第297話
目の前のウマヅラ男、修慧は私がひと言発する間にその10倍は喋っているのではと思う程度に口が止まらない。
「君の相談事って言うのはもしかしてもしかすると もしかするのかな 。分かっているかもしれないけれど 俺がそれを話していいか、ちょーっと戸惑うんだよね ー?横竪に直接、君と対話して欲しい気がするからね 。どうしてそうなるのかという問いに対しては君が一番都合が良かったと言うべきかな 。あの時間、あの場所でちょうど 現れる人間のうち そのうちのどのくらいかは分からないけれど、横竪に出会った人間でそれを成し遂げられる可能性は とてもとても低かった。来るのにそれを成せる君が現れてしまった。出せるのであれば出してもらおうじゃないか 。だってそれを出せるのだから 横竪の夢は叶えられてる。俺には 利益しかない。」
「利益?」
私の疑問に答えることもなく次へ進む修慧
「君は神が何だか分かっているかい 」
突然の質問に戸惑うしかない。
「この世界の神 はねもともとは人間だったんだよ。人だよ 、人 。わかるかい。元々神様なんていなかったんだ。最初に現れた神は人間だったけれど何が違ったって? 全てが違ったのさ !力がすごかったとかそういう感じのことだけれど 、ただただそれだけ怖かったのさ 。何が怖かったって?怖いと思ってしまったらそれが全てさ。何かが違うというだけで自分とは違うというだけで、恐ろしくなってしまうんだ。人間って本当に馬鹿だよね。」
答えのようで答えになっていない気がする。まるで謎掛け。
「まず神を作り上げた人間たちが考えたのはその怖い人間から遠ざかることだった。どうやって遠ざかるかって?ただ遠ざけてしまうのであれば敵対されたり何かされる可能性がなくもない 。そんなのはこちらとて嫌だ 。そこで考えた。相手を怒らせなければいい 。つまり、持ち上げればいい 。褒めて讃えてあなたが一番ですと言葉巧みに誘導すればいい 。高みヘ高みへと持ち上げて、どんどんどんどん 持ち上げて。気分を高揚させて、気持ちを育てて他の人達とは全く違う存在なのだと、決めつけ、覚えてもらい、頭に擦り込ませた。神はただの人だった時代が経つにつれ 作物の品種改良と同じく 神も神としてなっていった これが この世界の神の成り立ち さ君たち 君の方の世界はどうか知らないけど ここではそうなんだよ。“あなたは特別なんですよ ”と それこそ 今で言う 、そうだね・・神格化とでも言えばいいのかな。」
私が言いたいことを言えないままに修慧はどんどんと持論を喋り続ける。
「横竪がね君のことをとても気に入っていたんだ。だからこそ横竪が求めていた役割を 君がするべきなんだよ。俺にはできないからね。やるにしたら人間が一番さ。神に次の資格はない 。猿が人間に進化したように人間が神に進化して 神は さらにその先に・・・と行きたいところだけれど 今のところ その先はないようだ 。次なんてないんだよ。最終的に土地に溶けてしまうんだろうというのが私たちの 神の見解である。土地に溶けるために神になりたかったわけではないし、 気づいたら生まれていたっていうものの方が多いそうだね。君たちが戦っているモンスターのうちの何体かは きっとこの俺たちと同じように 神のような形で生まれ落ちているモンスターがいるはずだよ」
それを知った所でどうするべきだとかの開示もなく、ただそういう事があるよという情報だけがそこに落ちる。
「俺と横竪は友だ。それ以上でもなくそれ以下でもない。そうだな、それ以上のパートナーになりたくても多分慣れない。もし、そういう関係性になろうとすれば、飛び越えて、共依存の関係性になるだろうね」
ニコッと笑顔を向けられる。それを話して私の反応を楽しんでいるんだろうか?
「さっ、それを踏まえて、レッツゴー質問コーナー!あ、質問じゃなくて、相談だったっけね、うっかりうっかり!」
そんな事言われても、私の頭の中はぐちゃぐちゃである。ウマヅラにはとりあえずにらみをきかせておいた。うぐぅ。
モナほとんど喋れなくなるの巻き。
スズちゃんも無言なう。
次回は6日予定です