがわからない感じになっていた。
そしてそれはテイミング契約したモンスター達には、筒抜けで、このあと馬車に帰るとかなり心配されることになる。
もし神を殺したとしても、帰れる保証があのウマヅラのみしかないのなら、私はこの異世界で死ぬしかないだろうということは考えていた。
私は横竪と修慧によって、この世界に呼ばれ、自分から決意し、足を運んで、そして「墓穴を掘る行為」をしている。文字の通り、自分自身で墓の穴を作っている状況。
それを強く求めている、横竪の真意が私には理解出来なかった。
どうしてモナはオウジュを憎むようになったかというと?って部分でした。
物語上、モナが知っている部分のみをストーリーに落とし込みたかったので会話形式になっていますから、オウジュの心情やシュエの心情とかは基本的に書いていません。
オウジュはモナをおもちゃのリカちゃん人形とかバービー人形とかの言えば行動してくれるような、おままごとのような、そんな都合の良いものに感じて、
モナがやってくれると言ってくれた、オウジュが助けてと頼んだ仕事をこなせなくなる事を危惧して、それにまつわる事の記憶を操作出来るようにしていたんです。
オウジュやシュエは決して狂っている訳ではなく、それぞれの正義が違うだけで、本人達としてはそれが1番正しい行動だと思って、動いています。
私の書き方が下手なのと、モナ視点のみという縛りをつけているので (IF世界編自体がモナの回想ってなっているので外せない縛り。) 分かりづらいことこの上ないですけれど、そういう話なのです。
神殺しだなんて行き過ぎでは?とも思うかもしれませんが、「用が済んだら日本に帰れ」と異形の体で帰らされる可能性がほぼほぼ確定しているも同じ状況にモナには見えるのです。
モナには神殺しが唯一の自分を守る防波堤としての役割だと考えています。
この回ではそういう話なのでした。
IF世界編はまだ書かないといけないシーンがいくつかあるので、まだ続かざる得ませんが、そのうち本編に戻ります。まだまだながそうだけど・・・。
お付き合いいただきありがとうございます。
これからもよろしくお願いいたします。